睡眠の都市伝説の真意 =073=

☆彡 睡眠の都市伝説を斬る =三島和夫・睡眠研究者= 彡☆

【この企画は“Webナショジオ・連載/睡眠の都市伝説を斬る”に追記補講した】

“青木まりこ現象”から見た不眠の考察 =2/2=

 睡眠研究=1

​​ 読書に限らず、音楽、テレビ、アロマなど寝つくまでに何気なく行っている習慣をお持ちの方も多いだろう。 寝室での眠る前のちょっとした儀式。 しかし、その儀式が不眠の悪魔を呼ぶ黒魔術と化したとしたら……。

あるとき、ちょっとした人間関係の悩みで不眠気味になったとしよう。 家族の心配、皮膚の痒みなど、きっかけは何でも良い。 それまでは布団に入ってちょっと退屈な小説とか、学習本を読んでいるうちに知らぬ間に寝落ちしていたのに、悩み事ができてからなかなか眠気が来ない。 先週は50ページ、今週は1章読んでもさっぱり眠れない。そのうち1晩に1冊読み通してしまうのではないか……。

何カ月も不眠で悩むうちに、「どうせ今晩も眠れない」というあきらめの境地に至る。 読書も何気ない習慣ではなくもはや苦行である。 寝る時刻が近づくのが憂鬱だ。 リビングのソファーでふと眠気を感じて寝室に向かっても、ベッドに横になると目が冴える。 そのうちに、寝室に向かっただけで目が覚めるようになってきた。 長~い御鈴廊下(おすずろうか)を通って大奥に行くわけじゃあるまいし、わずか数メートルの間に何が起こっているのか!?

これは毎晩、寝室で悶々と苦しい思いをしているうちに、「寝室=眠れない苦しい場所」という記憶が定着し、寝室に入ると、いや寝室に向かう廊下に立っただけで眠気が飛んでしまうという新たな条件反射を獲得してしまったのである。 逆に寝るつもりのないソファーや電車の中ではすぐにウトウトできる。 不眠症は不眠恐怖症、ひいては寝室恐怖症(寝室不眠)と呼ばれる所以である。

不眠症のきっかけは患者によってさまざまだが、いったん慢性不眠に陥ると出だしの原因は関係なくなるのである。たとえ原因が解決しても寝室不眠の条件付けが完成しているため、不眠症が1人歩きを始めてしまうのだ。

最近、睡眠薬を使わない不眠症の治療法として認知行動療法が注目されている。 認知行動療法の目的は慢性不眠症に悩む人々が陥りやすい誤った就床習慣を正すことにある。 「眠気がしっかり出てから就床する」「眠れないときは寝室から出る」ことを徹底し、「寝床で悶々として過ごす時間をできるだけ減らす」ことで寝室不眠の条件付けを解除する。 自宅で実践するための指南書も何冊か出ている。 ご興味のある方は拙著をご一読いただきたい。

ここで「青木まりこ現象」に戻ろう。

書便派は排便のたびに読書をすることで「読書 ➡ 排便」という条件付けを獲得した人々ではないかと私なりに推察した次第である。 この段階であれば「青木まりこ現象」は起こりえる。

しかし、何らかの原因で書便派が便秘に陥ると、長時間にわたり便座に座って読書を続けることになる。 その結果、「読書や便所という空間」が「便秘で苦しむ」という現象に条件付けられてしまう可能性がある。 便便派の誕生である。

便便派は新宿駅で便意を感じても、近くの書店のトイレに(いや、ついにはコンビニの雑誌コーナー脇のトイレですら)飛び込んだが最後、ようやく直腸近くまで辿り着いた「ウン〇」が一気に引っ込んでしまうという悲劇に遭遇する可能性が高い。 そして、諦めて立川方面行きの中央線に乗った直後に、「書店でも便所でもない場所」に身を置いたことから条件付けが解除され、猛烈な便意が再燃するがそこにはトイレはなく、しかも特別快速であったためにしばらく先の駅まで止まらないというWの悲劇に遭遇するのであった。 ウーン。

とにかく、トイレと寝室ではやるべきこと以外はやるべきではない、という教訓を思い出させてくれた「青木まりこ現象」であった。

睡眠研究=2

=資料・文献 (The Wallstreet Jouurnal)= 

子どもの就寝時間で重要なのは規則正しさ=米研究 (3/3)

子どもたちは7歳のときに読解力、算数、それに空間認知能力に関わる評価を受けた。サッカー氏によると、その結果、最も成績が悪かったのはかなり早い時間か、もしくはかなり遅い時間に就寝しているか、または就寝時間が一定していない子どもたちだった。しかし、家庭内の他の要素が加味されると、就寝時間が一定していない子どもたちだけが点数が低いことが分かったという。

重要なのは一定の睡眠パターンだ。サッカー氏は「3つの年齢のいずれでも、不規則な就寝時間の子どもたちの方が、就寝時間が一定している子どもたちより成績が目立って悪かった」と指摘する。特に3歳から7歳の間に規則的な就寝時間を確立しなかった女児に顕著だという。

今回の研究の共同執筆者で、UCLの疫学と公衆衛生のイボン・ケリー教授は、なぜ女児の方が影響を受けやすいのか不明だと話す。ただ、読解力と空間認知能力で男女の点数には統計学上目立った違いはなかったが、算数で顕著だったという。

睡眠研究=3

=== 続く ===

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