食糧危機・食の未来と貧困 =47=

◇◆ 日本発、次世代の緑の革命 ; 芦苅基行 =3/7=   ◇◆

 第一回 組み換えと異なるもうひとつの遺伝子技術 =後節= 

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  「遺伝子組み換え自体を否定はしていません。ただ、反対派も多いことを考えると、世界中どこでも受け入れられる方法を用いた方がいい。 なにより私は、自分の目で見極めて、より優良な品種をつくりあげてきた日本の育種家の方々をリスペクトしています。

今まで世界中のコメを食べてきましたが、味覚に自信がない私でも日本のコメは世界一美味しいと思う。 だから、単に新しいことを始めるのではなく、これまで培ってきた世界一のイネの栽培技術の流れに組み込んでいくべきだと考えているのです」

日本では明治36(1903)年に本格的なイネの品種改良が始められた。 大正10(1921)年には交配による初めての品種「陸羽132号」がつくられ、昭和31(1956)年にはコシヒカリが登場している。 コシヒカリは品質に優れていることから全国的に人気になったが、いもち病に弱い。 そこで、いもち病に強い品種を交配することでコシヒカリBLという品種を開発、平成12年に登録された。いま、新潟のコシヒカリはこの品種である場合が多い。

このように日本では今まで700以上の品種が開発され、そのうち約300種類が全国で栽培されている。  日本の技術はイネにかぎったことではない。 モモにせよメロンにせよ、日本ではより美味しく、栽培しやすいものにするため、育種家の手によってさまざまな作物が改良されてきた。

その精度たるや、世界一だろう と芦苅さんは断言する。  ただ、このようにイネのすぐれた性質を判断するには、育種家には熟練の技術が必要なうえ、その判断も完璧ではなく、度重なる試行錯誤が必要とされていた。

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 生物を交配させると親の遺伝子をそれぞれ50%ずつ受け継ぐ。 上記の図のように品種Aに品種Bのある遺伝子を取り込みたい場合、1回の交配では品種Aと品種Bの遺伝子が半々になるため、新品種F1に何度も品種Aを交配させていくのだが、同じ親から生まれた兄弟が顔も体質も違うように、同じ品種を交配させてもどの遺伝子を受け継ぐかは株ごとに異なる。

従来の交配では、かけ合わせてできた品種に目的の遺伝子が受け継がれているかは育てて比較してみないとわからないし、それも視覚や味覚での判断になるので確実ではない。

よって、優良と思われる株を広く選び何通りもの交配を行って見極めていく必要がある。   しかし遺伝子を分析すれば、苗の段階でどの株にどの遺伝子が受け継がれているかがわかるので、目的の遺伝子を受け継いだ株を選抜して交配させることが可能。

つまり、極端な話、遺伝子の分析技術さえあれば誰でもイネの性質を正確に判断でき、ねらった性質をもつ品種により早くたどりつける。 つまり、早くて確実なのだ。

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 芦苅さんは遺伝子の分析と育種を併行して行うことでそれを実証している。 そして、この技術を持って食料危機問題に取り組もうとしているのだ。

「日本を一歩出ると、美味しいものどころか満足に食べられない人がたくさんいます。 世界では飢餓やそれに関する病気のために、毎日2万5000人の人が命を落としているといわれている。 私がこの研究を始めたのも世界の貧困問題がきっかけです。 この問題を日本人の得意技である交配によって解決していきたいんです」

それが目標だと語る芦苅さんは、どうしてイネの遺伝子研究を志し、新たな品種を開発するまでにいたったのか。その経緯を伺っていく。

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=== 続く ===

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