民族のソウル・フード探訪 =056=

◇◆ 世界魂食紀行 ソウルフード巡礼の旅   ◇◆

【“NATIONA GEOGRAPHIC/日本語版(文=中川明紀・編集者)”に追記補講】

★ ボルシチ上手は良妻の証!! =2/3= ★

​​​​​​ ​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​ロシア料理ー1

 「日本ではビーツが手にはいらなくて、なかなかつくれないんです。ビーツがないとボルシチは成り立ちませんからね」。 ビーツとはカブに似た赤い色の野菜。地中海沿岸が原産地とされ、ロシアではサラダに入れたりと、いろいろな料理に使われるそうだが、日本ではあまりつくられておらず、高級スーパーや百貨店などで主に扱われている。

私も行列に並んでボルシチを食べてみた。  「ボルシチの色はビーツの色です」というタチヤーナさんの言葉どおり、鮮やかな赤い色のスープの中に肉やジャガイモやニンジン、玉ネギがゴロゴロと入っている。  これにサワークリームと香草のディルをかけて食べるのだという(この日はサワークリームの代わりにヨーグルトがかけられていた)。

「シチューみたいな感じかな?」と思いながら、まずはスープを一口。思ったよりサラサラとしているがほんのりと甘く、肉と野菜のうま味がよく出ていてコクもある。  ヨーグルトの酸味が効いていて重さも感じず、ぐいぐい飲めてしまうほどだ。肉や野菜も溶けるほどによく煮込まれている。

「これは温まるなあ」としみじみ言うと、「ビーツは栄養が豊富なんですよ。肉や野菜もたくさん入っているから健康的にも優れた料理なんです。  ロシアでは具をすりつぶして、赤ちゃんの離乳食にもします。  一年中食べますが、冬は毎週のように食べていますね」とタチヤーナさん。  ビーツは糖分やミネラル、ビタミンを多く含み、美容にもいいと言われているそうだ。

料理の先生ということでつくり方も教わった。  「まず、牛肉と牛骨、豚肉をやわらかくなるまで煮てブイヨンをつくります。そこに別に炒めておいたニンジン、玉ネギ、トマトを入れ、キャベツ、ジャガイモ、そしてビーツとニンニクを入れてさらに1時間くらい煮込む。  最後に味を調えてディルをまぶして完成です。少し蒸らしたほうが、味がなじんでいいですよ」

ボルシチが不味いと嫁にいけない!?

でも、とタチヤーナさんが続ける。  「家庭料理なので家によって味は違います。ロシアには料理教室がないんです。  料理は母親から教わるもの。  母の味を基本にして、ほかの人のレシピを取り入れていきます。  たとえば、友だちの料理が美味しかったら『レシピを教えて』ってノートに書いてもらって、それをもとに工夫してみる。  そうやって自分の味をつくりあげていくんです」

そのノートは女性の宝物で、タチヤーナさんも10冊くらい持っているという。  「いまはインターネットでレシピを検索できるけれど、やっぱりノートを見て確認しますね。  そのなかでも一番大切なのがボルシチ。  ロシアでは美味しいボルシチがつくれないとお嫁にいけないと言われているんですよ」

ボルシチって結婚を左右するほど大切な料理なのか! それならば男性にも聞いてみよう。  答えてくれたのはロシア北西部、サンクトペテルブルク出身のクリコフ・マキシムさんだ。  「そうそう、ロシアでは美味しいボルシチがつくれると良い奥さんだと言われています。  こんなブラックジョークを言ったりもしますよ。  『彼女とどうして別れたの?』、『ボルシチが美味しくなかったからさ』って(笑)」

肉を食べないクリコフさんは野菜だけのボルシチをつくるそうだ。  「日本ではあまり食べられませんが、先日、長野にいるロシア人の友人にビーツを分けてもらったのでつくりましたよ。  友人は自宅にある小さな畑でビーツをつくっているんです」。

ロシアでは自分で野菜を育てるのが一般的らしい。  国民の3人に1人が「ダーチャ」と呼ばれる菜園付の別荘を持っていて、夏になるとダーチャでビーツなどの野菜づくりに精を出すのだそうだ。  プーチン大統領もソチでつくっているのだろうか。

ロシア料理ー2

※ ロシア料理の歴史

16世紀から18世紀にわたるロシアの領土拡張による影響力と支配力の拡大は、より洗練された料理と調理技術をロシアへもたらした。 燻製の肉や魚、ペーストリー料理、サラダや緑色野菜、チョコレート、アイスクリーム、ワインそして蒸留酒が外国から輸入されたのはこの時代を通じてだった。

少なくとも都市貴族や地方の紳士階級にとってこうした状況は、伝統的なロシア料理とこれら新しい食材との創造的な統合へ向けた扉を開いた。 結果として、極めて多様な調理技術や料理とそれらの組み合わせが生み出された。

エカチェリーナ2世の時代から有力者のほとんどは、美味で珍奇かつ独創的な料理を食卓へ給するため、海外の食材やカレームらフランス、オーストリア、ドイツ出身の料理人を家庭へと招き入れた。

こうした傾向がもっとも顕著なのは、フランス料理に影響を受けたロシアの料理人により開発された刺激的で優美、そして高度に繊細、且つデカダン的なレパートリーにおいてである。

このように、伝統的なロシア料理とみなされているものの中には、18世紀から19世紀におけるフランス系ロシア料理に由来するものが多い。 たとえばビーフストロガノフコトレータ(チキンキエフ)などもそうした料理である。

なお、当時のフランス料理は多くの種類の料理を一度に供するスタイルだったのに比べ、ロシアでは寒冷地であったため、料理が冷めないよう順次に皿を供するスタイルが発達した。 これがフランスに逆輸入され、現在のコース料理の形式が成立したとされる。

ロシア料理ー3

 === 続く ===

前節へ移行 ; https://thubokou.wordpress.com/2017/05/01/

後節へ移動 ; https://thubokou.wordpress.com/2017/05/03/

 ※ 下線色違いの文字をクリックにて詳細説明が表示されます ⇒ ウィキペディア=に移行
*当該地図・地形図を参照下さい

—— 姉妹ブログ 一度、訪ねてください——–

【疑心暗鬼;民族紀行】 http://bogoda.jugem.jp/

【浪漫孤鴻;時事心象】 http://plaza.rakuten.co.jp/bogoda5445/

【閑仁耕筆;探検譜講】 http://blog.goo.ne.jp/bothukemon