現代の探検家《小林快次》 =22=

◇◆ Great and Grand Japanese_Explorer   ◇◆

 世界中を飛び回り、恐竜の姿を求める / 小林快次 =22= 

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◇◆ 第九回 大発見は、最終日の夕方に =1/2= ◇◆

 大発見は、予期せぬ形で起きることがある。 しかも必ずと言っていいほど、最終日の夕方に・・・。この営巣地の発見もそうだった。

今から4年前、2011年8月のある日の夕方。 いつものように暑い1日だった。 モンゴル西部のゴビ砂漠にあるジャブクラントには、ジャブクラント層というオレンジ色の泥岩(でいがん)の地層が広がっているが、夕日に照らされると、崖が真っ赤に燃えているようにも見える。影とのコントラストが、本当に美しい。 日没近くなって涼しくなったが、日中は灼熱だったため大量の汗が乾き、塩の結晶となって皮膚を覆っている。

調査の最終日ということもあって、疲れはピークに達し、気持ちも「帰国モード」に入っている。 首都ウランバートルに帰って、シャワーを浴び、どんなおいしい料理を食べようかと考えながら、集合場所のジープに向かっていた。

ジープまであとちょっとという時に、さっきまでいたあたりで、ヤマセラトプスという小さなケラトプス類(角竜類)の骨格が発見されたという声を聞く。 それとほぼ同時に、誰かがジープのそばで手招きして、私の名前を呼んでいる。 調査に参加していた広島県在住の小学校教諭、木吉智美さんだった。
どちらに行くか迷ったが、距離が近い木吉さんのところへ行くことにした。

「これ何ですか?」  木吉さんは、小さな卵のかけらを手渡してきた。 かけらを見た瞬間、またかという気持ちで、ため息が漏れた。

「ダチョウか何かの卵の殻でしょう。 恐竜時代のものではなくて、たまに地面に落ちています」 私は少し面倒くさそうに答え、ヤマセラトプスの方へ足を向けようとした。

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  「ちょっと待ってください。 殻だけじゃなくて、卵がいくつか地面に埋もれて、巣のようになっているんですけど・・・」

そんなはずはないと、仕方なくその「巣」というものを見に行く。 木吉さんはその「巣」のところでしゃがみ、指をさす。

すると、先ほど手渡された卵の殻がたくさん落ちているのが目に入ってくる。 卵の化石とは不思議なもので、その化石を認識するまでに時間がかかる。 まるで間違い探しのクイズを解いているようで、見えないときはまったく見えないが、見えはじめるとジワリジワリと浮き上がってきて、いったん見えるとそれ以外ないというくらいはっきりと見える。

最初は1個しか見えなかった卵の破片は、10個に増える。 そして10個が50個に、100個にと増えていく。 ついには、無数の卵殻が落ちているだけではなく、リング状のパターンを作っているのが見えてくる。

それはまさに直径15センチくらいの卵の集団で、木吉さんの言うとおり、紛れもなく恐竜の巣だった。 彼女の方を見ると、「やっと見えたの?」とあきれたような顔をしている。

予期しない驚きのため、目の前にある巣が何なのか、しっかりと消化することができない。 ただ、この発見がすごいということは、その瞬間、直感的にわかった。

「(もう日が沈みそうなのに、何でこんなタイミングで発見を・・・)」

口から出そうになった言葉を飲み込み、地平線に沈もうとしている太陽を見つめながら、目の前の巣をどう処理するかを考える。 あまりの時間のなさに、正直何をすることもできない。 取り敢えずGPSユニットで緯度経度を計測し、フィールドノートにスケッチ。 写真を撮って、一通りのデータを取る。

「また来年。来年にしましょう」 私は、自分に言い聞かせるように同じことを繰り返し言って、巣の上に土をかぶせた。

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=== 続く ===

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