睡眠の都市伝説の真意 =014=

☆彡 睡眠の都市伝説を斬る =三島和夫・睡眠研究者= 彡☆

【この企画は“Webナショジオ・連載/睡眠の都市伝説を斬る”に追記補講した】

お風呂で快眠できるワケ =2/2=

​​ ​​​​睡眠研究=1

 私たちがある老健施設に入所中の高齢者にご協力いただき、就寝2時間前に40℃、15分の半身浴が眠りと脳温に与える影響を調べる研究を行ったことがある(図2)。 入浴後30分以内に脳温は0.8℃ほど上昇し、消灯までに1℃ほど低下した。 大したことないって? いえいえ、脳にとってこれは富士急ハイランドの「高飛車」なみの急降下である。 なにせ1日かけて下る山道を30分で滑り落ちたのである。 実際、その落差が大きいほど寝つきが改善することも明らかになった。 ちなみに41~42℃、30分以上の入浴で脳温を2℃近く上げるような研究も行われているが、心臓への負担を考えるとお薦めできない。

このような説明をすると「理屈は分かるがなんか解せぬ」と感じられる方々も多いようだ。 睡眠は脳温を下げる手段ではないのか、わざわざ入浴で加熱するなど鞭打って脳は休まるのか、と。ここで逆転の発想が必要である。 主役は冷えた脳ではない、冷却ファンの睡眠なのだ。脳がクールダウンしてしまっては睡眠の出番はない、脳がホットになるほど、いや炎上すればするほど睡眠の出番が増えるのである。 鎮火よりも消火作業が花形なのであるから、まさにマッチポンプである。 こうなるとタイトルは「眠りは脳の町火消し」の方がしっくりくるが、目を閉じるのに「め組」ではちと合わないので止めておこう。

関心のある方のためにもう少しだけ神経メカニズムについて解説すると、脳の視床下部前部にある睡眠中枢の近傍に温・冷感受性ニューロンがあり、その時刻にとって適切な脳温が維持されているかモニターしている。 入浴など人為的操作で脳温が不自然に高まると温感受性ニューロンは睡眠中枢を活性化させるのと同時に、手足の末梢血管を拡張させる。 皮膚表面近くに集まった血液は汗が蒸発する気化熱で効率よく冷やされ再び体の深部へと戻されるのだ。 入浴は脳の冷却のため睡眠と放熱スイッチを同時に入れる実にスマートな仕掛けなのである。

ちなみに、睡眠薬の中には脳温の低下作用を有するものが少なくない。 そのような睡眠薬を服用すると脳の冷却が薬理学的に達成されてしまうため深い睡眠がむしろ減ってしまうことがある。 この現象を睡眠薬による不自然な眠りと表現する研究者もいるが私はそうは思わない。 主役が交代しただけの話である。実際、深い睡眠が減っても睡眠感は改善する。 逆に手足からの放熱を阻害するために深い睡眠が増加する薬物もある。 その薬物を使用すると高齢者でも若者並みの深い睡眠が得られるようになったが、起床時に睡眠感を聞いてみると「あまり良くない」と答えたそうなので、実に快眠とは難しいものである。

体温の上昇作用を有する運動やカプサイシンなども入浴と同様の効果があるとされる。 特に運動については数多くの研究があり、入浴同様に夕方過ぎの運動に快眠効果がある。 残念ながら軽運動の効果は限られており、寝つきは若干良くするようだが深い睡眠の増加は期待できない。 運動当夜の快眠を狙うのであれば十分な体温上昇をもたらす高強度の運動が必要である。 ただし激しい運動は交感神経を刺激しすぎてむしろ眠りを妨げることもあるので注意が必要である。 クールダウンに要する時間(汗が引いて涼むまでの時間)にも個人差がある。自分に合った入浴や運動の時刻を見つけていただきたい。

中高年の方には、心血管に負担とならない程度の有酸素運動を地道に続けて筋肉量を増やし、基礎代謝を高めることをお薦めしたい。 ただしこのような運動習慣によって快眠効果を得るには3~6カ月以上かかるのが一般的である。 道は遠いが一旦達成すると安定した睡眠が得られるので、地道にチャレンジする価値がある。 ヒロトさんも最近趣味のカメラを手にして撮影を兼ねた夜散歩を始めた。 快眠習慣を薦める側としては嬉しい限りだが、職務質問など受けないものか心配している。

睡眠研究=2

=資料・文献=

入浴方法にもひと工夫

「入浴で快適な睡眠を!」の1~2回目バスタイムでもお伝えしている通り、よい睡眠のためには「入浴」が欠かせません。ポイントは、入眠したい時間の約2時間前に入浴すること。

ストレスなどで眠れない日が続くときは、ぬるめのお湯に20~30分ほどゆっくり入ってリラックス。また朝目を覚ました後、もっとすっきりしたいときは、熱めのお湯に3~5分入って交感神経を刺激。このふたつの入浴方法と、効果的な入浴時間帯を覚えておきましょう。

冬場は寒さで手足が冷え眠れないことも。良質の睡眠をとる為にも、シャワーではなく、入浴で体温を上げることが大切です。

また、時間軸で1日の生活を記録すると、あなたの生活リズムがより明確になります。起床時間、食事時間、ウトウトした時間帯、昼寝、入浴時間、布団に入った時間、睡眠時間などを数週間分記録すると、よりよい睡眠のための改善点が見えてくるかもしれませんよ。

よい睡眠は、美と健康のカギ!睡眠と入浴を軸に、生活リズムを改善し、より快適な生活を送りましょう。

睡眠研究=3

 === 続く ===

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