睡眠の都市伝説の真意 =103=

☆彡 睡眠の都市伝説を斬る =三島和夫・睡眠研究者= 彡☆

【この企画は“Webナショジオ・連載/睡眠の都市伝説を斬る”に追記補講した】

冬眠という奇跡・・・・・・・・ =1/3=

​​睡眠研究=1

​ 睡眠に関するコラムを連載していることを知っている友人から、「冬眠の話はいつ書くの?」と聞かれたことが何度かある。 私自身もこの季節になると、特にネタに窮すると何度も頭に浮かぶのだが、今ひとつ筆が進まないのには2つの理由があった。

第一の理由は、睡眠を研究している者にとっては、冬眠は何となくアンタッチャブルな存在なのである。 冬眠初期の脳は睡眠状態に近いが、体温が更に低下して深い冬眠に入った時の脳活動が通常の深睡眠状態と類似しているのか、はたまた全く違うメカニズムが働いているのか、いまだ解明されていないのである。

第二の理由は、私自身が冬眠研究に全く関わったことがないからである。 私の専門は睡眠医学と時間生物学で、これまでに連載で取り扱ったテーマは自分自身が研究もしくは医療で関わったものばかりである。 それに対して冬眠研究はかなり特殊なテーマで、国内外でも取り組んでいる研究者はごく限られている。 要するに教科書でしか勉強したことがないテーマなので偉そうに解説するのは何となく気が引けるのである。

しかし今回はご要望? にお応えして、冬眠という奇跡的な現象がどのようにして生じているかご紹介したいと思う。 なんといっても、冬眠研究では近藤宣昭(こんどう のりあき)先生という世界をリードする素晴らしい成果を上げた日本人研究者がおられる。 今回は近藤博士の業績を辿る回と表現しても過言ではない。

冬眠の定義は実は難しい。一般的には冬場の一定期間にわたり哺乳類の体温が低下する、そして活動が停止する現象をさす。 ポイントは冬に体温が“内在因的に”低下すること。外気温が下がるから低体温になるのではない。 年周期リズム(概年リズム)に従い、気温の低下に先立って体温が低下する。 したがって魚類や爬虫類など変温動物が冬に不活発になるのは狭義の冬眠には含まない。 「哺乳類が」と書いたのは「恒温動物なのに」という意味合いを含んでいる。

冬眠する動物では体温が10℃以下になる。心拍数やエネルギー消費量も1/50程度にまで低下する。 仮に人が20℃以下の低体温になると細胞活動を担う遺伝子やたんぱく質の機能が損なわれ、心臓は活動を停止し、死に至ってしまう。 しかし冬眠動物の場合には、後で解説するような精巧な体内メカニズムによって心臓や組織の障害が生じないように保たれている。

睡眠研究=2

=資料・文献= 

冬眠(hibernation)とは、狭義には温動物である哺乳類と鳥類の一部が活動を停止し、体温を低下させて食料の少ない冬季間を過ごす生態のことである。 広義では変温性の魚類、両生類、爬虫類、昆虫などの節足動物や陸生貝などの無脊椎動物が冬季に極めて不活発な状態で過ごす「冬越し」のことも指す。

哺乳類の18目約4,070種のうち7目183種が冬眠することが知られている。このことから冬眠は一部の哺乳類の特殊な適応ではなく食料の少ない冬をやり過ごすための普遍的なシステムと捉えるべきである。 哺乳類の種・17科目に達する。 冬眠する動物のサイズは、体重が10gに満たない小型のコウモリから体重数百kgになるホッキョクグマまで幅広い。

 小型哺乳類の冬眠

シベリアシマリスの冬眠の調査では、冬眠中のエネルギー消費量は活動期の13%まで低下し、心拍数は活動期が毎分400回に対し10回以下、呼吸は活動期が毎分200回であったものが無呼吸状態の持続もあって毎分1回から5回、体温は37℃が5℃に低下した。 冬眠中の低体温は変温ではなく、一定の値に保たれる。すなわち体内のサーモスタット設定温度を切り替えた状態と言える。 キンイロジリスについての研究では通常39℃の体温が冬眠中は2℃を保つように機能していた。 また冬眠中であっても感覚は働いており、冬眠中のシマリスの体に強い刺激を与えたり大きな音を出すと冬眠を中断して約30分で覚醒する。

睡眠研究=3

=== 続く ===

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睡眠の都市伝説の真意 =102=

☆彡 睡眠の都市伝説を斬る =三島和夫・睡眠研究者= 彡☆

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間違いだらけの「寝不足は太る」 =3/3=

睡眠研究=1

​​​T: 例えば、睡眠不足の被験者に美味しそうな食事の画像を見せると食欲や快感、情動などに関連する脳部位が活発になることも明らかになっている。 また興味深いことに睡眠不足時には低カロリー食よりも高カロリー食、特に炭水化物や脂質リッチなメニューの画像にこうした部位が強く反応するけれど、その変化は必ずしも摂食ホルモンの濃度とは関連しないんだ。

B: 僕の場合は食欲の決め手は朝の天気だな。 朝イチバン、声高らかに鳴いた後の爽快さと朝飯の美味しさと言ったら!

S: そんな話、今、関係ないだろ!

T: いやいや、気分と食欲の話にも一理あるよ。例えば抑うつ傾向のある人の一部は過食や体重増加もみられるし、極端な例では冬季うつ病の過眠、過食、体重増加が有名で、このコラムでも以前も取り上げました。 長時間睡眠で体重が多い人々(U字型の右端)の中にはこのような抑うつ者が多く含まれていると考える研究者もいるんだ。

B: へへん! ヒツジはニワトリにとって一番鶏になることの価値が分かってないんだよ。 順番は序列で決まってて雄鶏にとって大変名誉なことなんだ。

T: さて、最後に第三のステップ「食欲増進➡肥満」に移ろう。この当たり前のように思えるステップが実は疑わしい。 睡眠不足と肥満をつなぐミッシングリンク問題なんだよ。「食欲が高まる」ことは事実としても、そのことが実際に「肥満になるほど食べる」という行動を引き起こすのにどの程度貢献しているかよく分かっていない。

むしろ、食欲が高まったときにドカ食いしないように抑える情動制御力が弱まっていることが肥満リスクの主因ではないかという意見もある。健康を意識していてもいったん食べ始めると腹八分で抑えきれない、とかね。 実際、睡眠不足に陥ると情緒面で不安定になったり、欲求不満を抑える力が低下することもよく知られているよ。

S&B: 先生! さっぱり分からなくなりました。今回のお話のオチはどうなっているんですか? 「睡眠不足➡摂食ホルモンの変化➡食欲増進➡肥満」という仮説は正しいのか正しくないのか白黒つけてください!

T: 正月早々混乱させてゴメンね(^_^; 正月太りにかこつけて睡眠と食のお話をしようと思ったんだけど少し脱線してしまったようです。2人の質問への回答は「まだ分からない」です!

ま、ま、 怒らないで。 私が伝えたかったのは、「睡眠不足➡肥満」という関係が疫学調査で明らかになっても、その背景にあるメカニズムはとても複雑だということ。 多くの実験データがあってもっともらしく見える摂食ホルモンの話も「因果関係」の視点から見直すとまだまだ肥満の(大きな)原因であるという証拠は不十分だということを知ってもらいたかったんだ。 最近では摂食ホルモンのデータを拡大解釈して「よく寝ると痩せる」みたいなキャンペーンも見かけるけど、摂食ホルモン以上に証拠は不十分です。

ということで、今年も睡眠にまつわる都市伝説に斬り込んでいくつもりです。 本年もヨロシクお願いします。

最後に今年の干支のサル君、今回のお話を聞いて一言お願いできるかな。

M: 私は寝正月派なので心配無用です。 私たちサルは雑食ですが、木の実や葉っぱ、果実など植物性たんぱくを中心に、時折昆虫やカエルなどもいただくなどバランスが取れた食事をしていました。 もちろん睡眠も大事ですが、肥満の原因はなんといってもカロリー過多と栄養の偏りで、大浜公園のサル仲間もまたその被害者です。 まずは、食生活の見直しをする。その上で適切な睡眠習慣を一助としたらよいでしょう。  ま、すべてはバランスの問題ですね。

睡眠好きの方々にはちょっとキツいことを申し上げました。 あ、でも、 個人的には睡眠不足時に炭水化物や脂質に脳が反応しやすくなるという画像研究の話が面白かったですね。 すなわち睡眠習慣が食の嗜好を変えるかもしれない。 「You are what you eat.」という諺は日本語では「健康は食にあり」と訳されることが多いようですが、私は「食は文化と教養」だと思っています。 それが睡眠に影響されるというのは驚きですね。

T,B&S: サル君、あなたタダ者じゃないね……。

睡眠研究=2

=資料・文献 (News_Week 2017年8月8)= 

睡眠不足はダイエット効果を損なう

睡眠不足によって太るだけでなく、睡眠不足はダイエットの効果を半減させることもわかりました。 カロリー制限ダイエットを行う人を対象に、睡眠を十分とったグループと、睡眠不足のグループを分けました。

2つのグループで脂肪燃焼度合いを比較したところ、約8時間の十分な睡眠を取ったグループは、5時間以下の睡眠不足のグループよりも、55%も多く脂肪が落ちたという結果になっています。8時間睡眠と5時間睡眠で、脂肪燃焼度合いが55%も違うなんて驚きですよね。

すでにカロリー制限ダイエットを行っていても、睡眠不足では効果が出にくいということになります。

また、睡眠不足のグループは十分な睡眠を取った人と比べ筋肉量が減るというデータもあります。 筋肉は基礎代謝を上げる大切なもの。その筋肉量が減ってしまえば、太るのは当然ですね。

睡眠不足はより太る脂肪細胞に変化させる

睡眠不足であっても夜中の間食を我慢し食べていない人もいるかもしれません。しかし、睡眠不足の状態は、何もしなくても脂肪細胞を更に太りやすく変化させてしまうのです。

ある研究では、20代前半のグループを対象に睡眠時間を8.5時間から4.5時間に減少させ、その変化を調べました。わずか4日間の睡眠不足で、脂肪細胞のインスリンに対する反応が変化したそうです。 インスリンは血糖値を安定させる働きがあり、同時に糖を脂肪に変える働きがあるため、別名太るホルモンとも呼ばれています。

インスリン感受性の低下によって、血液中にインスリンが残りやすくなり、高インスリン血症のリスクも高まります。インスリンが血中に多く残れば、それだけ脂肪を作りやすくなるということであり、同時に糖尿病などのリスクも高くなってしまいます。

睡眠不足は太るだけでなくさまざまな病気のリスクを上げるというわけです。 睡眠は生活の一部です。生活習慣病と呼ばれる糖尿病などの疾患が、睡眠という習慣から影響していることもわかりますね。

​​​睡眠研究=3

=== 続く ===

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睡眠の都市伝説の真意 =101=

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間違いだらけの「寝不足は太る」 =2/3=

 睡眠研究=1

​​​T: さまざまな方面から研究が行われているけれど、最も精力的に研究されたのは「睡眠不足➡摂食ホルモンの変化➡食欲増進➡肥満」というステップ。雑誌なんかでもよく取り上げられているよね。

S: 私もどこかで読んだことがあります。摂食ホルモンというのは食欲を高めたり、下げたりするホルモンですよね。睡眠不足になると食欲が増進するホルモンが分泌されるとかカントか。

T: お、ヒツジ君、よく知っているね。睡眠に関連する摂食ホルモンとして注目されたのが食欲を高めるグレリンと食欲を抑えるレプチン。たとえば、先のウィスコンシンの調査では睡眠時間が短い被験者ほどグレリンの血中濃度が高く、逆にレプチンの濃度が低いことも明らかになっているんだよ。

でも研究データをよく吟味すると解釈に注意を要することが多いんだ。元論文を読んでいないためだと思うけど、記事の中には拡大解釈をして誤った結論に至ったり、効果がはっきりしていない対処法を薦めたりするものが少なくないようです。

S: まさに睡眠の都市伝説ですね。

睡眠研究=2

T: そうなんだ。「睡眠時間と肥満」に関する研究データを紹介する記事や書籍の中にも典型的な都市伝説パターンに嵌まっているものが少なくないので、少し斬り込んでみようかと思います。

「睡眠不足➡摂食ホルモンの変化➡食欲増進➡肥満」の最初のステップ「睡眠不足➡摂食ホルモンの変化」についてはたくさんの実験データがある。 一番有名なのはシカゴ大学の研究グループによる一連の研究で、たった2日間の短時間睡眠でも摂食ホルモンの変化が生じることを報告しているんだ。 しかも睡眠時間が短くなるにしたがって食欲を抑えるレプチンの濃度が低くなるというスマートなデータを示したのでとても有名になりました。

B: なんだか睡眠不足で肥満になる話がホントっぽく聞こえてきた。

T: え、もう納得させられたの(笑) 事はそれほど簡単じゃないよ、もう少し良く考えてみて。
まず睡眠不足が体重に影響を与えるまでの期間について考える必要があるよね。これまでの疫学調査で明らかになっているのは年単位の長期的な影響についてだけ。数日~数カ月程度の短期間の睡眠不足が体重に与える影響は確定していないよ。

B: ふーん、じゃあ「年末年始の睡眠不足で正月太り」っていうタイトルの記事があったらまず疑ってかかるべきだな。 でも長期の睡眠不足は体重増加と関係しているんでしょ。摂食ホルモンの影響が溜まって体重が増えるんじゃ……。

T: 睡眠不足のシミュレーション実験には限界があって、摂食ホルモンの変化を見た研究の実験期間はせいぜい数日~1週間程度。そのため、年単位の長期にわたって摂食ホルモンが短期実験のような高値や低値を続けるか疑う研究者も多いんだ。 一般的に体のシステムは正常な状態を保とうとする強い力(恒常性維持機能)が働くので、睡眠不足で数日~数週間程度は摂食ホルモンの異常が生じても、その後徐々に正常化するのではないかという意見も根強い。

それに睡眠不足にしても普通は365日続くことはなくて、週末には寝だめをしたり、日によって違うよね。 そのような睡眠時間の変動が摂食ホルモンに与える影響もほとんど分かっていないしね。

S: 問題は、睡眠時間が摂食ホルモンに与える影響は実験環境で調べた短期間のデータしかない、長期的な影響は不明ってことですね。

T: その通り! さて、睡眠不足で(短期か長期か分からないけど)摂食ホルモンの変化が生じたとして、第二のステップ「摂食ホルモンの変化➡食欲増進」について考えてみよう。確かに実験で被験者を睡眠不足にすると摂食ホルモンの変化と同時に食欲が高まります。 でも、両者の間に(相関関係だけではなく)本当に因果関係があるのか証明されていないんだ。 食欲の調整に関わっているホルモンや神経は沢山あるからね。 もしかしたら摂食ホルモンは脇役かもしれない。

TV Gut

=資料・文献 (News_Week 2017年8月8)= 

<英リーズ大学の研究プロジェクトは、睡眠時間と代謝との関連を解明する研究結果を発表し、「睡眠時間が長いほど、ヒトの肥満度を表わす指数が低くなり、代謝状態がよい」ことを明らかにした> =2/2=

現代人の睡眠不足が肥満の増加につながっている?

世界保健機関(WHOによると、肥満は世界全体で1980年以来、倍増しており、2014年時点で18歳以上の成人の39%が過体重、13%が肥満の状態だ。

その一方で、日本やドイツなどの欧州5カ国で平均睡眠時間が1960年代より短くなっているほか、米国人の2013年時点の平均睡眠時間が1942年に比べて約1時間短くなるなど、現代人は睡眠時間が短くなる傾向が見受けられる。

「睡眠時間が短い人ほど、肥満や代謝性疾患になりやすい」というこの研究結果によれば、現代人の睡眠不足が肥満の増加につながっているとも推測できそうだ。 お腹周りが気になりはじめたら、食生活や運動習慣だけでなく、睡眠時間も合わせて見直してみることが肝要かもしれない。

.睡眠不足で太るのは食欲が増進されるから

睡眠不足で太るのは、夜間の食事量が増え、食欲を増進させるホルモンが分泌されるためということがわかっています。睡眠不足になっている…、つまり夜更かしをしている時は、夜中にお腹がすきませんか?夜中にドカ食いして、朝は食べず、不規則になって太る…こんな経験があるかもしれません。

研究で明らかになったのは、睡眠不足になると食欲を増進させる「グレリン」というホルモンの値が高くなるということです。食欲は、レプチン(食欲抑制ホルモン)とグレリン(食欲亢進ホルモン)でコントロールされています。そのうちの食欲亢進ホルモンであるグレリンの値が高くなってしまうのです。

4時間睡眠を2日続けてとったグループと、10時間睡眠を2日続けてとったグループの食欲コントロールホルモンの値を比較したところ、食欲を抑制するレプチンの分泌量が減り、食欲が増すグレリンが多くなるという結果になっています。睡眠不足になると、身体から「食べたい」という欲求が強くなってしまい、太るというわけです。

睡眠研究=4

=== 続く ===

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睡眠の都市伝説の真意 =100=

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間違いだらけの「寝不足は太る」 =1/3=

 睡眠研究=1

​​​T: ヒツジ君、トリ君、あけましておめでとう! 本年もヨロシクね。

S&B: おめでとうございます!  こちらこそよろしくお願いします!

T: この連載も41回を数え、二度目の正月を迎えることができました。連載を始めた当初は1年くらい続けられればいいな、なんて考えていたんですけどね。これも声援とクリックしていただいた読者の皆さんのおかげです。

S: 私たちも毎回登場させていただき、睡眠についてもだいぶ詳しくなりました。個人的には”朝型勤務の回”がとても印象的でした。夜型生活から抜け出せず悩んでいたのですが、体質的な側面があること、気合いだけで乗り切れるわけではないことを知ってとても気分が楽になったのを憶えています。朝型生活に切り替えるためのコツも役立ちました。

B: 僕の場合は”時差ボケの回”だな。渡り鳥になるのが夢なんで、備えあれば憂いなしってことで。でも時差ボケ理論は難しくて、いまだによく分からない点があるんだよなぁ。

S: 分からないなら復習しなよ! でも、ニワトリは渡り鳥にはなれないから!  先生、今年は申年なのでサル君もゲストでお呼びしています。

T : おー、いらっしゃい。サル君には昨年のイラストに登場してもらいました。サルの中でもチンパンジーやオランウータンなどの大型類人猿は寝床で横になってぐっすり眠るなど人に近い睡眠習慣を持っています。小型動物では外敵の襲撃に備えて何度も中途覚醒するなど断続的な睡眠になりがちだけれど、大型類人猿の睡眠構造は人と同じように深くて長い睡眠が特徴なんだ。

M: お呼びいただきありがとうございます。ちなみに私はニホンザルでオナガザル上科に属するサルです。大型類人猿になるヒト上科とは2500万年以上前に分岐したと聞いています。でも夜はぐっすり寝ていますよ。

T: それはよかった! さて、みんな年末年始はたっぷり楽しめたかな? 連日の忘年会から始まって、クリスマスのケーキとシャンパン、大晦日の夜更かしと年越しそば、おせち料理、昼酒でうたた寝ナドナド、睡眠と腹囲には厳しいイベントが続いたよね。

私の場合も年末年始は仕事と会合が立て込んで睡眠不足が続くほか、ついつい食べ過ぎて2kg以上成長してしまいます。同じような悩みをお持ちの読者も多いと思うので、今回は巷でよく言われている「睡眠不足で肥満になる」という話について検証してみたいと思います。

私はともかく、サル界でも肥満は問題になっています。大阪府堺市大浜公園のサル仲間(編集部注:アカゲザル)は「メタボ猿」なんて呼ばれて、中には糖尿病になってしまったものまでいます。ですから、睡眠と肥満の関係にも大いに興味があります。

T: 大浜公園のサルは観光客が与える餌が原因らしいけどね。人もサルも肥満の悩みは尽きないね。今回はオブザーバー参加と言うことでゆっくり見学していってください。

さて、多くの疫学調査からはっきりしているのは、睡眠時間と肥満は一般的に「U字型」の関係にあるということ。つまり、睡眠時間が短くても長くても肥満傾向が強くなる(図ではBMIが高くなる)ことが分かっているんだ。

短時間睡眠が肥満リスクを高めることは横断調査だけではなく、コホート研究でも示されていて、両者の関係はまず間違いないと考えられている。ちなみに、コホート研究とは前方視研究とも呼ばれ特定の集団を長期間にわたって追跡調査するため横断調査よりも信頼度が高いんだ。

B: 長くても短くてもBMIが大きくなるなんて、なんか変。本当に関係しているのかなぁ?

T: トリ君、真っ当な疑問だね。実はこのようなU字型の関係は「睡眠時間とうつ病罹患率」、「睡眠時間と糖尿病罹患率」、「睡眠時間と寿命」など他のさまざまな指標でもみられるんだ。結果は同じでも短時間睡眠と長時間睡眠は異なるメカニズムで働いていると推測されているよ。長時間睡眠のメカニズムについては別の機会に譲るとして、今回は睡眠不足が体重増加を引き起こすメカニズムについて考えてみよう。

睡眠研究=2

=資料・文献 (News_Week 2017年8月8日)= 

<英リーズ大学の研究プロジェクトは、睡眠時間と代謝との関連を解明する研究結果を発表し、「睡眠時間が長いほど、ヒトの肥満度を表わす指数が低くなり、代謝状態がよい」ことを明らかにした> =1/2=

肥満の一般的な原因として過食や運動不足がよく挙げられているが、実は、これまであまり注目されてこなかった”睡眠時間”も肥満と何らかの関連性があるようだ。

英リーズ大学のローラ・ハーディー博士を中心とする研究プロジェクトは、2017年7月、科学雑誌『プロスワン』において、睡眠時間と代謝との関連を解明する研究結果を発表し、「睡眠時間が長いほど、ヒトの肥満度を表わすBMI(ボディマス指数)が低くなり、代謝状態がよい」ことを明らかにした。

睡眠時間が1時間長くなると、胴囲は0.9センチ細くなった

この研究プロジェクトでは、19歳から65歳までの英国成人1,615名を対象に、睡眠時間と過去4日の食事についてヒアリングしたうえ、血圧と身長、体重、胴囲を測定し、採血を実施。血液検査では、ブドウ糖の代謝に異常が生じる『2型糖尿病』や肥満といった代謝性疾患と睡眠時間との臨床的関連性を解明するべく、脂質代謝や甲状腺機能、全身性炎症について詳しく分析した。

これらのデータをもとに研究プロジェクトが分析した結果、睡眠時間が長くなるほどBMIと胴囲が減少。1晩6時間睡眠をとる成人は9時間睡眠の人よりも胴囲が3センチ太かった。睡眠6~9時間の範囲では、睡眠時間が1時間長くなるごとに、BMIの値が0.46低くなり、胴囲は0.9センチ細くなったという。

また、睡眠時間が長いほど、”善玉コレステロール”と呼ばれる『HDLコレステロール』が大きくなり、糖と結合するヘモグロビンの割合を示す『HbA1C』が小さくなるなど、血液検査からも代謝状態が良好であることがわかった。・・・つづく

睡眠研究=3

=== 続く ===

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睡眠の都市伝説の真意 =099=

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帰ってきた断眠治療法—眠らずにうつ病を治す  =3/3= 

 睡眠研究=1

​​​ Pflugらの報告以降、現在まで約40年の間に研究論文で報告された断眠療法の実施数は全世界で数千例に上る。研究論文に掲載されるのは患者のごく一部なので、実際には相当多数の患者に断眠療法が実施されたと思われる。歴史と実績がある治療法なのである。しかし残念なことに、現在の精神科臨床ではすっかり廃れてしまった。今や、教科書で一度は目にしたことがあるが自分では実施したことのない精神科医が大部分である。ナゼか?

患者や医師が断眠療法を躊躇する理由はさまざまである。とにかく面倒、処方(服薬)の方が楽、不眠なのに寝かせないことに対する心理的抵抗(怖い)、健康保険がきかない、などなど……。しかし、なんと言っても最大の理由は「寝るとぶり返すことが多い」という点にあった。

断眠効果があった患者のうち約60%~80%が断眠翌日の睡眠後に抑うつ症状が再発する。これでは苦労して徹夜した甲斐がない。そのため断眠療法は難治例や、副作用などのために薬物療法を受けられない患者など特殊なケースに限定して行われるようになった。その後、週に1、2度断眠療法を繰り返すことで抗うつ効果を維持できることが明らかになったが、やはり大変さは変わらない。そのため1980年代以降、副作用が軽減された新しい抗うつ薬が次々と登場する中で断眠療法は過去の治療法として埋没してしまったのであった。

ところが、10年ほど前から欧州を中心として改訂版の断眠療法が考案されて、そのユニークな方法と向上した治療効果が注目されるようになった。改訂版断眠療法では単に断眠するだけではなく、断眠後に特殊な日替わりスケジュールで眠り、高照度光療法(強い光刺激で網膜を刺激する)を併用するなどの方法で実施する。

その結果、従来法の難点であった効果の持続時間が大幅に伸び、断眠療法後も1カ月以上にわたって抗うつ効果を持続させることに成功したのである。これであれば患者も断眠療法のメリットを享受できるし、薬物療法を併用するにしても効果が持続している間に調整が容易である。

筆者が主任を務めた厚労省研究班に参加してもらった分担研究者のグループが改訂版断眠療法の検証試験を行い、日本のうつ病患者(しかも薬物療法が奏功しない難治例)でも効果があることを確認している。筆者も何人かの患者に試していただいたが確かな手応えを感じた。かかる手間暇を考えれば多くのうつ病患者が受けるべき治療だとは思わないが、困った時の次の一手として試すべき価値があると思うのだが如何だろうか。

本稿が今年最後の回となった。読者の皆さんも良い年の瀬をお迎えください。大晦日を徹夜して、ハイな気分でお年玉を奮発しすぎないようにご注意を。

睡眠研究=2

=資料・文献 (The Wallstreet Jouurnal)= 

几帳面で真面目な人ほど発症しやすいうつ

高齢者でうつ病を起こす大きな要因は、親や配偶者との死別が多いのですが、不眠も大きな危険因子に上げられています。若いころに不眠があった場合も、中年以降になってうつ病を発症しやすい。

不眠がうつ病を招く仕組みには、ストレスが大きく関わっているので、まじめで責任感が強すぎてもうつを発症しやすいのです。中高年の男性に多く見られるのも、ストレスがより多い年代だから、ともいえます。

うつ病のケーススタディ

几帳面で真面目なAさんは、上司からも信頼されていて、大きなプロジェクトを任せられました。しかし、毎日残業してもなかなかはかどらず、疲れきって家に帰っても、ただ寝るだけの毎日で不眠が続くようになりました。 なかなか寝付けず、なんとか眠れても朝の4時には目が覚めてしまいます。睡眠不足が続き、身体はだるいし仕事もはかどりません。食欲も落ちてくる。

上司も心配して、産業医に相談することを勧めました。検査や診察では異常はなく、医師はストレスが原因の不眠と判断し、メンタルの専門家を紹介、そこでうつ病と診断。 幸い、薬物療法で不眠が改善されると、うつの症状も治まり、仕事も順調に進めることができました。

不眠を伴ううつの治療 :  うつの治療は、薬物療法では、抗うつ薬と不眠の改善のために睡眠薬を併せて使います。その他に「高照度光療法」や欧米で行われている「断眠療法」などがあります。

睡眠研究=3

=== 続く ===

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睡眠の都市伝説の真意 =098=

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帰ってきた断眠治療法—眠らずにうつ病を治す  =2/3=

 睡眠研究=1

​​​ 個人的には徹マン(徹夜麻雀)で夜も白む頃、メンツの一人が発した実につまらないダジャレ(ワンズがわんずらわしい、満貫もありまんがな、ナド)になぜか虚ろな笑いが止まらなくなる、などの現象も断眠効果の一種だと思うのだが……。

葬式躁病のような断眠効果を医療に初めて応用したのが今回のテーマ「断眠治療」である。断眠治療は1971年にドイツの精神科医であるPflugとTolleが考案し、40年以上も前からうつ病治療に使われてきたのである。

彼らはうつ病患者を一晩中眠らせないで経過をみたところ、翌日には抑うつ感や意欲低下のため行動できない(制止)などのうつ症状が顕著に改善することを見いだした。ちなみに、不眠は眠ろうとしても眠れない状態であり、断眠は人為的に眠らない(覚醒度を上げる)状態である。この二つは根本的に異なり、抗うつ効果があるのは後者である。

断眠中は特別なことをする必要はない。眠りさえしなければそれで十分である。ただし、普段の経験からも分かるように、徹夜は楽な作業ではない。特に眠気がひときわ強まる明け方や、翌日の午前中は眠気に耐えるのが大変である。しかし、ここでウトウトしてしまうと効果が大きく損なわれてしまうのだ。抗うつ効果を引き出すには、踏ん張って「しっかりと」目覚めている必要がある。

1人で眠気に耐えるのは大変だし、スタッフを1人の患者に張り付けるのはマンパワーの観点からも厳しい。そこで何人かの患者グループで集団の断眠を行うこともある。海外の医療施設では眠気覚ましを兼ねて参加者全員で軽運動をすることもあるようだが、運動を取り入れることが抗うつ効果を高めるか結論は出ていない。その人の年齢や体調に合わせて最も楽な方法で「目を覚まして」いればそれで良いのである。

その後の研究で、睡眠の後半部分を削る部分断眠だけでも効果があることも明らかになった。具体的には23時から5時まで6時間眠れる患者の場合には、3時間だけ眠らせ2時から起きてもらう。ただし部分断眠は完全な徹夜(全断眠)に比べて効果が弱いようだ。そのためうつ症状の強さや眠気に耐える力を勘案して断眠法を選択する。

これまでの多数の研究結果を総括すると、うつ病に対する有効率(一定基準を上回る改善を示した患者の割合)は低い報告で約40%、高い報告で60~70%である。60%という数値は抗うつ薬を用いた一般的な薬物療法の有効率とほぼ同じである。しかも、断眠療法の患者の中には薬物療法では効果が十分に認められなかった「難治例」も含まれている。

加えて、断眠療法は薬物療法に比較して効果発現が極めて早い。一般的に抗うつ薬では効果がしっかりと自覚できるようになるまで2週間から4週間程度かかる。それに比べて、断眠療法の場合は徹夜明けの午前には早くも気分の改善が見られ、午後にかけて効果が強まる。断眠明けの日中に眠ると抗うつ効果が弱まってしまうので起き続けてもらうが、キツイのはお昼頃までで、その後は体内時計の影響で覚醒度が上がるため眠気はかなり楽になる。

睡眠研究=2

=資料・文献 (The Wallstreet Jouurnal)= 

断眠療法の注意点・副作用 : 屋外に出れば曇りの日でも、1万ルクスの明るさです。 断眠療法後には、ある程度の眠気や疲労感、倦怠感が出ます。特に、治療の効果が少ない人によく見られます。2~7%の人で抑うつ症状の悪化が見られますが、多くの場合、軽いものです。

躁うつ病の患者さんでは、11~30%に効果がありすぎて躁状態になることがあります。特に急速交代型というタイプでは、65%の方にみられるので、注意が必要です。

断眠療法は他の治療と組み合わせるのが効果的 : 断眠療法の効果を高めたり、効果を持続させるために、他の治療法を合わせて行います。

うつ病の患者さんでは、睡眠・覚醒のリズムと、ホルモンの分泌や体温のリズムがずれていることがよくあります。これらの生体リズム(体内時計)を合わせるため断眠療法の後に、夕方に眠って真夜中に起きる「生体リズム位相前進法」を行うことがあります。

強い光には、眠気を減らしたり体内時計を調整したりする働きがあります。これを利用して、断眠療法のあとに6日間、朝夕2時間ずつ、3,000ルクスの強い光を浴びる「高照度光療法」を行うと、断眠療法の効果がその期間中持続します。

うつ病の患者さんでは、薬物療法を行っていたほうが、断眠療法の効果が長く続くことが知られています。ですから、断眠療法中は抗うつ薬を止める必要はありません。ただし、躁うつ病の患者さんでは、断眠療法によって躁状態が強く出ることがあるので、抗うつ薬は使わずに炭酸リチウムを飲んでもらうことがよくあります。

本格的な断眠療法は、専門の医療機関でなければ受けられません。しかし、うつ病まではいかなくても、「ちょっと気持ちが落ち込んでいるなあ」と思ったときには、自宅でプチ断眠療法を行っても良いかもしれません。

睡眠研究=3

=== 続く ===

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睡眠の都市伝説の真意 =097=

☆彡 睡眠の都市伝説を斬る =三島和夫・睡眠研究者= 彡☆

【この企画は“Webナショジオ・連載/睡眠の都市伝説を斬る”に追記補講した】

帰ってきた断眠治療法—眠らずにうつ病を治す  =1/3=

 睡眠研究=1

​​​  先回、不眠やリズム障害などの睡眠問題がうつ病の発症や再発のリスクを高め、治療の足を引っ張るという話を紹介した。ナショジオのfacebookページでも、「自分もうつ病の不眠で苦労している」「うつ病を治すためには眠ることも大事なのですね」など多くの嬉しいコメントをいただいた。

そして(それにもかかわらず?)今回のテーマは、患者さんを眠らせないことでうつ病を治療する、人呼んで「断眠療法」である。このどんでん返しは何なんだ! と呆れている読者もおられるかもしれないが、歴史も実績もある有名な治療法なのでうつ病と睡眠つながりで是非ご紹介したいと思う。

一般的に「毒にも薬にもならない」ものは役に立たないことが多い。「毒にも薬にもなる」ものには、酒をはじめ、麻薬(鎮痛薬)やボツリヌストキシン(ボツリヌス菌が産生する毒素でボトックスなどの商品名で筋痙攣性疾患に用いられる)など医薬品として活用されているものが幾つもある。

この連載でも何度もご紹介したように、眠らないことは多くの場合は毒になる。だが、時には薬として働くこともまたある。断眠療法はその典型例であるし、震災や戦争など危急時には眠気がすっ飛んで長時間にわたり自己防衛が可能になるのも一種の効用と言えるだろう。

本題に入る前に大事な注意点を1つ。今回ご紹介する断眠療法は短期間(1晩のみ、もしくは1週間に2回など)に限り、医師の管理下で実施する「医療」である。自己流で試すのは危険。年配の方は血圧その他、心身への負担があるし、双極性障害(躁うつ病)の方は躁状態に移行してしまうことがある。

さて、突然かつ縁起の悪い話で恐縮だが「葬式躁病」という精神科用語がある。正式な学術用語ではないが精神科医の間では広く知られている。近親者を亡くして辛く悲しいはずなのに、妙に明るく振る舞い、弔問客に対しても多弁で笑顔を絶やさないなど、見かけ上も心理上も気分が高揚している状態である。

その際の心理状態はさまざまに説明されているが、辛い現実を真っ正面から受け止めることができず無意識のうちに避け(否認し)、逆にハイテンションな精神状態を自ら作り出すことで苦境を乗り切ろうとしているという説がよく知られている。「躁的防衛」と呼ばれる心理機制である。これは、まぁ、正しかろうと思う。

しかし、睡眠科学の視点からはもう1つ、「通夜躁病」とでも呼ぶべきメカニズムが働いていると考えられている。諸事で忙殺され寝不足となり、ついには通夜で徹夜(断眠)することが躁状態を引き起こすという断眠起因説である。

というのも、断眠にはうつ病患者だけではなく、健康な人の気分も押し上げる効果があるからだ。徹夜明けに眠気と疲労感があるにも関わらず、妙にハイになって余計な一言を口走ってしまった体験はないだろうか。このように徹夜が気分をハイにさせ抑制欠如気味にさせるのは「断眠効果」と呼ばれる。

睡眠研究=2

=資料・文献 (The Wallstreet Jouurnal)= 

断眠療法の高い効果 : うつ病患者さんの約6割に効果があります。 現在、日本では約100万人の人が、うつ病などの「気分障害」に苦しんでいます。うつ病の治療のゴールデン・スタンダードは、抗うつ薬と休養、それに認知行動療法です。これらに加えて最近では、「断眠療法」が注目を集めています。

抗うつ薬を飲んで抑うつ症状が半分にまで改善するのに、平均で約6週間かかります。ところが、断眠療法を行うと、一晩でそれと同じくらいの効果が期待できます。有効率も高く、約6割のうつ病患者さんで効果を示します。

断眠療法は、うつ病や躁うつ病でだけでなく、パーキンソン病や統合失調症、妊娠中、産後のうつ状態にも有効です。また、月経前不快気分障害も改善してくれます。

ただし、重症のうつ病の方やてんかん患者さんには行えません。さらに、不整脈や狭心症、心筋梗塞がある人は、症状が悪化することがあるので注意が必要です。

断眠療法の種類 : 断眠療法には眠らない時間の長さなどによって、いくつか種類があります。

一晩、まったく眠らないのが「全断眠療法」。断眠療法中の午前3~4時ごろから、抑うつ症状が急速に軽くなってきます。ただし一度眠るとその段階で効果がなくなるため、断眠療法後に昼寝したり翌日夜に眠った時点で、抑うつ症状がぶり返してしまいます。これを軽減するために、後述するような他の治療法を併用します。また、効果は高いのですが、徹夜すると体への影響も大きいので、短期間に何回も繰り返せません。

「部分断眠療法」は、一晩の半分だけ断眠します。夜の早い時刻に就寝して、午前1~2時ごろに起床するのが「夜間後半部分断眠」。逆に、午前2~3時ごろまで起きていて、そのあと午前7時ごろまで眠るのが「夜間前半部分断眠」です。

部分断眠療法は体への負担が少ないので、1~2日の間隔をあければ繰り返し行えます。うつ病に対する効果は全断眠とくらべて、同じくらいかやや劣ると報告されています。夜間後半部分断眠と夜間前半部分断眠は、どちらも同じぐらいの効果が期待できます。

睡眠研究=3

=== 続く ===

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