創作; “光の庭”のうたた寝 =001=

 ❢❢❢ 遼王朝皇族が耶律大石、王朝再興賦 ❢❢❢

ブロッケン

❝ =第一章第1節_01= 遼王朝崩落 ❞ 

1123年の秋、陰山山脈の天空には大きな月が輝いていた。 言う中秋の名月 その明るさが陰山山脈の肌を黒々と浮き出し、一木一草なき地肌に陰影を刻んでいる。 茫々たる荒れ地が地平まで続き、その地平に黒い帯が覗える。 そのあたりは 黄河が東に流れ行く地帯であろう。  陰山山脈はゴビ砂漠を南北に切り分けるように東西に延びている。 この山脈は高い山々の連なりではない。 禿山の連なり。

黄河は河西回廊が東の入口と言われる当たりから 西夏王国沿いに北上している。 北に流れた大河は陰山山脈の手前で向きを変え東に流れを変える。 やがて南下し西安(長安)・洛陽に至り渤海湾に達している。 この黄河が大きく取り囲む地域はオルドス地方と後年に呼ばれ、緑あふれる草原地帯である。 オルドスを制する者 中華を制すると言われてきた地勢上の重要な地帯でもり歴史の舞台である。

U字型にオルドスを囲み 流れる黄河。 そのオルドス地方の北域 黄河の水が、ゴビ砂漠西端に大きな湿地帯を形成している。 あたかも、人体の盲腸の様に突起のような、湖をも造っている。 この湖畔一帯は葦原で被われ、葦は身の丈以上に育ち、野鳥や小動物が生息し 狼もいる。 この地は五原と呼ばれ、広範な面積である。 東に蛇行して流れる黄河の北域を伺えば 一条の緑の帯の足元からは 砂礫の荒野、荒野はいつしか 黄色土の沙砂が砂漠と化し ゴビ砂漠と呼ばれる荒れた地を形成する。 また、砂漠化が進展していない東部は遊牧民が回遊する牧草地である草原がゴビ砂漠を回り込むように、北域の蒙古高原に連なって行くが・・・・

オルドスの北、蛇行し東に流れる黄河の北には湿地帯が広がり、葦原と化している五原を陰山山脈方向に北上すれば、いつしか ゴビ砂漠に取り込まれてしまう。 更に 北進すれば陰山山脈であり、陰山山脈はゴビ砂漠と蒙古高原を切り離している。 無論 陰山南麓は 水は少なく、川は希である。 河川はすべて砂漠に消える尻なし川である。

陰山山脈は農耕定着民族と騎馬遊牧民族を東西に隔離する自然の壁であり、 ゴビ砂漠をも北と南に別けている。 南方を俯瞰すれば、ゴビ砂漠の南辺が緑草帯に変わり、更に その南域が山稜を形成する地域に 万里の長城がある。 南部の農耕民族の中華王朝は、歴代 止むことなく 万里の長城と呼ばれる城壁を築いて、北の遊牧騎馬民族の侵略を防いできたのだ。

オルドスの北、五原を目指す貴人が居た。 見るともなく、漠漠の地平に目をやるその人物の名は耶律大石。 彼の傍で熟睡する幼い秦王殿下の将来について考える事さえできなかったのであろうが、あの北遼皇帝・天錫帝の死を考えていた。 いや、王朝を放り出して逃亡したとしか言えぬ遼皇帝・天祚帝の帝都・南京(北京市・大都・燕京とも言いい、時代により北京)の脱出を 無理に考えないようにしていたのかも知れない。

大石の傍には耶律時が控えていた。 二人の影は 青白い月光が作り出したのであろう、くっきりと足下にあり、動かなかった。

「安禄明さまは・・・」 「居庸関の迎撃戦、出陣の折以降 会ってはおらぬが・・・・」

「居庸関では如何様に 」  「阿骨打殿には礼を尽くす厚遇を受け、しかも 多くを教わったが・・・・」

 

「李処温殿と李奭様を誅殺されたのは それゆえですか・・・」

「皇太子秦王様の為には 致し方あるまい。また、天錫帝の遺恨に報いる為でもあった 」

「天祚帝陛下には 既に御存知でありましょうなぁー・・・」 「気を揉むではない、陛下には 責めは全て私に在る と申し上げよう。 あの日より ひととせ、全て ご存知であろうが・・・・・北遼として・・・・天祚皇帝は存在せず、湘陰王として所存を申し上げよう、心配するではない・・・・・・それに、我らが奉ずるは あの幼い耶律定皇太子・秦王殿下のみであろう 亡き天錫帝閣下の皇后が摂政として よく勤めておられる、我らは摂政皇后を擁することぞ 」

二人の会話は 途切れ途切れであった。 いつしか 薄い雲が月光を弱めていた。 二人の会話も何時しか途絶えている。 大石は沈黙の中、今 耶律時が口にした 友を思っている。

 

=== 続く ===

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