睡眠の都市伝説の真意 =003=

☆彡 睡眠の都市伝説を斬る =三島和夫・睡眠研究者= 彡☆

【この企画は“Webナショジオ・連載/睡眠の都市伝説を斬る”に追記補講した】

隣の睡眠は長く見える_睡眠時間の個人差について =2/2=

睡眠研究=1​​​​​​

​ 自分の“適正睡眠時間”を知るのは思いのほか大変だ。 「8時間でも寝足りない」「5時間も寝ればすっきり」などと話している人も「その生活を1カ月続けてください」と言われればやや自信が無くなるのが普通だ。 毎日8時間寝続けられるのは一般的にはかなり若い頃だけで、「目が溶けるまで寝てやる-」とベッドの中心で叫んでいた人もしばらくすると早めに目が覚めるようになる。

逆に寝不足に強いと豪語しつつ日中に寝オチしている人もいるが、これは反則。 「いや、そんな長時間寝てないし」と弁明されても、昼寝は夜間の睡眠に大きく影響するため、単純な足し算以上の眠気防止効果がある。実はナポレオンは午睡が得意であったともいわれている。

我々が経験的に自覚している“適正睡眠時間”は大きく以下の3つの要因で決まる。 第1は体質で決定されている必要睡眠量、第2は睡眠ニーズに関わる生活習慣、そして第3は睡眠不足に耐える力、である。 これに季節変動や加齢の影響が加わり、その時、その人にとっての適正睡眠時間が決まる。

第1の要因、必要睡眠量を調べるのはとても手間がかかる。 特殊な施設内でしばらく生活してもらい、運動や食事、午睡などさまざまな環境条件を整えて睡眠時間を毎晩脳波で測定するのだ。 いずれ詳しく紹介する機会があると思うが、最近我々が行った研究の結果、実は一般人の必要睡眠時間にはせいぜい2時間程度の個人差しかないことが明らかになった。 我々の睡眠時間は思いのほか公平にセッティングされているらしい。 では実生活でみられる6時間以上の個人差はどのように生まれてくるのであろうか。

そこで第2の要因、生活習慣が重要になる。ライフスタイルによる睡眠ニーズを考えることなしに睡眠時間の長短は語れない。 アスリートが現役を引退するといきなり睡眠時間が短くなるという。 ごく普通のサラリーマンでさえ退職して家でゴロゴロするようになると、眠りが浅く短くなることが少なくない。 消費エネルギー量と睡眠時間との間に関連があるからだ。 睡眠の最大の役割は休養である。 必要な時に必要な人にやってくるのだ。

実生活で睡眠時間の長短が生じる第3の要因は眠気に打ち勝つ力に大きな個人差があることだ。 例えば、メカニズムは未だ不明だが、夜型の人は睡眠不足に強いことが分かっている。 夜更かしでも朝の出勤・登校時間は変わらないので夜型の人は概して睡眠不足だ。 その分、翌日には早寝をしても良さそうなものだが、昼に感じていた眠気は夜になると消えてしまい、むしろ目が冴えてきて深夜にガサゴソ活動を開始するのだ。

睡眠不足に強い夜型を放っておいて自然に早寝になることはない。 一方で朝型の人にも弱みがある。 睡眠リズムは規則正しいものの睡眠不足には弱く、夜勤は苦手とされている。 ちなみに、メディア関係者で「朝型です!」と力強く答えた人に私は2、3名しか出会ったことはない。 圧倒的多数は「夜行性」という印象。 夜型にクリエイティブな人が多いのか、単なる生き残り効果か、これもまた理由は不明である。

睡眠時間の個人差に関わる要因はさまざまあるが、上記の3点は特に影響が大きい。 実生活での快眠スキルに役立つ情報も多く含まれているので、もう少し詳しく解説してみたい。 そこで次回は、第1の要因、体質で決定されている必要睡眠量を取り上げる。

睡眠研究=2

あなたの睡眠時間は何時間ですか?十分足りていますか?昼間ぼーっとしたり、眠くなることはありませんか?

私の家族、友人、知人に同じ質問をしても、「ぐっすり眠っている。」 と答える人はめったにいません。 ほとんどの人は「いやぁ、睡眠時間が短くて慢性的な寝不足だ。」 「布団に入ってもなかなか寝付けなくて・・・」 こんな答えです。

つまり、寝たくても仕事や私生活の都合で睡眠時間を削っている人、あるいは自分の意志に反して眠れない人が多いのです。 どちらにしても睡眠時間が足りないと感じている人たちです。 私の場合は、だいたい夜は12時くらいにベッドに入ります。それから少し本を読んだり、音楽を聴いたりして寝るのは12時半くらいです。 朝は結構目覚めが早くて6時から7時の間です。従って睡眠時間は5時間半から6時間半くらいです。

厚生労働省が行っている国民健康・栄養調査報告によると、平成22年(2010年)の日本人の平均睡眠時間は7時間14分だそうです。 それからすると私の睡眠時間はかなり短いです。 ただ、年齢によって睡眠時間の分布も変わっており、私と同じ50代男性で見ると平均睡眠時間は6時間58分だそうです。 多少は私の睡眠時間に近くなります。

私は今の睡眠時間で日中眠くなることも頭がぼーっとすることありません。 睡眠時間は十分足りていると思っています。 でも、もしかしたら「睡眠の効果」という点ではもっと寝て7時間くらいにした方がより健康になれるのかも知れません。

あなたの睡眠時間はいかがですか? 上の図(左図)に性別、年齢別の睡眠時間分布を示してあります。 これも平成22年の国民健康・栄養調査の結果をグラフにしたものです。 あなたの睡眠時間は同性代の人たちに比べてどうですか?

睡眠研究=3

 === 続く ===

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