創作; “光の庭”のうたた寝 =050=

❢❢❢ 遼王朝皇族が耶律大石、王朝再興賦 ❢❢❢

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❝ =第一章第4節_01= 可敦城 遊牧民との協調 ❞

陰山山脈西部域、蒙古高原に抜ける縦断路を北に向かう耶律大石統帥一行の“北帰行先遣隊”が谷筋を登行している。 昨日は、両岸から迫る岸壁基部の川床を這うように登り来た。 終日、陰湿な谷底の登行であった。 鳥加河で聞き及んだ岩の廊下であり、この廊下の入り口と出口に適当な野営地がある。 今朝、その野営地を早朝にたち 開けた蛇行する谷を一行が登っている。 耶律遥と耶律磨魯古が先行し、諸将三十騎が兵糧を積んだ60頭を囲むように続く。 大石たちが最後尾で登って行く。 刻々と前方が開け、隊商路の傾斜が緩んできた。 日が天空頭上に現れ出した頃、「大石様―、 統師さまー、 着きました。 着きました、早く、早く・・・」と耶律遥の叫び声が届いた。 陰山山脈西端部の谷筋を登り詰めたのであろう。

小半時の後、大石、チムギ、楚詞が開けた空間の峠に立った。 峠と言っても前方にはだらだらと登り気味の隊商路らしき道跡が伸びていた。 周辺は、浅い雪に覆われた草原、その表面をキラキラと太陽が輝かせている。 100mほど先であろうか 耶律磨魯古が率いる60頭の荷を積む馬。 その周囲には30名の兵士と 北遼軍事統師の印旗を高く掲げる曹舜、畢厳劉、何亨理が皮と毛で作った目当て(遮光サングラス)をして 先頭を進んでいた。 耶律遥の姿が見えぬが 一人、その先の状況を確認するため 先行しているのであろう。

大石一行が蒙古高原にあしを踏み入れたころ 石隻也は太行山脈の山中を西に向かっていた。 石隻也は鳥加河での兵糧の手配と集積任務を手伝うことを命じられていた。 可敦城への運搬と搬入の任務を担う耶律磨魯古に全てを移管すれば、南京(燕京)に入って大石統帥達が蒙古高原の可敦城に向かった子細を安禄明と石抹言に報告する伝令の使命をも帯びていた。 隻也は資材搬入隊が鳥加河を離れる三っ日前に資材調達の任務を終えて、彼らと別れ 五日後に南京(燕京)に入っていた。 大石統帥から直接言われた任務であったが、帝都の政商・安禄衝の豪商家で培った経験が彼に役立った。 彼には商人の知恵と持って生まれた敏捷性が備わっていた。 彼の父親は安禄衝の執事を務めている。

帝都に入った隻也は、旧主である安禄明宅に伺候して大石統帥の報告を済ませた後、チムギの父・石抹言宅に足を向けた。 石抹言は隻也が西夏を通過して蒙古高原の大石統帥の下に帰還すると聞いて、義理の息子セデキ・ウルフへの親書を彼に託した。 また、安禄明の父・安禄衝も取引がある興慶の要人への依頼文を彼に託けている。 隻也はこれらの文を油紙に慎重に包み、衣服の襟に縫い込んだ服の上に 狼の毛皮の半衣着込む旅姿で 太行山脈に踏み込んでいる。 太行山脈は彼にとって 初めて足を踏み入れる地域の通過であったが、安禄衝の執事である父の証書と 安禄衝が裏書きする通行手形が有効に働き、旅の滞りは無く、進んでいた。 西夏の興慶に向かうのは、興慶にて何蕎と欽宇阮に会い、 康阮・康這兄弟の動向や彼ら百余名の騎馬武者が西夏国に潜伏する方策と今後の方針等を聞き込んで大石統帥に報告する使命を負っていた。

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 峠を離れ、何時しか上下のない草原地帯を“北帰行先遣隊”は北進していた。 大石とチムギに楚詞が先頭に三馬が並び、曹舜、畢厳劉、何亨理の騎馬が統師旗を掲げ続いている。 その後を耶律磨魯古が率いる三十騎の諸将が兵糧を積む60頭馬追い立てて行く。 大きな太陽が傾き、薄く残る草原の雪面を照らしていた。

「統師さまー、統師さまー」と遠方より先行している耶律遥の声がとどく。 その声に釣られた大石、楚詞、ツムギは前方を眺めた。 傾いた太陽の下の地平に、黒い点を見いだした。 その黒い点に歩みを速めた一隊が一直線に進んで行き 黒い点と一体と成った。 遥が指し示した遠方に砦のような陰影が覗えたが、遥が立つ足元よりその陰影に近くまでの草原は緩やかな起伏で波うち、河川のように大きな溝の帯が蛇行し、幅の広い窪みも現れ消えていた。

一行は速度を速めて目指す陰影に前進した。 大きな太陽が燃えてその傾きを増して行く。 木で作られているらしい城壁が確認できる地点で 日が落ち始めて西の空が燃えた。 その残光に赤く照らされた大石が大きな窪みに馬を進め、その窪を野営地にすると遥に伝えた。

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 === 続く ===

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