民族のソウル・フード探訪 =039=

◇◆ 世界魂食紀行 ソウルフード巡礼の旅   ◇◆

【“NATIONA GEOGRAPHIC/日本語版(文=中川明紀・編集者)”に追記補講】

★ 辛すぎるほど飯がすすむ!! ブータン料理 =3/3= ★

ブータン料理ー7

 「私は学校が遠かったので8歳のときから寮で生活していました。 ブータンの子どもは寮に入る子が多くて、実家に帰るのは夏と冬の休みだけ。 寮の食事はあまり美味しくないので、母の料理が恋しくてたまらなかった。 それを知っている母は、私が休みになって家に帰ると『好きなものをたくさん食べなさい』と言って、必ずエマ・ダツィを作ってくれたものです」

「だから、休みに入ると太っちゃうんです」と、小さい頃の思い出を語ってくれたレキさん。 「両親は農業を営んでいたから、母が台所に立つと私は畑から唐辛子を採ってきて料理を手伝いました。 姉や祖母、ときには父も一緒になってみんなで食事を作る。 でもそれは話がしたいからなんです。 学校や友だちのことをワイワイ話したくて、みんな台所に入っちゃう」

レキさんの家では牛も飼っていて、父親が搾った牛乳でチーズを作るのも子どもの役割だったという。 ブータンの子どもたちは手伝いをしながら、親との限られた時間を大事に過ごしているのだろう。 「日本でも料理はするけれど、やっぱり実家のフレッシュな唐辛子とチーズで作ったエマ・ダツィにかなうものはありません」とレキさん。

 しかし、なぜ中南米原産の唐辛子がここまでブータン人の生活に入り込んでいるのか。 レキさんは「辛いのはもちろんだけど、ブータン人は唐辛子そのものが好き」だと言った。 唐辛子は15世紀末にコロンブスが香辛料として新大陸からヨーロッパに持ち帰り、商人によってアジアやアフリカを中心に広まっていったものだ。

いっぽう、ブータンは国のほとんどを山と谷が占め、農地は約15%(FAO調べ)しかない。 実際、日本人で農業の専門家だった故・西岡京治氏が1964年にブータンで農業指導を始めるまで、食糧自給率は60%程度しかなく、栽培する野菜の種類もかなり少なかったという。 つまり伝来当時、野菜が少なかったブータンにおいて、高地で痩せた土地でも比較的栽培が容易である唐辛子は、瑞々しい野菜としてブータン人の心を掴んだのではないだろうか。

それから唐辛子に含まれる成分、カプサイシンの食欲増進効果もあるかもしれない。 辛いとわかっているのに、汗をかいているのにエマ・ダツィを食べる箸が止まらないのだ。 ただ、刺激のせいで少々胃が重くなってきた。 それをレキさんに言うと、「私たちも同じですよ。 あまり食べ過ぎると胃を傷つけるみたいで、両親やお医者さんに食べるのを止められたりします。 でも、食べちゃうんですけどね(笑)」

ブータンの料理は確かに辛い。 でも、「世界一辛い」ではなくて「唐辛子を愛する心は世界一」と言ったほうが正しいのではないだろうか。 外はまだ雨が降っていて寒かったが、エマ・ダツィのおかげで身体は温かかった。 翌日のトイレをちょっと心配しつつも、軽い足取りで帰路についたのだった。

ブータン料理ー8

ブータンの文化とスポーツ : 街中のいたるところに、中にが収められた円柱状の大小様々な「マニ車」が存在しており、1回転させればその経を読んだのと同じ功徳があるとされている。

ブータンの有名な祭りとしてグル・リンポチェの奇蹟がブータン暦の各月10日に起きたことにちなんだ「ツェチュ」と呼ばれる祭がある。 ツェチュは各地の寺院、僧院、ゾンなどで年に1度開催されるが、行われる月はまちまちであるため、1年を通じて国内のどこかで見る事が出来る。 特に春の「パロ・ツェチュ」、秋の「ティンプー・ツェチュ」は有名で、国内外から観光客が殺到する。

ツェチュでは「チャム」と呼ばれる宗教的な仮面舞踏が披露される。 この舞踏はグル・リンポチェの生涯を描いたもので、ブータンではツェチュに参加しチャムを見ることで功徳を積み、恩恵を受けて罪を洗い流す事がよいとされている。 舞踊の他には地域ごとの特色豊かな舞踊や、道化による寸劇(アチャラ)などの余興が行われるほか、「トンドル」と呼ばれる巨大な仏画が開帳されることもある。 トンドルはアップリケ状の巨大なもので、目にするだけで涅槃に成仏できると信じられている。

ブータン弓術は、正式名をダツェ(mda’ rtsed)と称し、国技として人気の高い競技である。 弓はジュ(gzhu)、矢はダ(mda’)と呼ぶ。 競技は数名を1組として、2組の対抗戦として、100mほど離れた的を狙う形式で行われる。矢が的に命中すると、祝いの歌と踊りをひとしきり行うなど、時間を気にせずにゆったりと進めるため、正式な試合は数日を要することもある。

弓は伝統的なものは2本の竹の棒を繋ぎ合わせて、両端に弦を張った状態でまっすぐになるように作られている。 現在は洋弓が普及している。

ほかにブータン独自の体技がブータン相撲として知られている。  2008年の国王戴冠式の記念式典で披露され、日本のテレビ番組でも紹介された。

ブータン料理ー9

 === 続く ===

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