民族のソウル・フード探訪 =147=

◇◆ 世界魂食紀行 ソウルフード巡礼の旅   ◇◆

【“NATIONA GEOGRAPHIC/日本語版(文=中川明紀・編集者)”に追記補講】

  ★ 下町で味わう 東欧の秘境モルドバ料理 =2/2= ★

​ ​​郷土料理ー1

​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​「結婚したばかりの頃、朝起きると彼女がキッチンに立っている。 朝食の準備をしてくれているのかと思って聞くと、なんと夕食の準備をしていたんです」。 びっくりしてディアナさんを見ると笑顔でうなずく。特別な日ならいざ知らず、日常的なことらしい。

「パンやペレメニ(餃子のような料理)の皮はもちろん、チーズやサワークリームも自分でつくっているんです。 モルドバでは買うこともあるけれど、日本のチーズはしょっぱくてモルドバ料理に合わない。 だから余計に時間がかかっているかもね。今日も朝食べるパンに練りこむチーズをつくっているところですが、これは32時間くらいかかるんですよ」

 パンの材料をつくるのに32時間……。 しかし、ディアナさんは楽しそうでサワークリームを味見させてくれた。 まろやかでコクがあるのに後味はさっぱり。 手づくりならではのキメの細やかさがある。 思わず、「すごいなあ」と感心すると、「私はまだまだ勉強中です」と意外な言葉がかえってきた。 「私のお母さんは30年もお店のキッチンに立っていた人で料理がすごく上手。お母さんの味にはかないません」

それなら、やっぱりお母さんに料理を教わったのか。 そう尋ねると、これまた意外にも首をふる。 「子どもの頃、手伝おうとするとお母さんは決まってこう言うんです。 いまはやらなくていいのよ、結婚したらいっぱいつくれるんだからって。 それでも美味しくつくれるようになりたいから、お母さんがつくっているところを見ながら覚えました」

そして結婚したディアナさんは旦那さんやお子さんのために料理をつくるようになった。 とはいえ、まさか店を開くとは思っていなかったそうだ。 それも日本で。ディアナさんはダンサーで、国の派遣で日本にやってきた。 そして各地で公演しているなかで、共通の友人を介して倉田さんと知り合ったという。 居酒屋を始めたのは、モルドバという国を日本人に知ってほしいと思ったからだとディアナさんは言う。

「ロシア料理の店はたくさんあるけれど、モルドバ料理はどこにもなかった。 それにモルドバはワインの国。 美味しいワインがたくさんあって日本にも入ってきているのに、日本人はフランスとモルドバだったらフランスを選ぶでしょう。 ここでモルドバワインを飲んでファンになってくれたらと思ったんです」

モルドバは欧州では特に古いワインの産地で、紀元前3000年頃にはつくられていたという。国の主要産業として栄え、英国をはじめ欧州各国の王室でも愛飲されている。 都市部を除いてモルドバ人の多くはブドウの自家農園を持っていて、自分たちでもワインをつくるそうだ。 すすめられて赤ワインを1杯いただいた。ほどよいコクで渋みが少なく、華やかな香りが鼻腔に残る。

「店を始めて1年余り。日本人の常連さんもたくさんできました。 それに在日のモルドバ人やルーマニア人、ロシア人も来てくれます」と倉田さん。 モルドバは15世紀にルーマニア系の人たちが設立した国だが、オスマン・トルコの支配下に入り、その後もロシアとルーマニアの間で領有権が争われるなど複雑な歴史をたどってきた。

料理もその影響を受けていて、ボルシチはモルドバでも食べられるし、文化も言語も近いルーマニアではママリーガはとてもポピュラーな料理だ。 店にはロシア人やウクライナ人のスタッフもいて、ロシア料理も出すという。 この居酒屋に国境はない。

「今度、在日モルドバ人みんなでモルドバパーティをするんです。 モルドバの料理を並べて、モルドバのワインで乾杯する。在日モルドバ人は数が少ないし、住んでいるところもバラバラでなかなか集まれなかったけど、この店ができたことが気楽に集まるきっかけになった気がします」

ディアナさんは笑顔で言う。 もちろん、ママリーガとトカナは欠かせないそうだ。 「モルドバ人が店にくる時は誰もが決まって注文するんです。それに大切な家族が集まった時に食べる料理ですからね」

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 === 続く ===

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