創作; “光の庭”のうたた寝 =053=

❢❢❢ 遼王朝皇族が耶律大石、王朝再興賦 ❢❢❢

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❝ =第一章第4節_04= 可敦城 遊牧民との協調 ❞

耶律磨魯古の指揮で搬入した兵糧は南側の空き部屋に搬入、北東の城壁沿いに風除けの仮設囲いを設けた耶律磨魯古が、その囲いの中に兵馬を追い込んでいる。 夜に成れば、東棟の空部屋に馬を移す予定であるが、自らの寝床を確保しなければならない。 古参の多郁が野営天幕を転用した幕で宿舎用にする部屋の開口部を塞いでいる。 三十名の将兵は多忙であった。 大石とチムギは南の城門近くの小部屋を占拠している遊牧民に会いに行こうとしたとき、耶律楚詞達が可敦城周辺の地形偵察を終えて帰って来た。

楚詞を先頭に耶律遥、曹舜、畢厳劉が競うように城門を潜り やや遅れて城門を潜った何亨理が大石の前で下馬していると、彼等の帰還を視止めた耶律磨魯古が近づき彼等の馬を曳いて行った。 大石と楚詞とチムギは短い会話の後、先ほどから中央広場の動きの様子を傍観している遊牧民の男の方へ足を向けた。 耶律遥、曹舜、畢厳劉の三名に多郁が話しかけ、北側の宿舎部屋に歩んで行く。 日は 西に傾きかけていた。
大石は佇む蒙古族らしき牧民に話しかけた。 老人である。 他にもこの古い砦を越冬の宿泊場所に利用しているのであろうが、出入口と窓を毛皮で被っている部屋は四か所のようである。 老人は楚詞たちが偵察してきた近隣で冬を過ごしている遊牧民の長のようであった。 楚詞の話では東方に七張のゲル、北方に五張のゲルが散在していたと報告していた。

長はウリヤンカイ部族であった。 ウリヤンカイは蒙古高原の北部が故地なのだが、契丹が漢中で王朝を建設し出した頃より、彼等は勢力を拡大した。 多くの牧民が南下を開始していたのだ。 勇敢な部族である。 名をボインバットと名乗った。 契丹語を話す。 この長は、一族を率いて異邦のこの地にまで遊牧の旅を続けて、定着したのであろう。 遊牧の民は初対面で部族名と出身地と名前を名乗りあう。 長は大石の名を知ると、床に頭をつけて平身低頭した。 その姿には遊牧民の素朴さと小さな集団を統率する威厳のような風格が漂う。

ひと目見交える前から、大石はこの長が先ほど見回った範囲で、城内の重要な器物の破損がなかったことや、垣間見た彼らの居室から備品の流用などの行為はしていないと判断している。 この長は信用に足ると判断していた。 大石は彼を立たせると、しばらく共に生活する事になろうと告げた。 長の表情に何の変化も起こらなかったが、彼の無表情な態度からは大石への不信なく、遼帝国への諂いや嫌悪などは持っていないと判断した大石は、ボインバットに好感を持った。 二人の立会いを静観していた楚詞はこの長老には何かがあると感じていた。

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  挨拶のみと考えていた耶律大石統帥は楚詞とチムギを誘って城門上部の屋上見張り台へと登った。 見張り台は矢口を設けた腰壁で南と東西の三面で囲まれている。 太陽は西の地平に沈もうとしていた。 大石は陰山山脈山麓が遠望できる南方方向を眺めながら、楚詞から可敦城周辺の地形を聞いている。 聞くまでもなく、西側と南の陰山側にある大小の窪 また 帯状に続く深い窪みは雪解け水を集める河川であることが確認できる。 一望するまでもなく、これらの窪みは天与の塹壕だと判読している。 また、大石は補修せねばならない西の外壁を大きく膨らませ、干し煉瓦で2m程度の城壁と堀を設ければ 堅牢な城が築けると確信している。 中央の広場を見下ろせば、足元の南棟に東棟及び北棟の建屋はさほどの改修を労せずに200余名の将兵を収容可能だと判断した。 馬は拡張して膨らませた場所に畜舎を設ければ事は澄むと可敦城の補強のための整備計画を描いていた。

チムギは雄大な平原に落ち行く太陽に見とれている。

大石は太陽に背を向けて、陰山山麓と東方の平原を眺め続けている。 彼の脳裏には、兵糧さえ整えておけば、籠城戦に持ち込めば、十四・五倍の3000名程度の敵兵は押し寄せて来ようとも撃退できる戦略が練られているようであった。 さらに、この地の蒙古族とウリヤンカイやウイグル(回紇)、カルルク、バスミル、沙陀族を取り込めば呉乞買(太宗)の女真族に対抗できると確信していた。 ただ、この広大な草原が大石に思考の回路を変えさせる作用があるのかも知れない。 北帰行を実行に移した今でも、彼の胸中には、遠祖の故里 小興安嶺山脈に散在する同族を鼓舞して再起を図るか、蒙古族に同化して再興を図るかの結論は出ていなかった。

Columbine Moon

=== 続く ===

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