民族のソウル・フード探訪 =127=

◇◆ 世界魂食紀行 ソウルフード巡礼の旅   ◇◆

【“NATIONA GEOGRAPHIC/日本語版(文=中川明紀・編集者)”に追記補講】

 ★ 親子をつなぐカンボジア版お好み焼き = 2/2= ★

郷土料理ー1

「酒のつまみにぴったり」と言ったら、「このパテはノムパン・パッテェイに入れるんですよ」とセレイさん。 同じフランス領だったベトナムでもよく食べられている、フランスパンのサンドイッチだ。セレイさんはパンに切り込みを入れてバターをたっぷり塗り、パテ、キュウリ、挽き肉、ニンジン・大根の和え物と、次々に具材を入れていく。 味付けはカンボジアの魚醤、タァック・トレイと特製の出汁だそうだ。

「バンチャエウができるまで、先にこちらをどうぞ」と1つ渡してくれた。 パテとバターのふくよかな味と、日本のナマスのように酢がきいた和え物のさっぱり感が絶妙なバランス。 肉のうま味がたっぷりなのにしつこくないので、いくつでも食べられそうだ。 これからの季節、ピクニックに持って行きたくなる。

「いま、カンボジアにはノムパン・パッテェイの専門店がたくさんあるんですよ。 味付けや種類はさまざまですが、広い駐車場に店がぽつんとあって、車を停めると売り子さんが売りにくるんです。 みんな、10個、20個とたくさん買う。 田舎に帰る時には欠かせませんね」と、カンナさん。 わかるなあ、ドライブにもぴったりだもの。

郷土料理ー2

 もりもり食べているうちにセレイさんがバンチャエウを焼き出した。 娘さんたちも手伝う。 そこであることに気づいた。 カンボジア語で話すセレイさんに対し、2人の娘さんは日本語で答えているのだ。

「セレイさんは18歳の時に、すでに日本に来ていた家族の呼び寄せによって来日しました。 だから簡単な日本語は話せるけど、込み入った会話はできません。 いっぽう、娘さんたちは日本生まれ。 普通の学校に通うから日本語は問題ないですが、逆にカンボジア語が話せないんです。 お互いに言っていることは理解できるから日常の会話は成り立つ。 でも、難しい話になると伝わらないこともでてきます」とカンナさんが教えてくれた。

カンナさんの5歳の息子さんもカンボジア語が話せないという。 「だから在日カンボジアコミュニティでは、定期的に子どもたちにカンボジア語を教えているんです。 家族のためでもあるし、自分のルーツである国の文化を知ってもらうためでもあります」と伊藤さんは言う。

バンチャエウが食卓に載った。 黄色い生地が具を包み込んでいて、見た目はオムレツのようだ。 タァック・トレイを使った手づくりソースをかけて口に入れる。 見た目以上に生地がもっちもち。 挽き肉やモヤシとちょっと酸っぱいソースがよく絡み、最後にココナッツの甘い風味がほんわりと残る。なんともやさしい味わいだ。

「もちもちしていて食べ応えがありますね」と言うと、「フランスの食文化の影響を受けているものの、カンボジアでは小麦粉よりも米粉が主流なんですよ」とカンナさん。 米粉の細い麺、ノム・ バンチョクもよく食べるが、日本ではよく似ている素麺を代用していると言う。

郷土料理ー3

「いまは買うことが多いようですが、昔は自分たちで麺をつくっていました。 こねた生地を小さな穴をたくさん開けた空き缶に入れて、ぐぐーっと押し出す。 どこの村にも共同の生地をつく機械がありましたね。 テコの原理で足を使って踏んでつくもので、子どもも手伝うんですけど、体重が軽いから3~4人がかりで……。楽しかったなあ」

カンナさんが日本に来たのは1980年、9歳の時。 1975年に内戦が終わったカンボジアでは、ポル・ポト政権によって極端な共産主義政策が断行された。 従来の社会制度や教育が一切否定され、知識階層を中心に大量虐殺が行われて、再び内戦に突入する。 絶望した国民の多くは命の危険を冒しながらも国境を越え、タイの難民キャンプなどに身を寄せた。その渦中の1979年、日本政府はインドシナ難民の定住受入れを開始し、大和センターなどを設立したのである。

カンナさんも両親を亡くし、親戚と一緒に日本にきたそうだ。 自宅には母親の写真が飾ってあった。 「おじさんがカメラマンだったので奇跡的に持ってくることができました。 お母さんに似ているってよく言われるんですよ」。 柔和な表情のお母さんの写真は、確かにカンナさんに似ていた。

カンボジアフェスティバルはスポンサー集めから出店の管理、本国からの芸能人の招聘まで、運営の基本は在日カンボジアコミュニティが行っている。 初めての大きな行事に手探りなことも多いが、みんなに共通するのはカンボジアを知ってほしいという思い。 ふと見ると料理を食べながら仲良く談笑するセレイさん親子がいた。 バンチャエウが言語の違う親子をつなぐ。 「子どもたちが好きな料理だから」という言葉が心に響いた。

郷土料理ー4

動画: カンボジア料理 ②

 === 続く ===

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