民族のソウル・フード探訪 =058=

◇◆ 世界魂食紀行 ソウルフード巡礼の旅   ◇◆

【“NATIONA GEOGRAPHIC/日本語版(文=中川明紀・編集者)”に追記補講】

★ 食べ方が難しい!! チュニジア伝統食 =1/3= ★

​​​​​​ ​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​チニジア料理ー1

 日本列島が記録的な大雪に見舞われる中、北アフリカの一国で春の訪れを感じさせる出来事が起こっていた。  1月26日にチュニジアで民主化に向けた新憲法が承認されたというのだ。 2011年初頭から中東・北アフリカの国々で本格化した民主化運動「アラブの春」は、その多くが難航している。 しかし、基本的人権の尊重、表現や信教の自由、男女平等を謳ったチュニジアの新憲法は、民主化成功への道を指し示すものとなった。

そもそもアラブの春も、チュニジアの失業中の青年が路上販売の取り締まりに抗議して焼身自殺を図った事件がきっかけだ。 その直後に国内各地で大規模なデモが起こり、独裁政権が崩壊した。 19世紀中頃に西欧化を図り、フランスの支配を受けていた時期もあるからか、チュニジアはアラブ世界の中では女性の地位が高い。  EU諸国との貿易もさかんで比較的リベラルな社会であることが、他国に先駆けて民主化が進む理由だろうか。

そんなことを考えてみるものの、私が行き着くところはやっぱり食。 自由で勢いがあるチュニジア人のソウルフード、なんだかパンチがありそうじゃないか。  そこで、チュニジア共和国大使館から在日チュニジア人の女性を紹介いただき、話を伺う機会を得た。  待ち合わせはJR総武線の大久保駅に程近いチュニジア料理レストラン「ラジュール」だ。

「チュニジアンブルー」と呼ばれる鮮やかな青い壁の店内で迎えてくれたのはラリビ・ベスマさんとハジリ・モラドさん。 ベスマさんは東京農業大学で英語を教えるほか、チュニジアの料理や踊りの教室も開いている多才な女性。 モラドさんはラジュールの店主で、ベスマさんは時々この店にチュニジア料理を食べにくるという。

「いま、ソウルフードについて話していたところです」とモラドさん。 2人の意見は違えることなく一致したという。  さっそく尋ねるとベスマさんが答えてくれた。

「ブリックです」

ブリックか。 英語で「煉瓦」だけどもちろん違うよなあ。まったく見当がつかないので、そんな間抜けなことを考えていたら見透かされたのだろう、「これからつくるので、まずは食べてみてください」と2人は料理の準備を始めた。  テーブルの上に、生卵や茹でたジャガイモ、ツナ、玉ネギ、パセリ、ケッパーなどの材料が並べられていく。 そして、最後に取り出されたのが……春巻きの皮!?

「本当はパスタに使われるデュラム小麦でつくったマルスーカという皮を使うんですが、日本ではあまり手に入らないので春巻きの皮を代用しています」とモラドさん。  傍らでベスマさんが四角い皮を広げて具材をのせていく。  最後に生卵を落としてから、半分に折って三角形にし、熱した油に投入した。 揚げること数分間、ブリックの完成だ。

「卵が半熟なうちに油から取り出すのがポイント。  食べ方も決まっているんですよ」とベスマさん。  レモンをかけて三角形の角を両手で持ち、折り目の部分から卵を吸うように食べるのだという。

チニジア料理ー2

チュニジア料理(1/2)

北アフリカにあるチュニジアは、民族的には中東(アラブ)に属し、地中海文化圏に含まれている。 チュニジア料理もまさにそれらの特徴を備えている。歴史を紐解くと、さらに興味がわき、理解の一助になるだろう。 詳しいことは専門家に任せるとして、料理に関わる大きな影響を大まかに述べてみよう。

紀元前、北アフリカに暮らすベルベル人の料理(クスクスなど)に、フェニキア人がカルタゴを建設してオリエントの文化を持込んだ。 その後のローマ人はギリシャを含めたローマ地中海文化を、アラブ人は総合的なイスラム文化を持込み、チュニジア料理を変えた。 チュニジア料理の基本形は、この頃できたと思われる。

さらに、その後、オスマントルコはペルシャ料理の影響を受けた宮廷料理を、レコンキスタでやってきたアンダルース人はイベリア半島の料理を、近年のフランス人は総合的な文化を、それぞれチュニジア料理の上に持込んだ。 なかでも重要なのは、16世紀シチリアを介したパスタの伝播と、アンダルース人が持込んだ新大陸の食材(トマト、唐辛子、ジャガイモなど)だろう。これらの食材はチュニジア料理も含め地中海料理に大変革をもたらしたものだ。

こうして歴史の与えた影響が、チュニジアに他のマグレブの国々とまったく違う独自な料理を育ませたといえる。

チニジア料理ー3

 === 続く ===

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