現代の探検家《田邊優貴子》 =06=

◇◆ Great and Grand Japanese_Explorer   ◇◆

“National Geographic Magazine”より

 南極の凍った湖に潜って、原始地球の生態系を追う =田邊優貴子= 

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 ◇◆ 2回 飛行機で南極大陸へ =2/2= ◇◆

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着替え戦争

離陸から3時間くらい経った頃、ぽつぽつと防寒着に着替える人たちが出てきて、4時間経った頃には着替えがピークを迎えた。シート後方のかばん置き場周辺をチラリと見てみると、『黒タイツ+上半身裸の人々』がぶつかり合って、もはや戦場と化していた。搭乗者66名のうち、女性は私とアリソンの他に2名の計4名。この着替え戦場に突入するなんてとんでもないと判断した私はしばし待つことにした。

それから1時間もすると、あれほど壮絶だった着替え戦争はすっかり沈静化し、かばん置き場には平和が訪れていた。おかげで、私はゆったりと優雅に防寒着・防寒靴へ着替えることができた。南極へ向け、みなが鼻息荒く興奮気味な中でその雰囲気に飲まれることなく、我ながらよくもまぁ冷静なナイス判断を下せたものだ。

しばらくして、着陸に向けイリューシンは下降し始めた。シートのそばには外の様子を伺えるような窓がなく、その代わり、機体前方に取り付けられたカメラの映像が目の前の大きなモニターに映し出されるはずだった。が、カメラの故障か何かで、なんだこりゃ??というようなよく分からない灰色のぼやけた映像がただ映し出されるだけ。とにかく時折エンジン音が大きく変化しながら、確実に下降していることだけは感覚で分かった。

離陸から6時間半、強い向かい風のために予定飛行時間より30分遅れて、大きな音と振動とともに、イリューシンはついに氷の上に着陸した。その瞬間、機内では歓声と拍手が起こった。

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南極大陸

私の方は、いまだ本当に南極大陸に到着したのかどうか半信半疑だったが、右前方のドアがゆっくりと開け放たれると、眩しい光が薄暗い機内に入り込んできた。 私はニット帽とネックゲイターと分厚い手袋を装着し、ザックを背負い、サングラスをかけ、かばんを持ってゆっくりとイリューシンの外に出た。 その途端、凍てつくような風が横から吹き付けてきた。辺りを見渡すと、どこまでも果てしなく雪と氷だけが続いていた。 ここには空港らしき建物も何もない。 私が立っているのは、ただただ白の世界だった。

ケープタウンを出発して、たったの6時間半。 さっきまで初夏のケープタウンの暖かく心地よい風に吹かれ、免税店にいたのが嘘のようだ。 何もかもが大きくかけ離れていた。 南極へやってくるのに6時間半という時間は、私にとってずいぶん急だったようだ。 異次元の世界にワープしたような気分だった。けれど、どこか心の片隅に懐かしさも感じていた。またここに戻ってきたのだ。
兎にも角にも、こうして私はついに南極大陸に到着した。

貨物室から大量の物資が降ろされること3時間、イリューシンは氷の上を猛スピードで滑走し、再びケープタウンへ向けて飛び立っていった。 インド人研究者たちも、冒険家も、観光ツアー客たちも、いつの間にかいなくなり、私たち6名は白の世界にポツンと残された。 凍てつく風を遮るものがない場所で、私たちは荷物の陰に隠れて風をやり過ごしながら、ノボラザレフスカヤ基地からの迎えを待った。 ほどなくして、やって来たトヨタのピックアップ型自動車とスノーモービルの橇に荷物とともに乗せられ、15分ほどで基地に到着した。

これから数日間、基地に滞在して調査行に向けた準備に取りかかる。 それが終われば、いよいよ目的の地、アンターセー湖に向かって出発する。
私の心の中にあった期待と緊張はそのどちらもが明らかに大きくなっていた。

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=== 続く ===

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