550年後、目覚めた英国王=38=

❢❢❢ 「忠誠がわれを縛る」 ・ リチャード3世 ❢❢❢

○◎ =“薔薇戦争”の最後を飾る英国王・ヨーク朝の終焉= ◎○

丘陵地帯

◇◆ 中世最後の騎馬攻撃 ◆◇

アンビオンの丘の南西の斜面では、まだ両軍の前衛同士が激しく戦っていた。 リチャードは戦場を見渡し、ヘンリーをさがした。 戦況を打開して勝利をえるには、もはやヘンリー・テューダーを討ちとるほかなかった。 リチャードには時間がなかった。 ぐずぐずしていればいるほど、不利になると思ったからである。 リチャードは、敵の左翼の本隊からすこし離れたうしろのほうに、ヘンリーの軍旗「赤いドラゴン」を見つけた。 ヘンリーのまわりには、側近と少数の警護隊がいるだけだった。 リチャードは、まわりを見渡した。 アンビオンの丘の北、8百メートルくらいのところには、スタンリー軍がいた。 しかし開戦したときから、まったく動く気配がなかった。

リチャードは決意した。騎馬攻撃でヘンリーを強襲し、いっきにこの戦いの決着をつけるのだ。 リチャードは、側近や忠実な家臣の主だった者をあつめた。 そして、丘の防衛をリンカン伯ジョン・ドゥ・ラ・ポルとラヴェル子爵フランシス・ラヴェルに命じ、そのほかの諸侯や騎士には「我につづけ」と命じた。 リチャードは、左手に手綱を握りしめ、右手に槍を抱えると、「狙うはヘンリー・テューダーただひとり、真の王者に神のご加護があらんことを、真の勇者は我につづけ!」と叫び、思いっきり拍車をかけて丘を駆けおりて行った。

リチャードの両側には、王室長官サー・ロバート・パーシーと国王軍旗手サー・パーシヴァル・サルウォールがついた。 そのあとを、サー・リチャード・ララドクリフ、サー・ラルフ・アシュトンそのほかの騎士とかれらの傭兵がつづいた。 先頭を駆けるリチャードの兜には、王冠が光っていた。 かれのうしろには、歴戦の勇士が全速力でつづいた。 それは、イングランドの長い戦いの歴史のなかでも、かつてない、すさまじくも華麗な、中世最後の騎馬攻撃だった。 リチャードの騎馬隊は、前衛同士が戦っているわきを駆け抜けると、ヘンリーめざして突進していった。

ヘンリー・デューター

 前衛の横を駆けぬけるとき、リチャードの目の端に一瞬、スタンリー軍が映った。ここで側面を突かれたらとの思いが、かれの頭をかすめた。だがリチャードは、それをすぐに振り払った。優柔不断なまでに慎重なスタンリー卿が動くはずない、と思ったからである。 しかし、このとき5千近いスタンリー軍の指揮をとっていたのは、スタンリー卿トマスではなかった。 無謀で攻撃的な、弟のサー・ウィリアム・スタンリーだった。

ヘンリーとかれの警護隊は、不意を突かれた。 槍を構えて突進してくるリチャードと騎士の一群に、実戦経験のほとんどないかれらは、たじろいだ。 リチャードの槍がヘンリー軍の旗手ウィリアム・ブランドンの胸を貫いた。「赤いドラゴン」の軍旗は地面に落ち、混戦のなかで見えなくなった。 リチャードは長剣を抜くと、成り上がりの反逆者ヘンリー・テューダーめざして突き進んでいった。 かれの心臓への一撃で、すべてが決するのだ。

ヘンリーはというと、これまで血にまみれて戦ったことなど一度もなかったが、まわりの者が驚くほど、冷静で勇敢に戦ったという。 少数ながら、かれの警護隊も果敢に戦った。 そしてヘンリーを追い求めるリチャードの前に、ヘンリー軍のサー・ジョン・チェイニーが立ちはだかった。 ウェールズ人のリース・フォア・アプ・トマスは、「赤いドラゴン」の軍旗を見つけると、それを高々とかかげた。 それを見たヘンリーの警護隊は、俄然、勢いを盛りかえした。そこに、ヘンリー軍の歩兵が、ぞくぞくと集結してきた。 リチャードとかれの騎士隊は、いつのまにか、圧倒的な数のヘンリー軍にとりかこまれてしまった。リチャードの目には、どんどんと遠くなるヘンリーの姿が映った。

リチャードの騎士たちは、かれを必死で守った。しかし、サー・ロバート・パーシー、サー・リチャード・チャールトン、サー・トマス・ガウアーと一人ひとり、槍やハルバードで切りつけられ、馬から引きずりおろされて殺されていった。 「白いイノシシ」の国王軍旗を高々と掲げていたサー・パーシヴァル・サルウォールも、ポーラックスで脚を切断され、馬から落ちて姿が見えなくなった。リチャードの側近が援軍を呼ぼうとしたが、もはやそれも困難だった。 わずかに残ったリチャードの側近が、かれに逃げるように迫った。 しかしリチャードの耳には、その声は聞こえていなかった。 かれは、最後まで自らの剣で道を切り開こうとしていたのである。

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ヘンリーもリチャードの剣から逃れたものの、国王軍の騎士にとりかこまれていた。 そのときだった。 遠くから赤いコートをなびかせた何百という騎兵が、こちらに向かって駆けてくるのが見えた。 サー・ウィリアム・スタンリーの指揮するチェシャーの騎馬隊だった。 やっとスタンリー軍が動いたのである。 サー・ウィリアム・スタンリーは、リチャードの騎士隊が目の前を横切り、ヘンリーめがけて突進してゆくのを、鋭い目付きで眺めていた。 そして、激しい混戦状態になったとき、いまこそ参戦するときだととった。 ボズワースの戦いの決定的瞬間である。そしてサー・ウィリアムは、チェシャーの騎馬隊をひきいて、国王軍の側面を攻撃していった。 こうして、リチャードにとって最悪の事態が、ヘンリーには最大の幸運をもたらしたのである。

リチャードは、わずかに残った騎士たちとともに、サットン・チェイニーからシェントンへと流れる小川の近くで戦っていた。 そのとき、リチャードの騎乗していた馬がぬかるみに入りこんでしまった。 そして、馬がそこから抜け出そうとしてもがいたとき、リチャードは馬から振り落とされてしまった。 これに気がついた家臣が、かれをつれて逃げようとした。 しかし、リチャードはこれを拒み、ぬかるみのなかで、絶望的な戦いをつづけた。 そして、ウェールズの歩兵が群がってくると、かれの姿はそのなかに、あっという間に見えなくなった。

ストラットフォード

ヂューター朝

 ===== 続く =====

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