民族のソウル・フード探訪 =175=

◇◆ 世界魂食紀行 ソウルフード巡礼の旅   ◇◆

【“NATIONA GEOGRAPHIC/日本語版(文=中川明紀・編集者)”に追記補講】

 チェコの“茹でるパン”ことクネドリーキの奥深き世界  =1/3= ★

​​ ​​ ​​郷土料理ー1

「いま、チェコ料理食べてるよー」という短いLINEが今回の魂食紀行の始まり。 旧友が食事をしている時に、合流しないかと声をかけてくれたのだった。 あいにく別件が入っていて行けなかったのだが、食事会にはチェコ出身の方も来ているという。 そこで、チェコ料理について話を聞きたいと日を改めて紹介してもらうことにしたのだ。

ちょうどチェコに興味を抱いていた時だった。 今年は「日本におけるチェコ文化年2017」。 第二次世界大戦により中断されたチェコとの国交が回復して60周年という節目にあたることから、チェコ共和国大使館が中心となって日本にチェコの文化を紹介するさまざまなイベントが催されている。

チェコ出身の芸術家アルフォンス・ミュシャ(チェコ語でアルフォンス・ムハ)の集大成とされる《スラヴ叙事詩》20枚の一大連作を、チェコ国外で初めて展示したことで話題の「ミュシャ展」もそのひとつ。 チェコ人のルーツであるスラヴ民族の伝承や歴史を描いた作品は、よく知られる華やかな女性像とはまた違った壮大な世界観で、私もミュシャの祖先への深い想いに静かに身をゆだねてきたところである(「ミュシャ展」は東京・国立新美術館で6月5日まで開催)。

そんなわけで、話を聞く前にチェコ料理をちょこっと調べてみた。 中欧の内陸国で冬は寒さが厳しいからか、メインは肉料理、煮込み料理が多いようだ。 インターネットで画像も検索してみる。 すると、あることに気づいた。 メイン料理の多くに淡い黄色のパンのようなものが数枚添えられているのだ。

「なになに、クネドリーキというチェコ特有の……茹でるパン!?」

焼くでもなく、蒸すのとも違って本当にお湯の中に生地をいれて茹でるらしい。 これはおもしろい。 そう思って、旧友に紹介してもらったマーティンさんに質問する。

「ドイツなど近隣国でも食べられていますが、僕たちチェコ人には欠かせない食べ物です。 チェコには小麦粉が主材料のホウスコヴェー・クネドリーキとジャガイモを練り込んだブランボロヴェー・クネドリーキの大きく2種類があります」

クネドリーキは正確にはパンではなく、練った小麦粉を丸めて茹でるダンプリング料理に分類される。 2種類ともモチモチとしているが、小麦粉のほうはイースト菌を使って発酵させるため蒸しパンのようにふんわりとしていて、イースト菌を使わないジャガイモのクネドリーキはニョッキのようによりもっちりとしているそうだ。

郷土料理ー2

=資料=

チェコ共和国の料理 ; 北方に位置する、東西に長い内陸国というチェコの国土立地は料理の食材に制限を加え、制限の枠内で様々な工夫を凝らした料理が生み出された。 伝統的には穀類、限られた種類の野菜、豚肉、牛肉、家禽類、乳製品、庭園で獲れた果物が、主な食材になっている。 前菜、デザート類の種類が豊富な点に特徴があり、一説には2,000種類もの前菜が存在すると言われている。

チェコ料理には香辛料による強い風味は付けられず、素朴な味付けがされ、ビーフストックに塩、コショウ、ラードがチェコ料理の基本的な味付け方法となっている。 肉料理の仕上げとしてスメタナ(サワークリーム)が入れられることが多く、味付けについて単調な印象を持たれる。 伝統的なチェコ料理は過多ともいえる脂肪分と塩分が含まれ、1つの皿に大量の料理が載せられる。 市場経済導入後からの健康志向の高まりによって、量が多く味の濃い肉とジャガイモ中心の伝統的なチェコ料理に手が加えられつつある。

朝食はパンにハムかチーズを添えた簡素なもので、コーヒーか紅茶が一緒に飲まれている。 夕食も簡略で、パン、ジャガイモとハムやソーセージの盛り合わせなどが食べられている。

典型的なチェコ料理の1つとして、酢キャベツ(ザワークラウト)とクネドリーキを添えたローストポーク(ヴェプショヴァー・ペチェニェ)が挙げられる。 ローストポークと付け合せの組み合わせはチェコ料理の基本形の一つであり、素材を牛肉、鶏肉、鯉のぶつ切りなど、調理法をソテーグリルに、付け合せのクネドリーキを茹でたジャガイモなど、料理を構成する要素を変えることで新たな一品料理が誕生する。

別のチェコ料理の基本形に、素材に衣をつけて揚げた料理がある。 叩いた豚肉、キノコ、カリフラワー、チーズなどがフライにされる。 フライには通常タルタルソースがかけられ、茹でたジャガイモが付け合せとされる。 ポークカツレツには、温かいジャガイモか冷たいポテトサラダが添えられる。

郷土料理ー3

 === 続く ===

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