食糧危機・食の未来と貧困 =07=

◇◆ 食糧危機は始まっている  ◇◆

 危機に備える・柴田明夫 =7/8= 

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「同じ石川県ですが、五郎島金時という糖度の高いさつまいもがあります。 ある農家が出荷できない形の悪いものを自分の工場でペースト状の菓子にして売ったら評判になりました。

それで全国から問い合わせがくるようになったのですが、販路を全国に広げるには数量も増やさなければなりませんから、数億円の設備投資が必要になる。 そのいっぽうで、周りの農家からは『本業はなんなんだ』と妬まれたりもするそうです。 まだまだ閉鎖的な農業界ではそう簡単なものでもないのです」

6次産業化は働き手や地域の特性に大きく左右されるのである。

では、6次産業ができない農家はどうすればいいのか。 また中山間地の農家が収益を安定させたり、資源をフル活用させたりするにはどのようにしたらいいのか。  柴田さんは、それには「複合経営」をすべきだと語る。

複合経営とは米だけではなく、野菜や果樹、畜産、酪農など他品目の生産を行うこと。 稲作だけだと収穫が終われば閑散期に入るが、他品目の生産を行うことで閑散期はほかの作物をつくるなど、資源をあますことなく使うとともに、収益の安定性を図るというものだ。

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 「たとえば稲作をするのに借金をして農業機械を導入したとします。 農作業は楽になりますが生産量を増やさなければ返済がままなりません。 だからといって農地を拡大するとさらに借金が増えます。

それなら購入した農業機械を稲作だけでなく畑にも使ったほうが効率的です。 固定資産をフルに活用して収益をあげる。 その地域や農家の条件も考えて、複合経営に目を向けることも大事だといえます」

理想はアグリファンド石川のような6次産業かつ複合経営ができることだが、日本の農業は専業農家、兼業農家、自給的な農家などさまざまな形態によって成り立っている。 適正規模を考えて地域ぐるみでそれぞれの経営方法を探っていくのがよいという。

地域ぐるみという点では、集団で営農することも方法のひとつだ。 高度成長期にはインフラが整備されたことで農村の過疎化が進んでしまった。  しかし、さらにインフラが整ったいまでは、農村と都市部を行き来する時間も手間も大幅に削減されている。 つまり、就農者がふたつの拠点をもうけることも可能だと柴田さんは考える。

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 「都市部で仕事を持ち、余裕のある時間で農業をするのです。 農業は片手間でできるものではないと言われるでしょうが、ここで注目したいのが農業・農村の中で一役を担うことです。 農村ではすべてひとりでやる必要はなく、地域住民のひとりとして何らかの役割を担えばいい。 経理が得意なら経理を担当し、技術があるならコントラクターで畑を耕すなど、農村全体で農業を営んでいくのです」

加えて、農業の関連業や農家を支える農協などの体制も変えていくことが大事だと言う。

「農家や農村だけが創意工夫しても何も変わりません。 誰が農業を変えるのかということは昔からのテーマ。 農政審議会の初代会長で農業経済学者の東畑精一氏が『農業を変えるのは農家ではなく、非農業部門である』と言いましたが、そのとおりで食品業界や流通業界がもっと参入して農業を変えていかねばなりません」

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 実際、味の素が有機肥料の生産に取り組んでいるし、カゴメは農業部を立ち上げて農家に技術提供するなどして自社ブランドのトマトを生産している。

キリンビールもまた岩手などで生産されるホップを積極的に使用している。 企業が国内の農業を支え、盛り上げていくこともまた改革には欠かせない要素なのである。

農協も変わらなければならない。 農協を通すことによる問題は、農家が自分で値段がつけられないことと自分の顔が表に出ないこと。 農家が差別化に奮闘しても出荷時に一緒になってしまったら意味がないし、売り値がわからなければ生産意欲も湧いてはこない。

そのため、インターネットを使うなどして個人やグループで物流まで行う農家も増えているが、農協自体がこうした取り組みにかかわっていく必要がある。  「政府も農協も企業も個人も、日本全体で農業のありかたそのものを根本的に見直していくことが重要なのです」

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=== 続く ===

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