現代の探検家《田邊優貴子》 =02=

◇◆ Great and Grand Japanese_Explorer   ◇◆

National Geographic Magazine”より

 南極の凍った湖に潜って、原始地球の生態系を追う =田邊優貴子= 

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◇◆ 第1回 南極まで6時間 =1/3= ◇◆

「残念だけど、日曜まで出発できないだろうな・・・」

 昨日の夕方、南アフリカ共和国ケープタウンのホテルで調査機材や防寒着の仕分け作業をしていたところに、調査隊のリーダーからメールが飛び込んできた。 予定では今日、つまり2014114日の深夜2330分に、私たちは旧ソ連の機体イリューシン 76TDに乗って南極大陸に向かうことになっていた。

 ところが現地から届いた天気予報によると、現在2つの低気圧が発生しており、木曜までは風速1015m/s、金曜から土曜の午後にかけては風速20m/sで、雪も降るという。 そして、文末にはこう添えられていた。

「結論:これから金曜にかけてイリューシン 76が着陸するのには最悪のコンディション。 極めて危険。 土曜の夕方はわずかにチャンスあり。 今のところ日曜以降は良好なコンディションが期待できる」

 そういうわけで、しばらくは南極に向かえそうになかった。

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4回目の南極は過酷な山岳エリア

 1028日に日本を出発した私は、ここケープタウンで、南極での調査に向けた準備にいそしんでいた。 これからロシアの南極基地であるノボラザレフスカヤ基地へ入り、そこからさらに120kmほど内陸の山岳地帯に位置するLake Untersee(アンターセー湖)を調査しに行くのである(ちなみに、Unterseeはドイツ語で、訳すと“下湖”というちょっとおかしな名前になる)

 私の南極行はこれで4回目。 けれど、今回はいつもとはちょっと違う心境になっている。 私がこれまで行った3回はすべて、昭和基地を含めた大陸の沿岸部周辺。 広大な南極大陸で言えばほんの一点に通ってきたわけだが、今回は初めて行くエリア、しかも内陸の、より過酷な環境の山岳地帯だ。

 現地に到着する11月初旬は、南極では晩春から初夏という季節。 かなり風が強い場所らしく、南極入りする時期がこれまでより早いこともあって、当初は気温マイナス30℃まで下がるだろう。

 湖を調査する期間はおよそ1カ月におよぶが、その間の生活はキャンプ。挙げ句の果てに、湖面に張った厚さ4メートルもある氷に穴をあけて、そこから湖の中に潜って調査する。 確実に、これまでで一番過酷な南極行となるだろう。 そんなわけで正直なところ、いつもより緊張感が高いのだ。 と言っても、やはりそれ以上に、行ってみたい・見てみたい・この足で歩いてみたい気持ちのほうが遥かに大きい、というのも確かなことだ。

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地球の生態系のはじまりが見られる

 2年前、このWebナショジオで連載した『南極なう!で、昭和基地周辺の湖のことを書いたのを覚えている人はいるだろうか。

 昭和基地周辺の湖のほとんどは、最後の氷河期が終わった12万年前に、大陸氷床が後退することによって氷の下から剥き出しになったものだ。 剥き出しになった湖は生物的空白空間、つまり「無生物環境」からはじまった。そこに生物が侵入し、時間をかけて徐々に定着し、生態系が発達していった。 そして今では、湖底に緑の森のような豊かな植物の世界が広がっている。

 ところが、この昭和基地周辺の湖の中には、魚はおろか動物プランクトンもいない。 植物と言っても高等植物はおらず、バクテリアや菌類、シアノバクテリア、藻類、コケの王国になっている。


 地球上でこんなところはほかにない。 きっと、原始地球にはこんな世界が広がっていたんじゃないだろうか。 そう、だから私は、南極の湖は地球の生態系のはじまりを人類が直接垣間見ることが出来る、 類い稀なるフィールドだと思っている。

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