創作; “光の庭”のうたた寝 =006=

❢❢❢ 遼王朝皇族が耶律大石、王朝再興賦 ❢❢❢

2015-02-14_3

❝ =第一章第1節_06= 遼王朝崩落 ❞ 

黄河が月光に映えて、眼下の渓谷を東に流れる。 振り返れば 昨夜の師の言葉がよみがえる。 あの尾根の向こうに春秋三年、教えを受けた嵩山少林寺があり、恩師・慧樹大師が住まわれている。 耶律楚詞は慧樹大師の姿を振り落すように、黄河をめざして歩みを速めて行った。
立派な僧衣の若者が 大同は華厳寺の甍を見上げていた。 旅の僧であろう あたらぬ髭が薄っすらと生えている。 笠の下に頭髪も覗える。 気品が漂わせる顔には人を引き付ける清々しい目があった。

若者は 父を思い出していた。 一昨年の1122年、父は天祚帝の奸臣・耶律撤八に告発され、絞殺の刑に処せられたことを また、すぐる 保大元年(1121年)に枢密使の蕭奉先(シンホウセン)が外戚の立場を利用して、誣告で父が境地に立たされ、若者の祖母・蕭文妃(シンブンキ)が処刑されたのを・・・・・・、祖母は天祚帝(テンソテイ)が寵愛の妃であった。 若者は おぼろげにも 祖母の記憶が心の片隅に残していた。 父と母の記憶は鮮明である。 その母も天祚帝に死を命ぜられていた。

若者の名は耶律楚詞(ヤリツソシ)。 父の名は耶律敖盧斡(ヤリツゴロアツ)。 遼の皇族、天祚帝と蕭文妃のあいだの長男。 幼くして騎射を得意とし、聡明であった。 晋王として民に慕われていた。 しかし、蕭奉先が「南軍都統・耶律余(ヤリツヨト)が蕭文妃と謀って晋王敖盧斡を帝位につけようと図っている」と誣告したため、叔父である余睹は金の阿骨打(アコツダ)に降伏し、祖母文妃は処刑された。 父の敖盧斡は陰謀に関与していなかったと認められて、許されたのだが・・・・・。 この華厳寺 若者耶律楚詞が見上げる伽藍建立に父が関わっている。 父は乾統初年、若くして同族の大丞相・耶律隆運(ヤリツタカウン)の後を嗣ぎ、遼王朝の有力皇族に名を連ねた後に、乾統6年(1106年)に晋王に封じられていた。

≪耶律敖盧斡は晋王として善政を行い、隠れて研鑽したと言う。 また、『小さな体を守って、臣子の大節を失うことはできない』と言って従容と死についたとも史書が記している。 ≫

保大元年(1121年)二月 早春 に事が起こった。 蕭奉先が誣告事件である。 慈しみを受けた祖母が処刑される前夜 父が突然部屋来た。 用があれば呼ばれるか、伺うかで、いままで父が来られたることなど決してなかった。 父の静かな佇まいの中に父の苦悩を楚詞が知ったのである。
二月の寒さが父を憔悴させているようであったのを思い出している。 父が 普段は口にせぬ 厳しい口調で言った、言葉の一言一句を思い出していた。
「誣告の罪で そなたの祖母は明日、慙死を受ける。 父の寵愛が深かったがゆえにな・・・・・・・父は無慈悲な人だ。 帝位がそうさせるのかも知れぬが・・・   我が身の潔白は明かされたが、 王庭には阿諛追従が蔓延り、帝位を日夜 曇らせている 」

「王子よ 儂は 帝位は もとより 王位すら望まぬ。 帝位を更かさんと企てた母の意中が いずこにあった かも知りたくは思わぬ。 が、・・・・・ 再び 儂に災が降り懸かるやも しれぬ・・・ 」
「子よ、ここを去れ・・・・今直ちに」

父は途切れ途切れに、己を自責するがごとく 話を継いだ。 父の眼に涙が浮いていたのが 今尚 思い出されて胸を締め付ける。
父は 話を続けた、「耶律大石皇子の下に行くがいい。 安禄衝殿は聞いておろう、大石皇子は安禄殿とは昵懇の仲、安禄殿の懐に入り、しばらく 王権から離れた場所から この遼を眺めるがいい。 」

「父上は・・・・・」
「陰謀に関与していなかったと認められて、許された。 書物の世界は広い、 虫が付かぬように 日々 手にしてやらねば・・・・」

山寺
華厳寺の甍が一望できる門前は大道の中央に佇む若者・耶律楚詞は瞼をぬぐうと庫裡に寄る事無く 北を目指して足早に去って行った。 大道りを離れ、大同鼓楼を横目に町はずれの武周川河原で若者は僧衣を脱ぎ去った。 この武周川の上流、東西1kmにわたる約40窟の石窟寺院があるのだが、嵩山少林寺の作務服に着替えを終えた僧は、北を目指して 再び 駆け出していた。

=== 続く ===

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