民族のソウル・フード探訪 =119=

◇◆ 世界魂食紀行 ソウルフード巡礼の旅   ◇◆

【“NATIONA GEOGRAPHIC/日本語版(文=中川明紀・編集者)”に追記補講】

★  つぶすほどに美味しい イラン伝統料理 = 2/3= ★

​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​郷土料理ー1

​​​​​​「アーブグーシュトは休日に食べることが多いですね。 イランでは、休日は家族・親戚や友人と大勢で食卓を囲みます。 よく言われている言葉に『アーブグーシュトなら急な来客でも水をもう一杯入れればいい』というのがあります。 水を足せば量が増えるので、人が増えてももてなすことができるという意味です」

その言葉をいまいち理解できなかったが、疑問を挟む間もなく、エマミエさんは饒舌に話を続ける。 「もともとは労働者が好んで食べる料理でした。 首都テヘランの南部にある労働者が集まる地域にはアーブグーシュトを出す古いカフェがいくつもあって、今でも昼は労働者であふれています」

そうした古い店のアーブグーシュトは、小さな素焼きの壺で出されることが多いという。 「アーブグーシュトは別名でディーズィーとも呼ばれます。 ディーズィーとはその素焼きの壺のこと。昔は一人分の材料を壺に入れて煮込んでいたんです。 今は大きな鍋でつくることが多いですが、最近そのスタイルに着目したディーズィーのファストフード店が若者に人気。 デリバリーもあるんですよ」

煮込んで40分を経過したところで、ナスリンさんが半分に切ったジャガイモを鍋に入れ、塩とコショウで味を調えた。火が通りにくいジャガイモをそんなに後に入れるのは少々不思議だ。 「これが基本的なつくり方です。でも、今日は最後に火を通したナスを添えます」とナスリンさん。 ナスを添えるのは、エマミエさんの故郷であるイラン南西部のフーゼスターン州の食べ方だそうだ。

「私は古都イスファハンの出身です。 結婚したときは料理が苦手だったんですけど、主人の母にいろいろ教わりました」。いまやエマミエさんも自慢する腕前のナスリンさんは、春頃に東京・中央区にレストランを開く予定だそうだ。

「そろそろいいようですね」とエマミエさん。 鍋のフタをあけると、風味豊かな香りが広がる。 そこへナスリンさんがザルを手に、アーブグーシュトのスープと具を分け始めた。スペインのソウルフード「コシード・マドリレーニョ」がやはりスープと具を分けて食べるものだったが(前記18回参照)、同じスタイルなのだろうか。

しかし、続いてナスリンさんが手にしたのはフードミキサー。なんと、それで具をつぶし始めたのだ。 肉や豆、ジャガイモが跡形もなくペースト状にされていく……。 「こうすることで素材が絡み合って味の深みが増すんです」とエマミエさん。本来は槌のような専用の道具でつぶすらしい。 そうか、ジャガイモを後から入れたのは、煮込みすぎてスープに溶けてしまうのを防ぐためなのだろう。

郷土料理ー2

イランの伝統料理・その特色②

日本、欧米で流通するイラン料理を紹介した料理書の多くは、日常の食生活からかい離した豪華な料理が主であり、それらの国ではイラン料理に「贅を尽くした華美な料理」という印象が構築された。 また、「国民食」といえるイラン国民共通の料理の数は限られているため、ペルシャ語によるイラン料理の本の多くにはフランス料理を意識したと思われる西欧料理、イラン料理と西欧料理の混合料理がページ数を埋めるために掲載されている。

イランの人間は料理に対する工夫に無頓着だと言われ、料理人の間で入手しうる食材の質の低下などの食事情の変化に対応した新たな料理法が考案される兆しは見られていない。 イラン国内のレストランで供される料理の味付けは塩気と油分が強く、出される料理のほとんどが羊肉の料理で占められている。

イラン文化の研究者だけでなく、アラブ世界の研究者からもしばしばイランにおける外食料理の質の低さが指摘される。 イラン人から自国の外食料理とサービスの質に疑問が投げかけられないことが不思議に思われているが、イラン人は料理ではなく「外食をする行為」に価値を見出しているためだとする解釈がある。

一方、家庭料理では豊富な種類の料理が供され、季節ごとに旬の食材が使われる。 イランには「最高のシェフは家庭にあり」という言葉があり、主婦たちは各家庭に伝わるレシピを元にして家族や来客たちのために様々な料理を作る。 スーペ・ジョウ(大麦のスープ)の味一つをとっても自家製のものとレストランのものでは大きな違いがあり、時間をかけて出汁をとった美味なスープは家庭料理ならではの一品である。 レストランとは逆に、家庭料理ではメインディッシュの後に生野菜のサラダが出され、それぞれの家庭には工夫を凝らした独自のドレッシングのレシピが存在する。

外食、家庭料理のいずれでも大量の料理が出される点にイラン料理の特徴があり、メフマーンナヴァーズィー(客人のもてなし)の精神に則って大皿に山盛りの料理や果物が乗せられて供される。 パーティーでは料理書のように豪華な料理が出され、貧しい人間も賓客をもてなすために極力豪華な料理を出そうとするが、日常食べる料理はコストパフォーマンスを勘案して費用を抑えたものになっている。

郷土料理ー3

 === 続く ===

前節へ移行 ; https://thubokou.wordpress.com/2017/07/03/

後節へ移動 ; https://thubokou.wordpress.com/2017/07/05/

 ※ 下線色違いの文字をクリックにて詳細説明が表示されます ⇒ ウィキペディア=に移行
*当該地図・地形図を参照下さい

—— 姉妹ブログ 一度、訪ねてください——–

【疑心暗鬼;民族紀行】 http://bogoda.jugem.jp/

【浪漫孤鴻;時事心象】 http://plaza.rakuten.co.jp/bogoda5445/

【閑仁耕筆;探検譜講】 http://blog.goo.ne.jp/bothukemon

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中