食糧危機・食の未来と貧困 =01=

◇◆ 食糧危機は始まっている  ◇◆

 危機に備える・柴田明夫 =1/8= 

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  もし、明日から食料が手に入らなくなるとしたらどうするだろうか。

約20年前、日本は記録的な冷夏による不作で国産米の供給が足りなくなった。小売店から米が消え、限定販売する店には買い求める人の長蛇の列ができていたのを覚えている。

近年では、2011年の東日本大震災の影響で食料や物資の流通機能が麻痺し、都心部では食料の買い占めが起こった。ちょっとしたパニック状態だ。

これらは異常気象や天災による日本国内の、しかも一時的な事態ではあった。しかし、実は近い将来、世界中で慢性的な食料不足が起こることが危惧されている。

現在、国連の推定によると世界の人口は年に1.18%の割合で増え続けていて、2050年には90億人に達する。それにともないFAO(国際連合食糧農業機関)では、2050年までに60%の食料生産を増やす必要があると2012年に発表している。

いっぽうで、食料を増産するにも土地や水には限りがあり、また毎年のように世界各地で異常気象による農作物の不作が伝えられている。現在の世界の人口は約72億人だが、8人に1人が慢性的な栄養不足、つまり飢餓状態にある。

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人口の増加にともない食料の需要と供給のバランスが崩れると、食料の価格は高騰し、手に入らない作物が増えていく。  やがて慢性的な不足に陥れば争いに発展することもあるだろう。

実際、チュニジアに端を発した北アフリカや中東の民主化運動「アラブの春」は、干ばつの被害を受けたロシアが穀物の輸出を停止、それによる穀物価格の高騰が原因のひとつだと言われている。

もはや食料が当たり前のようにある時代ではないのだ。

しかし、「日本は食料に対する危機意識が乏しい」と警鐘を鳴らすのが資源・食糧問題研究所の代表・柴田明夫さんだ。  丸紅に入社後、30年以上にわたって食料問題に携わり、『食料危機にどう備えるか―求められる日本農業の大転換』(日本経済新聞出版社)など食料に関する著作も多数出版している。

2008年、世界の食料市場で穀物価格は歴史的な高値を付けました。  要因は原油価格の高騰によるコスト増や投機マネーの流入、農業大国オーストラリアの深刻な干ばつなどさまざまですが、この価格上昇によって食料不足に対する危機感が世界に広がりました。  日本でもパンやうどん、卵の価格が上昇して国民の意識するところとなり、国内の農業問題にまで発展していったのですが、それは残念ながら一時的なことで終わってしまいました」

危機意識が浸透しきらずに終わった原因は同年9月に起こったリーマン・ショックである。世界の穀物価格が下落に転じたうえに円高も進んだため、日本では食品価格が落ち着きを取り戻し、消費者の食料危機への意識は薄れてしまった。しかし、と柴田さんは言う。

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   「実はトウモロコシや小麦などの価格は、2000年以降、急激に上がり続けているのです。トウモロコシでいうならば、不作などで一時的な高騰はあるものの1970~1990年代は1ブッシェル(約25キロ)あたり2ドル程度で推移していたのが、2000年頃から上がり始めて2008年には6ドルにまでなりました。

リーマン・ショックで下落に転じたとはいえ、以前の価格に戻ったわけではありません。上がったり下がったりを繰り返しながらも価格の下値は確実に上昇しているのです」

その背景には中国などの新興国の需要拡大があるという。人口の増加に加えて、成長を続ける新興国では世帯の所得が増えて、食生活も豊かになっている。

わかりやすい例が中国のトウモロコシだ。中国は2000年頃から電気機械工業や繊維業の輸出が伸び、海外からの投資も増えて、経済が急速に成長した。それにともなってトウモロコシの需要も急激に増加したのだ。

「中国のトウモロコシの需要拡大は、豚の飼料用穀物としての利用が高まったからです。生活水準が上がった中国では、以前より肉、特に豚肉の消費が急増していて、養豚業は国も奨励する成長産業となり、大手企業の参入も目立ちます。今では世界の消費量1億トンの半分、5000万トンが中国で消費されている。つまり、世界の豚の半分を中国人が食べているのです」

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=== 続く ===

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