食糧危機・食の未来と貧困 =51=

◇◆ 日本発、次世代の緑の革命 ; 芦苅基行 =7/7=   ◇◆

 第3回 食料危機を救う緑の革命はまた起きるのか =後節= 

 大正末期に岩手の農業試験場で交配によってつくられた農林10号は第二次大戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の資源収集の一環として有用と思われる品種に選別され、アメリカに持っていかれた。 それをアメリカの育種家が交配させてつくったのがゲインズなのだ。

「大きなプロジェクトに発展したら難しいけれど、できるかぎり日本人の気持ちでやりたい」と語る芦苅さんたちのプロジェクトは、日本の育種家が培ってきた技術の潮流の中にある。

ならば、そうした日本人の技術と思いが込められたWISHがアフリカの食料不足を補うミラクルライスとなって、2050年の危機を救う「第2次緑の革命」を起こすことを私たちは期待してよいのだろうか。

「IR8やゲインズのように多くの国で栽培される品種が再び出てくることはないと思います。 先にも言ったようにアフリカはすごく広いですから。 IR8だって東南アジアの環境にはあったけれど、アフリカに根付くことはありませんでした」

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 芦苅さんはWISHプロジェクトの重要性は違うところにあると言う。

「WISHの品種はひとつではありません。 私たちが200種つくることに対し、闇雲に品種を増やして意味があるのかという人もいますが、アフリカの多種多様な条件に合わせるなら当然のこと。 WISHプロジェクトの品種を言えというなら、その土地に合わせて交配されたすべての品種が該当することになります。 アフリカ全土を救うミラクルライスはできないけれど、小さな革命なら起こせるはずです」

現在、完成といえるベースの品種は200種のうち30種ほどだが、今年の12月には第1便をケニアに送る予定だという。 それらをケニア人が好む香り米に交配する。

「私たちのプロジェクトは新しい品種をつくったら成功ではなくて、現地の人々に受け入れられて初めて成功といえるんです。 そのためには、自己満足で終わらずに彼らの求めるものをもっと理解していく努力も必要。 WISHプロジェクトはまだ始まったばかりですが、志をともにする学生や研究者たちとつくりあげていくのは楽しいですし、みんないつか実を結ぶと信じてやっています」

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  WISHプロジェクトが軌道に乗れば「第2次緑の革命」が起こるかもしれない。 とはいえ、普及における問題は品種の善し悪しだけではない。 アフリカの農業センターでは中国の機械が使われていることが多い。 中国が投資しているからだ。

いかによい品種があっても、その農業センターの予算が中国から出ていて他の品種を奨励されれば、そちらを使わざるを得ないということもある。 だが、芦苅さんは己の選んだ道が正しいと信じている。

「私たちのつくったイネは大々的に使われなくても、小さな村で栽培されて村の人たちがお腹いっぱい食べられるようになったら、ひとつの成功だといえるんです」

小さな点も集まれば大きな集合体となる。芦苅さんたちの小さな革命が始まる。

・・・・・・・新節につづく

=== 続く ===

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