民族のソウル・フード探訪 =059=

◇◆ 世界魂食紀行 ソウルフード巡礼の旅   ◇◆

【“NATIONA GEOGRAPHIC/日本語版(文=中川明紀・編集者)”に追記補講】

★ 食べ方が難しい!! チュニジア伝統食 =2/3= ★

​​​​​​ ​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​チニジア料理ー1

 言われるがままパクリとくわえる。ジャガイモやツナとほどよく混ざったとろとろの卵が口の中に飛び込んでくる。 まわりの皮はパリパリと香ばしいが、具材の部分はもっちりとしていて食感の違いがおもしろい。 味付けは塩コショウだけだが、あとからかけたレモンのさっぱりとした酸味が卵やツナのこってり感を和らげている。

「これは嫌いな人はほとんどいませんね」なんて感想を述べていたら、半熟卵がとろりと皿にこぼれてしまった。 それを見たモラドさんが、「ブリックはこぼさないように食べなくてはいけません。 こぼすと行儀が悪いし、もったいないでしょう。 きれいに食べないとお嫁にいけないと言われているんですよ」と言う。 ベスマさんも笑って頷くけれど、それ、食べる前に教えてくださいね……。

しかし、万人に好かれる料理だとは思うが、いたってシンプル。 それにツナが入るあたり、ファストフードっぽいというか、歴史もあまり感じられない。 パンチ力がありそうと思ったのは私の勝手な期待に過ぎないが、少々拍子抜けした感は否めないので「ブリックはどのあたりがソウルフードなんでしょうか?」と率直に聞くと、ベスマさんが教えてくれた。

「今回つくったジャガイモとツナのブリックはもっともポピュラーなものです。 ほかに挽き肉やチーズ、エビを入れたりと好みや地方によってさまざまなんですよ。 でも、もともとは生卵と塩を皮で包んだ、とてもシンプルなものだったんです」

ブリックの皮「マルスーカ」は、11世紀にチュニジアに入ってきた遊牧民ベドウィンがもたらしたといわれている。 簡単に運搬できて調理もしやすいため、遊牧文化の中で重宝されたのだろう。 それがチュニジアやモロッコ、アルジェリアの先住民であるベルベル人たちに受け入れられ、ブリックがつくられるようになったようだ。

1000年も歴史があるものなのか……。 感心してブリックをまじまじと見る。 するとベスマさんが「このブリックとは別に『ブリックダヌニ』というものもあるんですよ」と言う。 詳しく聞けば、大きさもかたちも違うし、卵は生ではなく皮にのせる前に焼いて細かく刻み、ほかの具材と混ぜて入れるそうだ。

「見た目や大きさは揚げ餃子に近いですね」とモラドさん。 餃子に似ているとするとまったく違う料理に思えるが、マルスーカを使う点で同じカテゴリになるということか。 「本当はブリックダヌニもつくりたかったけど、仕事があったので準備をする時間がなくて」とベスマさん。 味付けにいろいろなスパイスを使うなど、下ごしらえに時間を要するそうだ。

「ブリックダヌニはお祝いのときや来客をもてなすときにつくります。 普通のブリックはお店でも食べられるけど、ダヌニは家庭でしか食べられない伝統的な料理なんです。 各家庭に代々の味があって、母親が家族のために時間をかけ、丹精込めてつくる。 だから、食べると家族のありがたみを感じるんですよ」。 ダヌニは小さくて、みんないくつも食べるから、たくさんつくらないといけないのは大変だけどね、とモラドさんは笑う。

チニジア料理ー2

チュニジア料理(2/2)

チュニジア料理は、まぎれもなく地中海料理で、その地理的な位置からイタリア半島と、また、歴史的にイベリア半島との関わりが近隣諸国より深いからだ。チュニジアは世界第4位のオリーブ生産量を誇っているが、それを反映するように料理もほとんどオリーブオイルで調理される。

それと、ハリッサ(オリーブオイル、唐辛子、クミン、キャラウェイ、コリアンダーを混ぜたもの)という調合スパイスを多用するのだが、これは、日本の味噌、醤油の使い方に似ている。ちなみにチュニジア料理にハマるかどうかは、これが好きになるがどうかにかかっているといっていいだろう。

またチュニジア人の卵好きは、ちょっと異常とも思えるほどで、これは代表的なチュニジア料理が並べられた前で、誰でもすぐに気付くほどだ。肉は羊肉が8割、残りが鶏と牛肉が使われる。宗教のため豚肉は中華料理店に稀にあるだけ。魚介類では地中海産のものをほとんど使うが、イスラム教国には珍しく、タコ、イカも食べる。

レストランではバラエティ豊かな肉料理と豊富な魚介類があることで、選ぶ楽しみが広がるだろう。中東料理に馴染みのない日本人は、エスニックというと、ひとくくりにスパイスの多さと辛さをイメージするが、気抜けするほど使われないので、辛さが苦手でも充分楽しめる。それでもさすがにハリッサそのものと、日本のピーマンにそっくりな青唐辛子は、相当辛いのでご注意を。

最後にチュニジア料理の入門編に、おすすめのメニューを挙げてみる。チュニジアに行かれた際にはぜひ、試してみるといい。これでお腹一杯になることうけあい。  ボナペティ!

〇 サラダ・チュニジアン(フレッシュサラダ)、またはサラダ・メシュー  イア(焼き野菜のサラダ)

〇 ブリック(卵の包み揚げ、ツナが主流だが、まれにエビがあり美味)、またはショルバ(大麦入りスープ、肉と魚がある)

〇 クスクス(肉、魚、野菜がある)、またはポワッソン・コンプレ(魚のグリル)、またはタジン・チュニジアン(卵、肉、野菜が入ったチュニジア風オムレツ)

〇 テ・ア・ラ・マントゥ(ミント入りの甘い茶)

チニジア料理ー3

 === 続く ===

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