現代の探検家《田邊優貴子》 =16=

◇◆ Great and Grand Japanese_Explorer   ◇◆

“National Geographic Magazine”より

 南極の凍った湖に潜って、原始地球の生態系を追う =田邊優貴子= 

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◇◆ 第6回 南極ダイビングはトラブルとともに =2/3= ◇◆

体が沈まない

氷の上に座っていた私は、マスクを付けて5秒もしないうちに思い切って水の中へチャプンとジャンプした。 水面から見上げると、ダイブロープを持つクレメンス、通信機の近くで私に話しかけるデイルの姿が見えた。 まるでアザラシにでもなったような気分だ。

「ユキコ、聞こえるか?」
「うん、聞こえるよ。これから潜行開始する」
「OK。ロープ、浮力、機材、体調、すべてじっくりチェックして」

氷上のデイルの声がマスクのスピーカー越しにモゴモゴした音で聞こえた。 会話に支障はないようだった。  “よし、いざ氷の下の世界へ・・・”

息を吐き、肺の空気を全部外へ出して息を止めた。 普通ならこれで体が沈んでいくはずなのに、その気配がまったくない。 ダイブホールの氷の壁を両手で押して体を沈めようとしても、すぐに水面に浮かび上がってしまう。

なぜだろう? 浮力の大きい装備であることを考慮して、いつもよりウェイトはかなり多めの16kgにしている。 それでも足りないということか?

頭の中でそんなことを考えながら、何度も息を吐いて止めて氷の壁を押すという動作を繰り返しているうちに、息が切れ体力が消耗してきた。 どう考えても、ウェイトが足りない。 マスクのレギュレーター部分を空中に出したくはなかったが、クレメンスとデイルにダイブロープを引っ張ってもらい、いったん、氷上に這い出た。

ウェイトを追加し、すぐにまた水中へ入ったものの、やはり水中へ沈降していかない。 もう一度氷上に引っ張り上げてもらう。 氷上に這い出るのも一苦労だ。 どんどん体力が消耗し、とても息苦しい。 マスクを外して、普通に思いっきり外の空気を吸いたいが、決してマスクを外すことは出来ない。 ウェイトを追加すると、なんとか気持ちを平静に保ち、呼吸を整え、また水の中にジャンプした。

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氷のトンネルを抜けて

今度はようやく体がゆっくりと沈み始めた。 息を止めたまま、 ゆっくりゆっくり、氷のトンネルの壁が目の前を動いていく。さっきまで見えていた地上の世界はもう見えない。 丸い開口部はどんどん小さくなっていった。 やっと潜ることが出来た。

いつもならすんなりできることができないだけでこんなに体力を消耗し、ナーバスになるものなのか・・・そんなことを考えているうちに水深4m、氷の下へたどり着いた。

深くなるにつれ水圧で浮力が低下し、沈む速度が速くなっていくのが分かった。 スーツの中の空気が圧縮されていくからだ。 これもいつものことだ。 私は中性浮力を保つため、いつも通りBCジャケットに空気を送り込むボタンを押した。

ところが、ボタンはびくともしない、いくら押しても動かない。 どうやらボタンが凍り付いてしまったのだ、と理解するのに1秒もかからなかった。 どんどん体は沈んでいく。 思いっきり空気を吸い込むと少し沈降速度が遅くなったが、徐々に沈んでいくのには変わらない。

“え?!このままだと水面に再び浮かび上がれない・・・地上に戻れない?!”

一瞬パニックになりかけた私だったが、ドライスーツに空気を送り込めばよいことに気づいた。 ドライスーツとエアタンクはホースでつながっており、スーツ内の空気が調整できるようになっている。  深くなるとスーツ内の空気と体が圧縮されてしまうからだ。  ドライスーツの胸の部分にあるボタンをプシュップシュッと押して、スーツ内に空気を送り込んだ。

すると体が沈むのが止まった。 ダイブコンピューターを見ると、水深15m、残圧120bar。  初めは200barもあったのに、たいして潜っていないにもかかわらず色々なトラブルですでに80barも消費していた。

ふぅ・・・と一息ついた瞬間、 プシューーーーーーーーーッ! 大きな音がして、私の視界がなくなった。

scott-3

=== 続く ===

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