創作; “光の庭”のうたた寝 =045=

❢❢❢ 遼王朝皇族が耶律大石、王朝再興賦 ❢❢❢

マニ教

❝ =第一章第3_14= 五原脱出

槍を右手に直立する門兵に笑みを向けて無言のまま、遼帝国の天祚皇帝が逃避して仮寓する五原の王庭である砦の城門を大石は城外に駒を進めていった。 耶律遥は胸を張り、白馬に歩みを合わせるように先頭を進む。 後続の二頭の馬も歩みを揃えて、悠然と葦原に開かれた一条の道を南に進んで行った。 先頭で統帥の馬を引く石隻也、彼は軍事統師統帥旗を垂直に掲げて先導して行く。 一条の道の右手、葦原の割れ目から湖面が白い氷で覆われているのが見え出した。 薄い雪に覆われているのであろうか小さな光がその表面で乱舞している。

チムギはそのキラキラ輝く陽光の乱舞を目で追っている。 泰然と手綱を引く大石は、秦皇太子と摂政皇后を推戴して僅かな将兵と共にこの地に辿り着いた一年前のことを思い出していた。 皇太子は幼すぎた。 摂政する蕭徳妃皇后は天錫帝への愛に殉じた。 明日を担うべき秦王・耶律定皇太子は何もわからぬままに、太行山の山中の旅人すら稀である山深い杜村落で山賊に襲われ殺害された。 過去のすべては この地に この五原の湿原に埋めて行こう。 遼帝国の皇帝として、一時は拝命した天祚帝など もはや 無縁の人と成った。 彼の無能さが私の家族を死に追いやり、王統耶律の血脈を断とうとしている。 いや、過去は全てこの地に葬ろう・・・・。

耶律大石の歩みは、ゆったりと ゆっくりと 寒気を楽しむようようである。 遥は耶律大石統帥の旗竿を掲げあゆむ。 チムギと楚詞が斜対歩で一馬身の間隔を置いて続く。 楚詞が最後尾である。 やがて、寒気がやや和み、頭上にある弱い太陽が足元に影を落としていた。 五原の王庭を離れて二時間が過ぎようとしていた。 泰然と進む一行の背後から馬蹄の音が迫ってきた。 しかし、振り向く者は誰もいな。 馬蹄の音は近づき、馬の荒い息すら大石の耳に達しそうである。 寸刻の後 「大石統帥 お待ちください」 と叫び、枯れた葦を踏み倒して二頭の馬が大石たちの脇を駆け抜けた。 その時、大石は先頭の武将が泣訴の表情を自分に向けている耶律尚将軍であることを知った。 なお、二頭の将は枯れた葦を踏み進み、遥の前方の数馬先でその馬蹄の音は止まった。

息荒く静止した馬から下馬し、片膝を地面に付けた二人の武将が大石一行を迎える姿勢を執っている。 耶律遥が馬の歩みを止めた。 一馬身ほど後方を従歩していた耶律楚詞とチムギも馬の手綱を絞って斜対歩を止める。

「おお、これは 耶律尚将軍に羽副官殿 いかが なされた」 と大石は馬前で片膝ついて低頭する白髪の老将に声をかけながら下馬し、笑みを漏らして老将の前に歩みを進めた。 耶律楚詞も下馬した後に大石の四五歩後方まで歩み寄りで佇んでいる。 彼は老将軍の背後にいる頑強そうな武将に注意を払い、また 栗毛の二頭の馬にも気を配りつつ将軍の立振舞を眺めていた。 彼にはその老将の記憶があった。 幼いころに母に手を引かれていたころの・・・・・

「耶律大石軍事統師殿、統師殿 お別れに 参上いたしました。 先刻、皇帝閣下の朝議の席にて、軍事統師殿が印旗と共に南に向かわれたことを知り、朝議が終わるのを待てず 馬に鞭を当て駆け参じた次第です 」

「それは、それは・・・・・ して 何か異変でも起こりましたか?・・・・」

「いや、ただただ この老骨 軍事統師殿にお詫び申し上げねばと・・・先々皇帝より今上閣下を補佐しろと言われたこの身、しかし 吾には軍事統師殿がお持ちの覇気の気概は無く、軍事統師殿の真意を十分に解りながらも共に歩むことが・・・・」

「耶律尚将軍、お膝をお上げください。 金の勢いは、今 北遼の力を持って留めることは不可能に成りました。 天が命じる事であろう。 しかしながら、我らが契丹人耶律氏の創った遼王朝は、中華の地に長く留まったがゆえに、天命を知る事になったのです。 思えば、われ等は 北の大地で育んできた武と徳を、漢中で長く過ごすうちに、表面が華美なる中華の色に惑わされて醜い色に染められてしまった。 忘れてしまった遼の武と徳を 今一度取り戻すのが 耶律の皇子の末なる我が務めと考えています。 阿骨打が女真の民も いずれこの轍を踏むことに成るは定め。 耶律尚将軍、地に伏そうともご自愛なされよ。 いつまでも ご壮健を願っております としか お別れの答礼に言えぬことが 残念です 」

「軍事統師殿 ありがとうございます。  閣下は西夏王との誼が思うがごとく進まず、南宋へ人を遣わしているもよう。 ことここに至らば、佞臣の耶律撒八が甘言を弄しておる模様に もはや 腹も立ちませぬ。 秦王殿下に随行叶わなかった老将の我が身なれば・・・・・・ 愚痴は申すまい、軍事統師殿には すでに お気付きかとおもわれますが・・・・・・南宋の武将・郝仲連らを、打ち破った耶律余賭が金の軍門にて馬上の指揮を揮っていることは ご承知でしょう。 軍事統師殿を追撃する将軍に任命された噂がございます。 我らが故地への凱旋は 今一度 熟考されたいと・・・・・・・ 今生のお別れに成るでしょう。 今一言 西にマヤの新天地が在るように思えてなりません ・・・・・・ では これにて 武運 願っております」

日の出-2
 「・・ 耶律尚将軍、陰山山麓に耶律時が砦を築いております。 また、燕京の安禄衝殿にお会いすれば梁山泊の宋江に繋がります。 全てがマヤの環で連結しております故、心に留めておいてくだされ。 されば、これにて・・・・・」

お互いに 眼と眼を見詰め 別れの挨拶を交わす二人を陽光が包んでいた。 大石は羊の皮を鞣して毛を裏側に縫製した防寒具で身を蔽っている。 老将軍の耶律尚は甲冑を着込んだ騎馬将軍正装の姿、ただ 兜は背に結わえている。 楚詞は端正な顔を白髪の耶律尚将軍向けていた。 耶律尚は、大石が最後の言った『全てがマヤの環で連結しております故』 に一瞬 目に輝きを浮かべた。

温和な眼に宿る耶律大石統帥の武運を確認した老将・耶律尚将軍は、再度統帥を見つめた後に傍らの耶律尚に低頭し租も背後に立つ僧侶と異国の女性に目を移した後に大石に深く頭を下げた。 背後に佇む作務衣の青年が誰であるか気付かず、判らず、考えようともせず一礼の後に騎馬し、馬を城門に向かわせた。

07.02-2

=== 続く ===

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