第一次世界大戦の轍=08=

09-15-1

❢❢❢ 戦争へのカウントダウン ❢❢❢ 

ベルギーが国を守る覚悟を決めた頃、英国の腹はまだ決まっていなかった。 いよいよ戦争へと追い立てられたのは、1914年8月2日の夜、「ドイツがベルギーに侵攻しようとしている」という内容の、発信者不明の電報が英外相エドワード・グレイ=前節参照=の元に届けられてからのことだった。 それが確かな情報であることは、外交的な勘からすぐにわかった。

ベルギー中立が侵されるのであれば、英国は立ち上がらなければならない。 しかし、ヨーロッパで唯一、徴兵制を設けていなかった英国にとって、国内が2分された状態では『中途半端に』戦うことになり、それは命取りにもなりかねなかった。 あとは、国内をひとつにまとめることである。 この仕事が外相グレイに託された。

バンク・ホリデーだった3日は、英国らしからぬ快晴の夏日だった。 朝から閣僚会議では議論に議論が重ねられ、それでも結論には至らなかった。 午後3時、下院において外相グレイによる公式な声明が発表されることになる。 この声明が国の命運を左右することは、グレイには痛いほどわかっていた。

1時間半に及んだ演説で、ロシアやフランスに対し『名誉を守る義務』があること、ベルギーを守る義務などが述べられ、これらを回避すれば「彼岸の西欧諸国が一国の制圧下に置かれることを防ぐことはできない。

…そして英国は全世界を前にして、わが国に対する敬意とその名声と信望を放棄しなければならない」と語ったグレイ。 英国の名誉を重んじる心に訴えかけたこの演説は、多くの反対派の心を動かし、英国は参戦へとまとまっていった。  翌4日、英国はドイツに対し、ベルギーの中立を守るよう最後通牒を通達。回答期限の午後11時が静かに過ぎたとき、英国はいよいよ参戦国に名を連ねた。

09-17-2

  こうしてヨーロッパを舞台にドイツ、オーストリアなどの同盟国(Central Powers)と、対するロシア、フランス、英国を中心とした連合国(Allied / Entente Powers)に分かれ、戦いが始まることとなった。翌5日、ドイツはベルギーのリエージュを砲撃。 大戦における最初の戦闘の火蓋が切って落とされた。

侵攻したドイツ軍は直ちにベルギーおよびルクセンブルグに侵入し、さらにフランス北東部の工業地域を掌握しようと試みた。 初戦の一連の勝利によってパリ付近にまで攻め寄せたドイツ軍部隊は第一次マルヌの戦いにおける敗北によって、フランス軍の殲滅に失敗し、戦線を後退・整理させた。
この後、スイスからイギリス海峡にいたるまで戦線が構築され、前線の両側では塹壕が掘り進められた。 この戦線は第一次世界大戦のほとんどの期間を通じて大きく変化することはなかった。 1914年8月に第一次世界大戦が勃発したのである。

大日本帝国はは日英同盟によりイギリスと同盟関係にあった。 開戦に際して、イギリス政府からの要請を受け、連合国側として第一次世界大戦に参戦する。
内閣総理大臣を16年間の後に拝命していた大隈重信は、イギリスからの派兵要請を受けると、御前会議にもかけず、議会における承認も軍統帥部との折衝も行わないまま、緊急会議において要請から36時間後には参戦の方針を決定した。

大隈の前例無視と軍部軽視は後に政府と軍部の関係悪化を招くことになるのだが、 日本政府は8月15日、ドイツに対し最後通牒というべき勧告を行った。 日本政府が参戦に慎重だったことから異例の一週間の期限が置かれたが、結局ドイツが無回答の意志を示したため、日本政府は23日に対ドイツ宣戦を布告した。

09-17-3

☛ ☞  今も残る大戦の遺産 “大量生産”

内燃機関や飛行機と違い、鉄道の技術は第1次世界大戦中に飛躍的に進歩したわけではない。むしろ逆で、あれほどの規模の戦争を可能にしたのが鉄道だった。それまで想像もされなかったスピードと効率で、大量の人員と物資を前線に輸送した。
英国の歴史家、A・J・P・テイラーは、鉄道の時刻表が開戦の要因ではないにしても、欧州全域に広まった大きな要因だったとまで言っている。

鉄道の時刻表は、軍隊の迅速な動員で主要な役割を果たした。同盟を組んだロシアとフランスに包囲されたと感じたドイツは1905年、2正面作戦(シュリーフェン・プラン)を立案。ロシアが動く前にベルギー経由でフランスに侵攻する計画を立てた。
テイラーによれば、計画の中心は鉄道輸送に関する信じられないほど複雑な計算だった。  フランス国境に22日目、パリには39日目に到達する予定だった。

開戦時にドイツが実行したこの計画により、大戦は欧州全域の対立になった。 1914年7月30日にロシアが総動員を発令すると、ドイツはフランスを攻撃する以外に戦略はないと感じた。その際にベルギーを通過し、英国を巻き込むことになっても、である。
鉄道は効率的に物資を前線に届け、負傷兵を避難させた。できなかったのは敵の前線を突破することだ。その結果、移動性の象徴である鉄道は、動きに欠けるとされる戦争を生んだ。

この大戦で、戦略的資産としての鉄道の地位が確立され、1914年以前は非効率的な運行が多かったことに光が当たった。鉄道は、政府の管理下に置かれた戦時中の運行のほうが、開戦前より優れていたことが多かった。 そのため、20年代初期に欧州で鉄道会社の統合(例えば英国は120社を4社に統合)や国有化が進んだ。

戦時中の列車と鉄道網の発展は、物流の科学にも影響を与えた。 1919年には米国の大学で初のサプライチェーン管理プログラムがニューヨーク州のシラキュース大学に設置された。 英国は、20年に初めて運輸省を設立している。学界も政府も、戦時中に得られたサプライマネジメントや輸送の知識・経験を、より確固たるものにしようとした。

09-17-4

☛ ☞  今も残る大戦の遺産 “鉄道輸送”

内燃機関や飛行機と違い、鉄道の技術は第1次世界大戦中に飛躍的に進歩したわけではない。むしろ逆で、あれほどの規模の戦争を可能にしたのが鉄道だった。 それまで想像もされなかったスピードと効率で、大量の人員と物資を前線に輸送した。

英国の歴史家、A・J・P・テイラーは、鉄道の時刻表が開戦の要因ではないにしても、欧州全域に広まった大きな要因だったとまで言っている。鉄道の時刻表は、軍隊の迅速な動員で主要な役割を果たした。 同盟を組んだロシアとフランスに包囲されたと感じたドイツは1905年、2正面作戦(シュリーフェン・プラン)を立案。ロシアが動く前にベルギー経由でフランスに侵攻する計画を立てた。

テイラーによれば、計画の中心は鉄道輸送に関する信じられないほど複雑な計算だった。 フランス国境に22日目、パリには39日目に到達する予定だった。開戦時にドイツが実行したこの計画により、大戦は欧州全域の対立になった。1914年7月30日にロシアが総動員を発令すると、ドイツはフランスを攻撃する以外に戦略はないと感じた。その際にベルギーを通過し、英国を巻き込むことになっても、である。

鉄道は効率的に物資を前線に届け、負傷兵を避難させた。 できなかったのは敵の前線を突破することだ。その結果、移動性の象徴である鉄道は、動きに欠けるとされる戦争を生んだ。

この大戦で、戦略的資産としての鉄道の地位が確立され、1914年以前は非効率的な運行が多かったことに光が当たった。 鉄道は、政府の管理下に置かれた戦時中の運行のほうが、開戦前より優れていたことが多かった。 そのため、20年代初期に欧州で鉄道会社の統合(例えば英国は120社を4社に統合)や国有化が進んだ。

戦時中の列車と鉄道網の発展は、物流の科学にも影響を与えた。  1919年には米国の大学で初のサプライチェーン管理プログラムがニューヨーク州のシラキュース大学に設置された。 英国は、20年に初めて運輸省を設立している。学界も政府も、戦時中に得られたサプライマネジメントや輸送の知識・経験を、より確固たるものにしようとした。

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===== 続く =====
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