◇◆ 世界魂食紀行 ソウルフード巡礼の旅 ◇◆
【“NATIONA GEOGRAPHIC/日本語版(文=中川明紀・編集者)”に追記補講】
★ ハンガリーの国宝豚でつくるラード料理 = 3/3= ★
「テペルトゥもラードも新鮮さが大事だから、と畜したばかりの豚でないとつくれないんです。 都会の人たちは店で買ったものを食べるけど、田舎ではいまも自分たちでつくります。手づくりのほうがずっと美味しいですからね。 でも、毎日豚を解体するわけにはいかないから、ポピュラーだけど、特別な食べ物でもあるんですよ」
アティラさんが言う。 ハンガリーでは、豚は肉や脂身だけでなく、内臓や血、皮、爪、鼻と、骨以外のすべてを食す。 豚を解体するときは知人や近所の人たちに手伝ってもらって、お礼に解体した豚をふるまう。 そして別の家でと畜するとなったら、今度は手伝いにいく。 そうやってみんなで無駄なく分け合う姿には昔ながらの助け合いの精神があり、神様への感謝の念があるのだという。
「私は北東部のミシュコルツという大きな都市出身なので店で買っていたけど、郊外に住むおばあちゃんの家では手づくり。遊びに行ってラードパンや豚の燻製ソーセージを食べるのが楽しみだったなあ」
アティラさんの話を聞いてモンゴルで見た羊のと畜を思い出した。 モンゴル人は羊を最もよく食べるが、羊はあお向けにされて空を見上げたかたちでほふられる。 そして一滴の血も大地に流さないようにお腹を切り開いて解体し、肉や血を食べ、皮は衣類にして余すことなく利用する。 そこにあるのは厳しい自然とともに生きる遊牧民たちの、万物を恵む天と地への感謝の念なのだそうだ。
ハンガリー人は、ウラル山脈を故郷とする遊牧民族マジャール人が多数を占める。9世紀末にハンガリーに定住してからは農耕を中心とした生活になったが、脂身から出た油をも大事に食べる姿には、遊牧民のDNAが表れているのではないかと思う。
ただ、最近は肥満など健康面への意識が高まり、ラードの摂取を控えてひまわりの油などを使う若者が増えているらしい。豚肉の消費量も1980年には一人当たり年間70キロで世界1位だったのが、近年は30キロ程度にまで減っているようだ。さらに、2011年9月には塩分や糖分の高い食品、清涼飲料水に課税する通称「ポテトチップス税」まで施行されている。
「でもやっぱりみんなラードが好きで、つい食べちゃうんですよね」
アティラさんの言葉に、また自分のお腹周りに目を落とす。 そうなんです、わかっていても止められない。まあ、明日からダイエットすればいいやと残りのラードパンをほおばるのであった。
ハンガリー料理の調味料: ハンガリーの食べ物はパブリカや唐辛子の使用により、辛いものが多く、ハンガリー料理がヨーロッパ生まれの料理で最も辛いともいわれる。唐辛子の他に、甘口の(辛くない)パプリカもまた日常的に使われる。 唐辛子、ラード、および紫タマネギの組み合わせ、およびテイフル (tejföl) と呼ばれる濃いサワークリームの使用はハンガリー料理で一般的である。
タマネギは生のまま、あるいは煮たり炒めてキャラメル化してから用いる。 様々な種類のパプリカとタマネギの他に、一般的な風味付けにはニンニク、パセリ、挽いた白または黒コショウ、粒黒コショウ、ローリエ、ディル、マジョラム、粒または粉に挽いたキャラウェイ、タイム、マスタード、タラゴン、酢、セイボリー、ラベージ、クリーピングタイム(ヨウシュイブキジャコウソウ)、チャービル、レモンの果汁および果皮 、アーモンド、バニラ、ケシの実およびシナモンが使われる。
この他にワイン、コリアンダー、ローズマリー、ジュニパーベリー、アニス、バジル、オレガノ、オールスパイス、ホースラディッシュ、クローブ、メース、およびナツメグが使用される。
=== 続く ===
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