王妃メアリーとエリザベス1世 =26=終節

❢❢ 王妃メアリーの挫折と苦悩が大英帝国の礎に ❢❢

○◎ 華麗なる二人の女王が一つの国土に戴冠、敵対しつつ時代を築く ◎○

メアリー王女

 メアリーの最後については、いくつかの逸話が残っている。

 斧を手にした処刑人は、緊張していた。 盗賊や極悪人の処刑には慣れていた。 いつもならば、何も感じなかった。  しかし、貴婦人の処刑は初めてだった。 それも、異端とはいえ、女王なのだ・・・・・・という。

  「いつものとおりやればいい、ひと振りで済むことだ」と、かれは自分に言い聞かせ、メアリーに許しを請うた。 それでも、動揺を抑えることはできなかった。 メアリーは、「心から許します。 あなたが私のすべての苦しみを終わらせてくれるでしょう」といい、祈りつづけた。

 処刑人は、ゆっくりと斧を振りあげると、いっきに振り下ろした。 と、そのとき、一瞬、手もとが狂った。 彼は、メアリーの頭部を体から完全に切り離すには、もう一度、斧を振り下ろさなければならなかった。 処刑人は、立会人に処刑が確実におこなわれたことを示すために、髪の毛をつかんでメアリーの頭部をもち上げようとした。 すると、頭部が抜け落ちて、下に転がった。

  彼が掴つかんだものは、かつらだった。 かつらの下から現われたメアリーの頭部は、老い白髪だった。 メアリーは、物ごころがついたころに、人質同然にフランスへ送られた。 フランス王の妃となって優雅な宮廷生活をおくっていたが、それもつかの間、若くして未亡人となった。 

  祖国スコットランドにもどってからは、貴族たちの権力闘争に翻弄されつづけた。 現実が理解できぬまま父の従妹をたよってイングランドに亡命してみれば、じつに19年におよぶ俘囚の身だった。 彼女の44年あまりの生涯のほとんどが、人質と俘囚の身だった。 メアリーの白髪の頭部は、そのすべてを語っていたのである。

メアリー処刑

 ◇◆ メアリーの最後 ◆◇

  メアリーの首が切り落とされたあとも、唇だけは、しばらくのあいだ、祈るようにかすかに動いていたという。 処刑人が記念にと、メアリーの靴下止めをむしり取ろうとしたときだった。 彼女の腰のあたりで、何かが動いた。 まわりにいた者が悲鳴をあげ、恐怖で凍りついた。 すると、メアリーのスカートの中から、子犬がでてきた。 その子犬は、メアリーのそばから離れようとせず、血の海のなか、彼女の体と頭部のあいだにうずくまったという。

 メアリーの処刑がロンドンに伝えられると、プロテスタントは教会の鐘を鳴らし、かがり火を焚いて歓声をあげた。そのなかで、ひとりエリザベスだけが不機嫌だったという。

  メアリーの遺体は、ピーターバラ大聖堂に埋葬される予定だったが、彼女が最後までカトリックでとおしたことから、教会にそれを拒否されてしまった。 そのためメアリーの遺体は、鉛の棺に密封され、フォザリンゲイ城内に安置されることになった。 教会に埋葬が許されたのは、それから半年後のことだった。

  16年後にエリザベス1世のあとを継いでイングランド国王となった、メアリーの息子ジェイムズ1世は、母の墓をイングランド王室の墓所であるウェストミンスター寺院に移した。 その場所は、エリザベスの埋葬されたところから、それほど離れていなかった。 生前、顔を合わせることのなかったエリザベスとメアリーは、ここで、初めて対面したのである。

  メアリーとエリザベス。 この二人を同一線上に並べて評価を下すのは誤りであろう。 なぜなら、二人はまるで役割が異なっていたからである。 メアリーは国母であり、象徴君主の立場にいたのに対して、エリザベスは純粋な政治家であった。 メアリーは子孫を残し、エリザベスは絶大なる政治的功績を残した。 どちらが欠けていても、その後の大英帝国の発展は無かったであろう。

メアリー永眠

===== 続く =====

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