探検家・冒険家 =5-①=

野生生物保護活動家 = ポーラ・カフンブ =

~オーウェンとムゼー(Owen and Mzee)の舞台~

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 「オウエンとムゼイ」: 赤ちゃんカバと130歳のゾウガメ 

 ポーラ・カフンブの名前は、赤ちゃんカバと年老いたゾウガメの交流を描いた児童書『オウエンとムゼイ』(ベッキー訳、NHK出版)の共著者としての登場が、日本では最も目立つものだったかもしれない。

 2006年に出版された同書は27カ国語に翻訳され、全世界で100万部を超えるベストセラーとなった。

 2004年末、スマトラ島沖地震によるインド洋津波はケニアにも押し寄せ、海岸近くにいたカバの群れを呑み込んだ。  波が引いた後、群れとはぐれサンゴ礁に取り残された赤ちゃんカバが1頭いた。

 地元の人々に助け出され、オウエンと名付けられたカバは、インド洋岸の港湾都市モンバサ近郊のホーラー・パークという自然公園に引き取られた。

 このとき、子カバを救助したとの連絡を受け、ホーラー・パークでの受け入れを決め、オウエンの飼育を担当したのがポーラ・カフンブである。 カフンブは当時、ホーラー・パークを運営するラファージュ・エコシステムのジェネラル・マネージャー(総支配人)を務めていた。

 オウエンを待っていたのは、カバの群れではなく、ムゼイという130歳のアルダブラゾウガメだった。 実の母親のいないオウエンは、カバの群れに入れられれば侵入者として攻撃される恐れがあったためだ。

 カバはのんびりした草食動物と思われがちだが、縄張りへ侵入する者は同種異種を問わず容赦なく排除する。

 オウエンは大きなゾウガメを仲間と思ったのか近づいてゆき、ゆっくりと歩くムゼイのあとを付いて回った。 初めはいやがる素振りを見せたムゼイもやがてオウエンを受け入れた。

 オウエンは、ムゼイをまねてか同じ葉を食べるようになり、仲良しの友達か家族のように、水の中で休む時も土の上で昼寝する時もいっしょで、長い時間を寄り添って過ごすようになった。

カフンブ-1-

 ありえない組み合わせの“カップル誕生”は、ニュースとして海外の大手メディアも取り上げ、多くの観光客を呼び寄せるとともに、『オウエンとムゼイ』の出版にもつながる。

 著者の筆頭に名前のあるイザベラ・ハトコフは当時6歳の少女で、テレビニュースで赤ちゃんカバとゾウガメのことを知ると、父親のクレイグ(著者の二人目)にこの話を本にしたいと相談し、やがてベストセラーが生まれることになった。

 クレイグ・ハトコフは不動産投資家・慈善活動家だが、オウエンとムゼイのほかに、ベルリン動物園のホッキョクグマの子どもを描いた『クヌート ちいさなシロクマ』も、イザベラともう一人の娘ジュリアナと共著で刊行している。

 また、妻で映画製作者のジェーン・ローゼンタール、俳優ロバート・デニーロとともに、9.11同時多発テロからのニューヨークの復興を目的として、2002年にトライベッカ・フィルム・インスティテュートを設立し、併せて同年春から「トライベッカ映画祭」を毎年開催している。

 “オウエンとムゼイ”については、出版とともにドキュメンタリー映画も製作し2006年の同映画祭で上映、飼育担当者として出演したカフンブも招待されたのです。

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 ポーラ・カフンブのような自然保護活動家がこうした“表舞台”に登場することはめったにない。 絶滅の危機に瀕する野生生物とその生息環境の保護に全力を傾けてきた彼女の目には、もう1つの絶滅危惧種の姿が映っている――環境保護の活動家自身だ。

 「環境保護の活動家たちは、世間から忘れられ、わずかなお金で大切な仕事に取り組んでいます。 人里離れた奥地で、ときには命を危険にさらしながら働いているのに、世界の人々に知られる機会はまずありません。 一方で、世界には野生生物や生息地の激減を気にかけながら、どうしたら自分が力になれるかわからないという人が数え切れないほどいるのです」。

Webサイト「ワイルドライフダイレクト」: 保護活動家と世界を結ぶ

 “伝説の”環境保護活動家リチャード・リーキーは、地球上で絶滅の危機にある動植物を心配する人々と、それを救おうと最前線で働いている人たちとを結びつける手だてとして、インターネットが有効であると考えた。

 そのリーキーの思いは「ワイルドライフダイレクト」というWebサイト(wildlifedirect.org)に結実している。 アフリカを中心に世界各地の100を超える環境保護プロジェクトによる日々の努力と成果が、様々なブログ、日記、動画、写真、ポッドキャストを通じて、オンラインで公開されているのです。

 このサイトには毎日数千から数万のアクセスがある。 オンライン寄付が可能で、支援したいと思えばどこのプロジェクトにもサイトから直接寄付することができるプログラムをも包括している。

 カフンブは現在、ホーラー・パークを運営するラファージュ・エコシステムから離れ、このワイルドライフダイレクトに活動の拠点を移し、CEO兼保護担当ディレクターを務めるのです。

 『オウエンとムゼイ』で繋がりのできたクレイグ・ハトコフもワイルドライフダイレクトに資金援助しているが、ハトコフのような資産家は稀な例だ。

 カフンブは語っている・・・・・・「このようなプロジェクトの支援に大金を寄付できる人は多くありません。  それでも、何百万人という人々がそれぞれ10ドルか20ドルだけでも出してくれたら、とても大きな支えになるのです」。

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 「環境保護の活動家たちは、困難で危険なフィールドワークをしています。 けっして資金集めは得意ではありません。 ワイルドライフダイレクトは、たとえばバイクのガソリンやパークレンジャーの制服といった、活動家たちにとって絶対に欠かせないけれどもそれほど高価ではないものの必要性を訴えています」。

 野生生物とその環境に関心を抱く人々は、リアルタイムで問題を目の当たりにし、自分の寄与がどう反映されていくかを追いかけることができる。

 昼休みや仕事の合間に、眼を痛めたカンムリクマタカが自分たちの支援で視力を回復する様子、インドネシアで親をなくしたオランウータンを活動家が救う様子、アフリカでマサイ族の戦士がライオン保護に働く様子をチェックできるのだ。

 「プロジェクトに重大な局面が訪れたときには、このサイトはとりわけ大きな力を発揮して、迅速に支援を集めることができるのです」。

 印象的な例を挙げよう。 戦争で荒廃したコンゴ民主共和国の保護区でマウンテンゴリラが殺されているのが見つかり、この国の緊迫した状況に注目が集まったことがある。 マウンテンゴリラはアフリカ中央部に700~800頭が生息するのみで、文字通り絶滅の危機に瀕している。

 カフンブはこのときのことを振り返って話す。

 「至近距離から撃たれた死骸を見つけたパークレンジャーたちの心は深く傷つきました。 何年もゴリラたちを観察してきた彼らには、1頭1頭の性格も名前も家族構成もわかっていたのです。 ・・・・・・・

 レンジャーたちが投稿した文章や写真は人々の心に強く訴えかけ、世界中の注意を引いて、メディアが注目したのです。 不思議なことですが、正式な教育を受けていない人ほど語る力を持つということがアフリカではよくあります。

 現場から語りかけるレンジャーたちの力のこもった説明で、堰を切ったように支援が集まり、保護区の財政は安定を取り戻しました。

 現在では観光ツアーも再開されています。 ほんの数年前にはここは戦場で、人間はもちろんゴリラもライオンもゾウもカバも皆殺しにされていたことを思うと、胸がいっぱいになります」。

 2007年末から翌年にかけ、ケニアで大統領選の結果を巡り暴動が起こったとき、有名なマサイマラ国立保護区が危機にさらされた。 ワイルドライフダイレクトはこの危機的状況を世界に伝え、サイトの信用をもって管理資金を集めたため、保護区は最悪の時期を乗り切ることができた。

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マサイマラ国立保護区(Masai Mara)はケニア南西部、タンザニアとの国境沿いに位置する総面積1,812平方キロメートルの国立保護区。 国が直接管理する国立公園ではなく、地方自治体が管理する「国立保護区」である。国境を挟んで南に広がるセレンゲティ国立公園 (タンザニア共和国) の北部地域として同一エコ・システム(生態系)を形成しており、両地域を季節ごとに巡るヌー (ウシカモシカ) とシマウマの季節移動「グレート・マイグレーションはつとに有名。 名称はマサイ族とマラ川(en:Mara River)に由来する。

肉食獣・草食獣ともに、生息する種類数・個体数の豊富さでケニア随一と言える野生王国であり、観光に外貨収入の多くを頼るケニア共和国にとり貴重な自然資源となっている。 しかし近年、周辺部の人口増加に伴う農耕地・家畜放牧地の需要の高まりが著しく、一次産業に依存する周辺住民と野生生物の共存という、難しい問題に直面している。

・・・・・・続く・・・・・・

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