創作; “光の庭”のうたた寝 =046=

❢❢❢ 遼王朝皇族が耶律大石、王朝再興賦 ❢❢❢

雪原ー2
❝ =第一章第3_15= 五原脱出

再び馬上に腰を下ろした耶律大石と耶律楚詞が芦原の小道をゆるりと南に歩みを開始した。 遥が大石の白馬に付き添い歩む。 周囲は身の丈以上の葦で囲まれているのに北遼軍事統師の印旗を高く掲げている。 遠くから眺めれば、三頭の馬首に毛皮を纏う武将の胸上身、作務服の僧、ウイグルの衣服を纏うのであろうか美しい四角い帽子を被る女性の頭部が茶褐色の穂波をかき分けて進み、その進行を紺碧の旗が導いているように見えたであろう。 城門を離れて三時間は経っていたであろうか、大石が遥に声を掛けた。

「旗を降ろして、先駆けしろ。 旅姿の楽士に変装する三人が待ちくたびれて居ろう。 曹舜殿と畢厳劉殿にはバヤンノールの臨河村落に先行して二三日の仮寓とこの先10日間の七名の食料とそれを運ぶ馬を整えろと伝え、何亨理には準備した馬を曳いて我らに合流してもらいたいと伝言。 直ちに行け。 昼餉は葦原の海に炉を設けて暖を取りながら致すが故に 良い場所を定めて、合流前に決めておくことも忘れるではない。 小走りすれば、遥よ 暖かくなろう。 早く行け、打ち合わせの場所では三名が震えているであろうが・・・・・」

小雪が舞い落ちる中 耶律磨魯古(ヤリチ・マロコ)は40頭の馬に荷を左右に振り分けて積ませ、その馬を警護するように毛皮の衣服を着る若者、三十名を叱咤している。 黄河を離れ 北上して行くこの一団は陰山山脈の黒々とした山肌が迫る谷筋を進んでいた。 蒙古草原に向かう隊商が行き来する道ではあるが、この厳冬期に通いなれたこの隊商路とはいえ、往来する隊はない。 今は厳冬期。 商人も蒙古高原に散在する顧客も冬篭りである。 耐える時期である。 しかし、耶律磨魯古が叱咤激励する若者たちは夢を抱いて厳冬の蒙古高原に抜けようとしていた。 谷底を這うように進んで行く隊は、迫りくる寒気と疲労でその歩みは鈍い。

耶律磨魯古が率いる一隊の兵士達が身を包む防寒用の外衣の毛皮は粗末であった。 その下には革製の防具を身に着けている。 身に付けられる衣服は全て着込んでいるようである。 みな若かった。 しかし、磨魯古を含め 帝都・南京(燕京)生まれ、華中で育っている。 大志があるとは言え、黄河を離れて五日目  疲労が溜まっていた。 だが、小休止となれば笑いが絶えなかった。 彼らは黄河が東に方向を変える巴彦淖尔(バヤンノール)の臨河村落を離れ、隊商路を北上していた。 あいにく、陰山山脈西方に位置するこの隊商路は昨日来の風雪に見舞われている。 乾燥地帯であるが低山の連なる山脈といえども雪が降る。 歩行を妨げるほどには積もらないが、寒さが行動を鈍らせるのである。 マイナス40度の世界である。

風雪の中を曹舜と畢厳劉に何亨理が陰山山脈西端部の谷筋を北上している。 耶律大石と石チムギに耶律楚詞、耶律遥ら七名の一団である。 三名が先頭を進み、四名が後続する形を取っていた。 五原を離れ、巴彦淖尔(バヤンノール)の臨河村落で陰山山脈を越える準備を整え終えたのは二日前。 陰山山脈南麓のバヤンノール・ウラドで一夜を明かし、入山用の完全防寒の衣服で身を包み、蒙古高原の北庭都護府・可敦城に抜ける隊商路を登行していた。 彼等は五原より裏街道を通行して本街道に馬を進めてきたのである。

大石の前を遥が進み、右脇にとチムギ、一馬身後方を楚詞が進む。 やや先行して曹舜と畢厳劉に何亨理の三名が進む。 彼らの間には、二頭の控馬が野営用の簡易パオと兵糧・燃料を積荷していた。 舜、厳劉、亨理の三名が五六馬身先行しているのであるが、後続する四名も替え馬3頭が続いていた。 大石が操る騎馬の歩みに合わせるように七騎の一行であるが、先頭の三名と大石たちとの間の地表に粉雪が舞い、間隔が離れすぎると互いの姿は霞むようであった。 畢厳劉と何亨理が前方に注意を払い、耶律遥が繋いで、耶律楚詞が最後尾にて大石とチムギを守っている陣容のようだ。

陰山ー3
昨夜は広々とした河原で簡易なパオを設けて野営したが、昼餉を取った以降の谷筋は、黒々と陰湿であり 舞う雪も激しくなっていたのである。 その谷筋は登るにつれて狭くなり、両岸がそそり立つ 所謂、ゴルジュ帯を登行しているのだ。 各自が予備の馬を曳き、羊の防寒服で身を蔽っているが体全体を圧迫するような痛さを感じる寒さである。 酷寒さはマイナス40度か、舞う雪は体に纏わり付くことなく また 衣服を覆うことは無い。 騎馬の足元の雪も積もる事無く、さらさらと流れていた。

「遥、人の笑い声がきこえるようじゃが・・・・」
「はい、統師さま、 私の 耳にも 人の笑い声のように思えます」
「遥、前の曹舜殿と畢厳劉殿を呼び止めてくれ」
「はい、直ちに・・・・・」
「曹舜殿と畢厳劉殿、二人して 一足 先を窺ってきてくれまいか この雪じゃ、隊商が行き来しているとは思えぬ。 そなたも同行して、繫ぎの役をいたせ」
「はい、直ちに・・・・・」と 曹舜が憮然と答えるも、「統師殿、我等に殿とは呼ばぬ約束。 五原を去る折 チムギ殿の命に服するも統師さまの兵になると我等四名は誓っております。 チムギ殿もお困りでしょう 」
「・・・・これは迂闊、 磨魯古が出立して十と二日 我らを黄河に出ず、ウラトに抜ける道を急いだが・・・・磨魯古たちは はや 峠を越えて草原に入っていようと思えば、あの笑い声らしき物音が気にかかる」

曹舜と畢厳劉が乱舞する雪を突いてその白き幕の中に消えて行った。 乗馬に慣れ親しんだ者しか凍てついた陰山山脈の谷筋に馬を走らせることは困難であろう。 耶律遥も二人を追った。 駈歩で馬を走らせるほうが暖が取れる。

「・・・・それにしても、チムギ殿は健気ですなぁー 女人とは到底思われぬ」
「統師さま、 そのお言葉も・・・女人とは考えぬ約束のはず・・・・」
「これまた、迂闊、 楚詞 笑うで ない 」
「兄上こそ 笑っておられるではないですか・・・・・」

2015-02-09_03

=== 続く ===

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