食糧危機・食の未来と貧困 =12=

◇◆ 2048年には世界の海で魚が獲れなくなる  ◇◆

 漁業復活の処方箋・小松正之 =4/8= 

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 また、日本と同様に過剰漁獲によって水産資源が減少したノルウェーでは、1990年初頭に漁業者ではなく漁船ごとに漁獲枠を割り当てるITQの変形、IVQ(Individual Vessel Quota)方式を導入。

2012年の漁獲量は1960年代の約1.6倍、漁獲金額は約1.8倍に増えた。 しかも、1996年に1万隻以上あった漁船は6800隻、漁業者も1万2000人(ともに2010年)と1985年の半分以下になっている。

IVQの導入よって漁業の効率が上がり、1人当たりの漁獲量も収入も上昇したのである。

「2007年の日本とノルウェーのデータを比べると、漁船1隻あたりの漁獲高は日本が63トンでノルウェーは320トン、漁業者ひとり当たりでは27トンと169トンです。 日本もノルウェーも漁業就労者の人数は減っていますが、日本は半数以上が60歳を超えているのに対し、ノルウェーは60歳以下が85%、39歳以下でも40%もいる。 これは日本の4~8倍の収入が得られるので漁業が若い人たちの人気職業になっているということです」

さらに、IVQによる資源管理の結果も出ていて、海面近くを遊泳するニシンやマサバ、またマダラは右肩上がりに増加しているという。 ノルウェーの水産物輸出量は中国に次いで2位だ。

このように各国が結果を出しているにもかかわらず、日本はなぜ悪循環しか生まないオリンピック方式を続けているのだろうか。

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「補助金にたより過ぎているのです」

補助金は水産業を維持するために行政から出されるもので、漁港施設の整備をはじめ、漁船の建造、漁業者の欠損の補てん、漁船燃料費などに充てられている。  小松さんはこの補助金こそが乱獲を促し、水産業の発展を妨害しているのだという。

「民間企業であれば損失は自己責任であり、それが蓄積したら倒産します。  ところが、漁業や農業は燃油が高くなったり、天災が起こったりして損失が出ても行政が補填してくれる。

補助金を撤廃したノルウェーやアイスランド、アメリカでは、燃油が上がったら経営を改善しようと漁法を変えたり、船を改善したりして対応しますが、日本の漁業者は補助金があるからそういうことは考えないのです。  これでは、根本的な構造問題の解決は先送りです」

たとえば、イカは明るいところに集まる習性があるため、イカ漁は暗闇の中でライトを点けておびきよせる漁法を用いる。  日本の漁業者はいつもより不漁だと、燃料が補助されるのをいいことにエンジンの大きな船で発電力を高め、ライトを何倍もの強さにしておびきよせる。

そうするとイカは強い光のもとへ集中してしまうから、周りの船もこぞって光を強くする。   投資が害になり、乱獲を招く。

「無駄な競争ですよ。  ITQを取り入れていれば10倍の光を使って一気に漁をしようとする人も、普段と変わらない光でのんびり漁をする人も、漁獲枠が決まっていますから、経費や販売価格を考えて選択することができる。  外国はそのような制度になっています」

正式に参加を決定したことで話題になっているTPP(環太平洋経済連携協定)の交渉では、アメリカやオーストラリアなどが乱獲を招くとして補助金制度の撤廃を求めていたが、日本や新興国は反発。

昨年の10月に日本の補助金制度は基本的に維持される見通しとなった。 現在、行政が出している漁業補助金は年間1400億円である。

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 「補助金廃止を反対する理由に、東日本大震災の被災地域の漁業復興に支障が出るからだという人間もいますが、補助金を出すことによって10のうち1しか獲らなくても生活できてしまえば、あとの9の時間は努力しない。  真面目な産業は育ちません。今の補助金は没落する漁業をつくっています」

こうして見る限り、日本の漁業が発展するためには現在の補助金を廃止すべきなのは明確である。 それがなぜできないのか。 小松さんは行政の中にも「このままではいけない」と思っている人間は山ほどいるだろうという。

「しかし、理解しているのと、それを実行に移すのはまったくレベルの違う話。改革には抵抗勢力がつきものです。 補助金を撤廃するためには3つの抵抗勢力があるのです」

第1に政治家だ。彼らは現場の人間の要望に応じて補助金を出すことで、自分の評価につながる。補助金は漁業関係者の票を獲得するための切り札となるのである。 2つめは行政自身。抵抗勢力にあいながら制度を変えることより楽に評価が得られるため、目先の手柄にとらわれて補助金を配る。

そして、最後に漁業協同組合と年老いた漁業者だ。漁業が衰退しているなかで、漁協にとって補助金は組織維持のために欠かせない収入源であるし、漁業者も補助金がなくなれば操業が立ち行かなくなる。 老年の漁業者は、自分たちは長くはないから、その間はいまのまま漁業を続けたいと考え、漁業の発展は二の次になってしまうのだ。

「現場で『息子や娘には継がせない』という言葉をよく耳にしますが、はっきり言って無責任です。 海はみんなのものです。魚が減っていることに危機感を持たず、次世代に資源を残そうと考えない人間に漁業をやってほしくはない。 そのためにも補助金は撤廃するべきなのです」

残念ながらこうした3つの抵抗勢力に立ち向かうだけの知識と勇気、情熱を兼ね備えた人間となると、ほとんどいないのが現状だと小松さんは言う。

だとすると、このまま日本の漁業が衰退するのを見ていることしかできなくなるわけだが、こうした状況を打破するために、小松さんが先導するかたちで新しい取り組みを始めている自治体がある。

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=== 続く ===

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