九日間の女王ジェーン・グレイ =9=

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    ヘンリー・グレイの処刑は2月23日と決まった。 ジェーンとギルフォードの処刑はそれよりも早く、2月8日の時点で決まっていたものの、ずるずると延びる可能性が高くなった。 メアリー女王は大権をもってジェーンを特赦するつもりでいた。 何しろジェーンはずっとロンドン塔にいたのだから、実際反乱に加担することなどできるはずがないのだ。 今回も前のように、名前を利用されただけではないのか?

しかし、反逆罪が決まった人間を特赦するには、それなりの名目が必要だった。 女王に絶対服従しているという証拠のようなものを・・・・。  メアリー女王は必死で頭をめぐらした。  愛する叔母の孫を、この手で殺したくはなかった。

    ジェーンは故郷のブレイドゲートの野原を思い出した。 原生林を切り開いた野原に生えるヒースは、ツツジ科の花だけあって、初夏から夏にかけて、美しい花が咲く。 ブレイド・ゲートの館の前にも、ヒースの野が広がっていた。 父と母、妹たち。 家族で馬に乗り、野原を駆け抜けた頃を思い出した。 もう2度と、帰ることはない。 2月8日、女王の特使フェキンハム博士が訪れて、女王の意志を告げた。 「陛下はあなたを特赦したいとお考えです。 そのために、どうかカトリック信者になって、 服従の証を見せていただきたい。そうすれば、処刑から終身刑へ変更なさるおつもりです。」 ジェーンは静かに考えた。  仮にここで許されても、一生塔から出ることはできない。 それに、また誰かが知らないところで反乱を起こしたとしたら、また死の淵に立たされるのだ。 後何回、同じ目にあうのだろう。 ・・・・・生きている限り、それは続くだろう。

   ・・・・・・・・ 死にたい ・・・・・・・ ジェーンは、つくづく思った。 死んでしまえば、魂だけでも、あのヒースの野を駆けることができるような気がした。 「どんな宗教が正しいとか、そんな無意味な論争をしている時間はありません。 女王陛下のお情けには感謝します。でも、もう生きていたくないのです。」  フェキンハム博士は、3日間だけ待つ、と伝えた。 その間に連絡をくれたら、女王陛下は特赦なさるでしょう。  ジェーンは首をふった。 もう無意味な時間などいらない。

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    別の獄舎にいたギルフォードが、会いたい、と伝えて来た。 メアリー女王は、2人がよく話し合うように、と面会を許可した。 しかしジェーンは会わなかった。 会えば、決意が弱まるだけなのだ。 かわりに手紙を書いた。  「もっとすばらしい世界で再会しましょう、ギルバード。その時には、私たちは永遠に ひとっになって結ばれるの。」  「永遠に・・・・・。」  ギルバートが答えた。 2月12日、10時、ビーチャムタワーの窓から、ジェーンは処刑台に向かうギルバートの、最期の姿を見つめていた。 数十分後、血まみれのギルバートの体が板の上に乗せられて、運ばれてきた。  切断された頭部は、白い布で包まれていた。  「ギルバート! ギルバート!!」 ジェーンは泣き叫んだ。 そして、 「私、恐い、恐い・・恐い。」 と、

ギルフォード・ダドリー_③ ; ジェーンが即位宣言をした7月10日、エドワード6世の長姉メアリー王女からの、今や自分が女王となったので枢密院に臣従の誓いを要求する、と主張する手紙がロンドンに届いた。 イースト・アングリアに滞在していたメアリー王女のもとには支持者が結集していた。 何度かの議論の後、ジェーン女王は、父サフォーク公爵の反対にもかかわらず、メアリー王女の陣営に兵を送り込むことに同意した。

ノーサンバーランド公爵は軍勢を引き連れてケンブリッジに進軍してから、7月20日にロンドンの枢密院がメアリーを正統な女王と宣言するまで、1週間のあいだ動かなかった。 ノーサンバーランドは慌ててメアリー女王に忠誠を誓ったが、翌7月21日の朝に逮捕された。 7月20日、ロンドンで枢密院がメアリー女王即位を宣言する数時間前に、ジェーンはある王室儀仗兵の息子の洗礼の代母を務め、その子に夫ギルフォードの洗礼名を授けた。 ロンドン塔に長いあいだ幽閉されていたカトリック支持派のウィンチェスター司教スティーヴン・ガーディナーは、この話を聞きつけると、激しくこれを非難した。

枢密院のメンバーの大半は、ジェーン女王を見捨てる前にロンドン塔を離れていたジェーンの父サフォーク公爵は、枢密院の仲間たちが心変わりしたことを知るや否や、受け持ちの城塞を放棄してタワー・ヒルの近くでメアリー女王に忠誠を誓った。 サフォーク公爵夫妻は屋敷に戻ることを許されたが、ジェーンとギルフォード、そしてノーサンバーランド公爵夫人には許しが下りなかった。 その後、ジェーンはロンドン塔の中の王室の住居部分から、貴紳のための監房に移され、ギルフォードはベル・タワーの監獄に収容された。 その後すぐ、ギルフォードの監獄にはすぐ上の兄のロバート・ダドリーも連行されてきた。

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 他の兄弟たちは別のタワーの監獄に入れられた。 父ノーサンバーランド公爵は8月22日に断首刑に処された。 メアリー女王はジェーンとギルバートには恩赦を与える気でいた。 ジェーンとギルフォードは8月12日に起訴され、ジェーンはメアリー女王に対し「女王陛下が告訴された私の罪について陛下に御許しを請い…陛下にことの真相をお伝えいたします」との謝罪の手紙を書くことを提出させられた。 同じ手紙の中で、ジェーンは自らについて「夫を深く慕う妻 (“a wife who loves her husband”)」と呼んでいる。

1553年11月14日、ジェーンとギルフォードは、カンタベリー大主教トマス・クランマー、ギルフォードの兄アンブローズおよびヘンリーと一緒にギルドホールで審理にかけられた。 申し開きが行われた後、彼らは全員大逆罪で有罪となった。 ギルフォードは、父ノーサンバーランド公爵のもとに配下の軍勢を合流させたこと、妻ジェーンを女王だと認め、扱ったことを根拠に、メアリー女王に対する大逆罪を犯したとされた。

12月、ジェーンはクイーンズ・ガーデンを自由に散策する許可を与えられた。 ギルフォードと兄ロバートもベル・タワーの入り口で外の空気を吸うことを許された。 ギルフォードはおそらく、この頃からジェーンと会うこともできるようになったと思われる。 ギルフォードは妻の祈祷書の中に、義父のサフォーク公爵に対する次のようなメッセージを書き込んでいる、

「父上を愛する忠実な息子は、父上が喜びと安楽に満ちた暮らしがご存命の限り続くような、素晴らしく長い人生を送られることを望んでいます。生涯父上の愚かな息子である、G・ダドリー(Your loving and obedient son wishes unto your grace long life in this world with as much joy and comfort as ever I wish to myself, and in the world to come joy everlasting. Your humble son to his death, G. Dudley」

 メアリー女王とスペイン王フェリペ2世との結婚計画は、民衆のみならず議会や枢密院の議員たちの間に大きな反対の声を呼び起こした。 1554年初頭のトマス・ワイアットを指導者とする反乱には、ジェーンの父サフォーク公爵も女王の結婚計画を嫌って参加した。 反乱者たちにジェーンを復位させる意図は無かった。にもかかわらず、政府はおそらくパニック状態となり、反乱が最も高揚した時期の最中だった2月7日に、ジェーンと夫ギルフォードの処刑を決定した。

この事件はまた、将来的な不安材料と不愉快な過去を抹殺する良い機会でもあった。 しかしメアリー女王は未だに又従妹のジェーンの命を奪うことを躊躇していた。 神聖ローマ帝国からの大使かつイングランド枢密院の議員であり、またかつてジェーンを王位に就ける手助けをしたシモン・ルナールは、メアリー女王にジェーンとその夫を処刑するよう説得した。 復権したスティーヴン・ガーディナーも、この機会を逃さず若い夫婦の処刑を主張した。 ルナールはすぐに「サフォーク公女ジェーンとその夫は首を取られる」と確信した。

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===== 続く =====

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