創作; “光の庭”のうたた寝 =014=

❢❢❢ 遼王朝皇族が耶律大石、王朝再興賦 ❢❢❢

夕刻

❝ =第一章第2節_01= 陰山・五原 ❞ 

「耶律楚詞王子、 この地を いかが見る・・・・」 轡を並べて馬を進めている耶律大石が僧衣の耶律楚詞の横顔に穏やかの口調で聞いた。

「西夏へ10日も要せず、あの陰山が切れる西方より北に向かえば蒙古の大草原に至るも10日でありましょう。草原を東向すれば 騎馬にてこれも10日で小興安嶺山脈は我らが故地に至りましょう 」 何らの躊躇いもなく答える楚詞だが、不満顔で言葉を続けた。

「軍事統師さま、約束ではございませんか 王子と呼ばないことは・・・・」
「忘れてはいぬ、 王子の いや 楚詞の僧衣を見ると つい普王殿の事を思い出してのぉ・・・・ それで、この地を仮寓の王庭にするに 相応しいか・・・・ 」大石の眼は優しく楚詞に注がれ、また 前方を覗うように陰山を眺めている。

「この葦原、身を隠すには適地。 また 葦のそよぎが敵の動向を知らせてくれます、が・・・・、この時期に火責めで包囲さるれば、適地が死地に変わりましょう 」

「我は 慧樹大師殿に感謝申し上げねばならぬのぉ、楚詞よく見た。 して、明後日になれば、五原の王庭の門を潜る。 王庭に至らば、楚詞 汝の祖父である天祚皇帝に、めどうりするか・・・」 質するの声に変わりはないが、見つめる眼は一瞬の間鋭くなったようで、楚詞から離れない。 楚詞もその眼に答えた。

「父の無念は考えません。 皇帝としての立場がさせた事でしょう、しかし 秦王殿下をいかが遇されるか、また 蕭徳妃皇后の拝謁をお認めに成られるだろうか それに 北遼を差配された 大石軍事統師さまを厚遇なされるでしょうか・・・・私には祖父が判りかねます。 ただ、この度は 大石様の客僧として、大石様の傍にて過ごすに、王庭の一隅に住まわせて頂き 明日を考えとう思います 」楚詞は 眼をそらせることなく、考え考え 明朗に答えていく。

「勧める我が衣服に着替えぬはその為だったか、河原で会った日から はや 七日が過ぎ、二日前から 時に旗を掲げ差している。 何事もなく、このまま 王庭の門前に至らば、この身への処遇は予測出来ないわけでもない。 王庭には間諜が走っている事であろうし・・・  旗を掲げた時から、我らが意志は伝わっていよう。 処遇はともかくとして、このそよぐ風のように 我らは振舞えばいい。 少しばかりは、肌寒くかんじているがのぉー」

「また、秦王殿下は天祚皇帝の第五子。 しかも 晩年生まれた皇子であし、愛しかろう。 天錫皇帝の皇后さまとて今は皇太后として秦王殿下を慈しみ、擁護されているお方 心配は杞憂であろうが・・・・・」 と話を続ける大石の顔には憂いが漂っているようである。 葦原の彼方上方にて傾きかけた大きな太陽が冬の天空を青さをおびた白に彩り、鱗雲が浮かんでいる。 大石の顔に 一瞬ではあるが 憂いが漂っているのを楚詞は垣間見た。

「わしは、天祚帝が秦王殿下を正式に認めたうえで、遼帝国の帝位を己の第五子である秦王殿下に速やかに禅譲なされることを図る為に五原に来た。 北遼を守り抜き継承させる策は、そなたの父上が善政を牽かれた燕雲十六州の大同に遼王朝の皇族を結集すればよいと考えている。 北遼の正当性を公言するには天祚帝の退位が必要。 秦王殿下が遼の帝位に就いておられれば、燕雲十六州の皇族たちは必ず結束する。 なれば、西夏国と約定を交わして、宋の侵攻を阻止できる。 また、金の阿骨打には遼東地域を与えることで更なる金の南進を阻むことができる。 今は、大同にて、遼帝国の再興を図る体制を築き上げることが急務なのだが・・・・・」

無題
・・・・・大石殿の助言も聞かずに入来山で阿骨打と戦って大敗し、長春に逃れた天祚帝。 戦意を無くし、遼帝国の帝位を投げ出すように五原で逃亡生活をしている天祚帝。 210年続いた遼王朝の命脈を断ち切ろうとしている天祚帝。 今は、その天祚帝を諫めることは叶わず、遼の皇族として帝位の禅譲を迫らなければならない大石殿の憂い。 大石殿はその憂いを引きずって南京(燕京)より、秦王と蕭徳妃皇后をこの地まで、導いてこられたのだ。
「楚詞、 頼みが一つある 」
「いかような事でも・・・・・・」「王庭の様子を ふみにしたためるゆえ、 安禄明に届けてもらいたい 」
「安禄明さまに 嬉しゅうございます、それに ご尊父・安禄衝さまは 私が父とも思うお方 喜んで参りましょう 」

「ありがたい、 安禄明との連絡は密に取らねばならぬが もはや敵陣。 先日、兵の一人が 汝の飛翔に驚いたと申して居った。 これから後、嵩山少林寺での修業が役に立つかも知れぬが、王子である身は忘れるではない 」

日が陰り始め、 一行は 大きな湖面が現れた方向へと葦原を進んで行った。

2015-02-18_1

=== 続く ===

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