食糧危機・食の未来と貧困 =49=

◇◆ 日本発、次世代の緑の革命 ; 芦苅基行 =5/7=   ◇◆

 第二回 なぜイネで次の緑の革命を目指すのか =後節= 

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  生物は細胞からできている。細胞のなかには染色体があり、さらにそのなかに遺伝子が配列されているのだが、芦苅さんが修得したのはイネが持つ12本の染色体の中から目的の遺伝子を特定する技術。 いまでこそ世界各国で行われているが、その頃は非常に特殊な技術だった。 「この技術によってイネの交配や遺伝子組み換えがよりスムーズに行えるようになりました。

イネの栽培にとってとてもエポックメイキングなことですが、決して私の力だけではなく、多くの専門家が集まる環境だったからこそできたことです」  その後、芦苅さんは名古屋大学に移り、自身が持つ技術でイネの遺伝子の特定に努めてきた。

研究の中心は浮きイネだ。水位が上がるほど背丈が伸びる浮きイネの性質に着目して解析を行い、背丈を抑制する遺伝子Snorkelを見つけるにいたった。 そして研究室をかまえることになったときに、遺伝子の解析とイネの品種改良を一緒に取り組むことを研究テーマとしたのである。

「私より優れた遺伝子の研究者はたくさんいるし、育種のプロも日本には大勢います。でも、そのふたつを融合させている人はあまりいません。 幸い、私は両方の技術を身につけることができ、遺伝子の特定から育種まで一貫して行うことができる。それならば他ではできない新しいことに挑戦しようと考えたんです」

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  日本の育種家は本当にすごいと芦苅さんはいう。 「私も20年にわたってイネを栽培していますが、いまだに目で見ただけでは優良なイネを見分けることはできません」。

ただ、耐病性の育種のプロは病気に弱いイネはわかるが害虫に弱いイネはわからない。そう考えると1人で育種できるのは数種類。 だが、遺伝子が解明できれば1人でもどれが害虫に強くて、どれが病気に強いかをつきとめ、いくつもの品種をつくることができる。

「私や学生たちのように農業経験が短い人間でも、2年くらいみっちり学べば遺伝子を頼っていろいろな特長を判断することができるようになります。これも遺伝子をつかうメリットのひとつですね」  ただ、遺伝子の解明によって品種改良が容易になっても、病害と害虫に対しては難しいところだという。

乾燥に強いイネをつくるには環境だけを考えればいいが、病害や害虫の場合は、耐性を持つ品種をつくると害をもたらすそれらの生物も対抗できるように進化してしまうからだ。

たとえば、ウンカという害虫は毎年東南アジアから貿易風に乗って飛来するが、日本の冬を越すことができない。だからウンカに強い品種をつくれば害を受けることはないのだが、もしもその品種が東南アジアにわたって利用されたら、その品種に耐えるより強いウンカが生まれてしまう。単純につくればいいというわけではない。

そうした問題を踏まえながら、いま芦苅さんは遺伝子の特定を行いつつも、品種改良により積極的に取り組んでいる。それはなぜか。

そこに、貧困問題への貢献という少年時代に掲げた目標があった。 「sd1やgn1を解明し、枝分かれを増進させるWFP遺伝子の研究をしながら、だんだんと手応えをつかんでいきました。そうした中で立ち上げたのがWISHプロジェクトです」  WISHは「Wonder rice Initiative for food Security and Health」の頭文字を取ったもの。

WISHプロジェクトとは日本語にすれば「食糧安定と健康のための奇跡のコメ計画」という意味だ。 芦苅さんは自身の研究室でつくった品種を用いてアフリカの飢餓問題に貢献したいと考えている。 なぜアフリカにコメを普及させるのだろうか。 単に少年時代に見た番組の影響だけに留まらない、芦苅さんの考えを伺っていく。

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=== 続く ===

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