現代の探検家《小林快次》 =07=

○◎ Great and Grand Japanese_Explorer ◎○

【この企画は“Webナショジオ・連載/日本のエクスプローラー”に追記補講した】

Ӂ 世界中を飛び回り、恐竜の姿を求める / 小林快次 Ӂ

​​​化石標本ー2

◇◆ 第3回 急斜面から2トンの化石を運び出すには =2/2= ◇◆

 ひっくり返したジャケット。裏側を見ても、その巨大さは変わらない。私たちは黙々と、反対の面に石膏を浸した麻布を掛けていく。1時間もしないうちに、巨大な白い固まりが完成した。

ジャケットを完成させてはみたものの、これをどうやってトラックへ運ぶのか。  ここは急斜面の中腹。トラックが入れそうな下へも上にも、標高差30メートルはある。考えている振りはしたが、何の名案も無い。
「(何か良いアイディアよろしく・・・)」と声に出さず願い、モンゴル人の方をチラチラ見る。しかし、今度ばかりは、モンゴル人もお手上げのようだった。 何せ重量が2トン。ひっくり返すのがやっとだった。

平坦な土地だったらまだしも、目の前にあるのは急斜面だ。斜面の下に車を持ってくればよいとも思ったが、こんな峡谷の底に車を持ってくるのは自殺行為そのものだと言う。  仮に車を斜面の下に持ってくることができたとしても、2トンのジャケットを積んだ車は、そのまま身動きが取れなくなる。

トラックには、長いワイヤーがついたウインチ(巻き上げ機)があった。伸ばしてみると予想以上に長く、もう少しでジャケットに届くことがわかった。  距離にして10メートル。高さの違いが3メートルほどだろうか。けん引ロープをジャケットに巻いてワイヤーにつなげれば、何とか届く!

ウインチで上まで引っ張れば、ジャケットを崖の上まで持っていけそうだ。

恐竜発掘ー20

2トンのジャケットと格闘

すぐにけん引ロープを巻き、準備をした。  あとは上から引っ張り上げてもらうだけだ。トラックのエンジンを掛け、ウインチでワイヤーを巻く。  間もなくして、ワイヤーもけん引ロープも、ピンと伸びていく。

私たちは固唾をのんで、その様子を眺めていた。  ウインチの力がジャケットにゆっくりと伝わり、ジリっとジャケットがずれたのがわかった。  その途端だった。  けん引ロープがジャケットの重さに耐えきれずに、轟音(ごうおん)を発して切れた。  渓谷中に音が響きわたる。

誰もが声を失った瞬間だった。

これではうまくいかない。  けん引ロープを二重に巻けば何とかなるかもしれないが、二重にすると長さが短くなり、ジャケットまで届かない・・・。

二重にしたけん引ロープをワイヤーにつなぎ、どこまでジャケットを移動すれば届くか考えた。横に5メートル、上に1メートル動かせば、何とか届きそうだ。  大した距離には聞こえないが、何せ相手は2トンのジャケットだ。

ジャケットをひっくり返す要領で、横へと移動させていく。 ここまでは問題ない。  問題は、高さ1メートルの移動だ。

横に移動させたのと同じ要領で、斜面の上に向かってジャケットをひっくり返してみたが、高さはあまり稼げなかった。  ジャケット自身の重みで下にずれ、砂に埋もれてしまうのだ。高低差にしてやっと30センチくらい上がっただろうか。  めげずに再度やってみる。  さらに30センチ上がったような気がする。

クタクタになった私たちは、崖すれすれに停めてあったトラックをもっとギリギリまで近づけられないかと、運転手に頼んでみる。  反応は良くなかったが、何とか了承してくれた。  浮かない顔をした運転手は、数センチ単位で慎重にトラックを前に出す。  しかし1メートルも前に出さないうちに、これが限界とサインを送ってきた。

斜面を駆け足で降り、ジャケットの元へと戻る。  ワイヤーを引っ張り、けん引ロープをジャケットの方へ持っていくと、何とか届いた!

ウインチをゆっくりと巻いていくと、ついにジャケットが動き出した。

恐竜発掘ー21

  ズルッ、ズルッ、と音を立てながら、ジャケットが少しずつ斜面を上っていく。  斜面を滑るというよりも、削っている。  ジャケットの重さが溝の深さからもわかる。私たちは「ゆっくり、ゆっくり」と大声を上げながら、ジャケットを見つめる。これまでの苦労が嘘のようだ。数分もしないうちに、巨大ジャケットは斜面の上に上がっていた。

さて、最後の作業だ。この巨大ジャケットをトラックに積み込まなければいけない。  地面とトラックの荷台の高低差は、1.2メートルほど。みなさんならどのようにして、この巨大ジャケットをトラックの荷台に乗せるだろうか?

私たちが出した答えは、次の通りだ。

深さ1.2メートルほどの大きな穴を2つ掘る。穴の間隔は、トラックのタイヤの間隔。  トラックの後輪を穴に入れる。もう気づいただろうか? ジャケットを上げるのではなく、トラックの荷台の高さを下げればよいのだ。

地面と荷台を渡す板を2枚敷く。 ジープにあるウインチを使い、トラックの荷台の隙間からワイヤーを通す。   ワイヤーをジャケットに引っ掛けてウインチを巻けば、2枚の板の上をジャケットが滑り、荷台へを導かれていく。

自然と拍手が沸いた。

* * *     * * *

 調査後、巨大ジャケットは韓国の施設へと運ばれ、「クリーニング作業」が進められた。  クリーニング作業とは、骨化石を岩から取り出す作業だ。周りの岩を慎重に削っていく。  この化石を発見した際に期待していたとおり、美しい頭骨が残り、こぶ付きの立派な尻尾も掘り出された。  このヨロイ竜がどんな恐竜だったのか、詳細は現在、研究中だ。

現在、このヨロイ竜は骨格が組み上げられ、韓国南西部にある華城(ファソン)市の市役所で展示されている。  この化石の産地からはティラノサウルスの仲間であるタルボサウルスの歯も見つかっていることから、このヨロイ竜の遺骸はタルボサウルスに食べられた可能性がある。  その様子を再現して、隣にはタルボサウルスの復元骨格を並べている。

華城市では現在、恐竜博物館の建設が計画されていて、完成すればそちらに展示される予定だ。

恐竜発掘ー22

= 大恐竜展・ゴビ砂漠の驚異 =

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現代の探検家《小林快次》 =06=

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​​​小林快次ー3

◇◆ 第3回 急斜面から2トンの化石を運び出すには =1/2= ◇◆

  私が掘り当てた皿状のものはヨロイ竜の上顎の「くちばし」の部分で、ユン(調査隊を率いる、韓国地質資源研究院のイ・ユンナム)が見つけた三角錐の部分は、頭の後ろの方にある突起だった。
私たちはハイタッチをし、子どものように飛び跳ね、抱き合った。「こんなことなんてあるの? 尻尾も頭骨も、腰の骨の中にある空間に入っているなんて!」

化石標本ー1

 少し冷静になった私たちは、お互いに疑問を投げかけた。
目の前にあるヨロイ竜の腰の骨は、大きな「かご」のようになっている。 岩を見ると、このヨロイ竜が生きていた当時の川は、頭の方から尻尾の方にかけて流れていたことがわかる。

私たちの見解は次の通りだ。

川辺で死んだヨロイ竜。肉の腐敗は進み、骨が露出していく。手や足の骨は少しずつバラバラになり、下流へと流されていってしまう。 頭や残された骨格は1つの大きな岩石のようにまとまった状態で、次第に川の流れに従い、少しずつ下流へと流される。

しかし、尻尾の先にある「こぶ」が、船のいかりのように川底に引っかかる。腰の骨が水の流れに押されつづけるうちに、引っかかったこぶを軸にして、尻尾が根元で折れる。 さらに水が腰の骨を押しつづけるが、こぶが重りになって、流されずにいる。そこに上流から頭骨が流されてきて、幸運にも、かごのような腰の骨の中に収まる。 そのうち土砂が次々と流れてきて、ヨロイ竜の骨格をゆっくりと埋めていった・・・。

通常、全身骨格の発掘は、多少分散している骨を収集するために、広い面積を発掘するケースが多いが、今回はその逆だった。 運良く、大事な骨がすべて腰の「かご」に収まった状態なのだ。

喜んだのもつかの間、次の問題が出てきた。

「大事な尻尾と頭骨を犠牲にすることはできない。この大きな固まりを二分しようと思ったが、できなくなった。こうなったら、これを1つの固まりのまま、ジャケットにして持っていくしかない」

恐竜発掘ー17

巨大な化石をひっくり返す

ジャケットとは、化石を取り囲む母岩(ぼがん)から露出した骨化石を、壊さずに運び出すために作るものだ。
母岩の外側から骨に向かって掘り込む。ある程度掘り込んだら、準備完了。 まず、露出した骨にトイレットペーパーを掛ける。 次にかける石膏を後ではがす際に剥離剤として作用し、骨に石膏がくっつかずに済むからだ。

次に、バケツに水を入れ、石膏を溶かす。 帯状に切った麻布を石膏に浸し、母岩ごと骨を覆っていく。骨折したときなどにする、ギプスの要領だ。 石膏に浸した麻布を何重かに巻いたら、石膏が固まるまで待つ。 乾いたらひっくり返して、反対側も同様に麻布で覆う。

こうしてできた、石膏に覆われた固まり全体を「ジャケット」と呼ぶ。

私たちは巨大なジャケットを作り始めた。 かなり大きいため、ジャケットがゆがみにくくなるように、2×4(ツーバイフォ)の板を這わす。 板ごと石膏で覆い、強度を高める。 かなりの石膏を使った。 直径1.5メートルほどの、円盤状の巨大なジャケットの上側が完成した。 推定2トンくらいはあるだろうか・・・。

乾くのを待ちながら、とんでもないジャケットを作ってしまったことを後悔する。 ジャケットを完成させるには、ひっくり返して下半分も石膏で覆わなくてはならない。 しかしここには重機が無い。 あっても入れるような場所ではない。

トラックは化石を発掘した急斜面の50メートルほど上に停めてある。 この崖の中腹までトラックを持ってこられるはずもない。 巨大なジャケットの上半分が乾いたところで、どうやってひっくり返せばいいのだろう。

恐竜発掘ー18

モンゴル人スタッフの妙案

私たちが英語で話しているそばで、モンゴル人たちがモンゴル語で話し始めた。 先進国出身の私たちは、技術に頼りすぎて、知恵が乏しい。 一方、モンゴルの人たちは、道具が無い状態でも何とかしてしまう、知恵の塊のような人たちだ。

しばらく話し合ったと思ったら、彼らはどこかへ消えてしまった。 そして、10分もしないうちに戻ってきた。 その手には、ジャッキが2個、土のう袋、けん引ロープ、分厚い板が握られていた。

彼らが説明を始める。 計画はこうだ。

発掘の際に出た大量の砂を袋に入れ、土のうをたくさん用意する。 ハンマーでジャケットの下を掘り込み、十分な隙間ができたら、ジャッキを噛ます。 これは、下を掘り込んでも、ジャケットが落ちてきて怪我をしないため。 そして、ジャケットそのものを持ち上げるためだ。

ジャッキで少しずつジャケットを持ち上げ、隙間に土のうを噛ます。 安定させたら分厚い板を土台にし、そこにジャッキを入れ、さらに持ち上げて隙間に土のうを噛ます。 これを繰り返してジャケットを角度45度くらいまで傾けたら、けん引ロープをジャケットに掛けて、垂直になるまでゆっくりと引っ張る。

続いて、垂直に立ったジャケットを倒す方に、土のうを大量に積む。 勢いよく倒すと、ジャケットの中の化石が衝撃で壊れてしまうので、そっと倒さなければならない。 そこで、ジャケットを土のう側に押す人と、けん引ロープで倒す反対側から引く人に分かれ、力を調整しながら作業する。

ジャケットが土のうに届いたら、あと1歩。 ここからは、さっきの逆をやればいい。 ジャッキを噛ませ、土のうを抜く。 ジャッキを降ろし、土のうを抜く、という風にだ。

感心しながら、モンゴル人の指示に従う。 すると、時間はかかったが、不思議なくらいうまく、巨大なジャケットをひっくり返すことができた。 人間っていうのは、こうやって知恵を使い、自然を味方につければ、不可能に思えることも可能にすることができるのだ。

恐竜発掘ー19

= 大恐竜展・ゴビ砂漠の驚異 =

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現代の探検家《小林快次》 =05=

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​​​恐竜発掘ー10

◇◆ 第二回 恐竜化石の“掘り出し方” =2/2= ◇◆

 巨大な腰の骨を発見する。 しかし、待っていたのは、その期待に反した結果だった。  腰の骨しか残っていない・・・。

胴体や頭があるはずの場所をいくら掘っても、軟らかい砂岩で、骨が出てこない。 先端にハンマーのような「こぶ」がついているはずの尻尾はどうかと、腰の後ろの部分を一生懸命掘ってみる。

しかし、尻尾も無くなっている。 まるで、ちょうどお腹のところだけを残して、すべてを何かに切断されたかのように、腰の部分しか残っていない。

悔しさのあまり、奥歯を噛みしめる。 このヨロイ竜の頭骨や尻尾は、死後流されてしまい、保存されなかったのだろう。

「腰の部分だけでもすごい発見だよ! これを掘り出して研究しよう」。 ユンが私の肩を叩きながら、優しく声をかける。 さっきよりもハンマーを叩く速度は落ちたが、目の前の巨大な腰の骨を掘り出すことに集中した。

さっきまで、この巨大さに歓喜していたが、今はそれが憎しみに変わっている。

「こんな大きな腰の骨・・・。大きいだけだ」

恐竜発掘ー16

次々と見つかる不可解な骨

周りの岩を外側から骨に向かって掘り込み、腰の全体像を把握する。 どんなに周りを掘り込んで小さくしても、直径2メートルほどの大きな固まりよりも小さくできない。 これでは掘り出したとしても、運び出すことすらできない。

そこで私たちは、その腰の固まりを何とか分割できないかと模索する。 狭い骨と骨のすき間を探し、それを皮切りに、大きな固まりを小さな固まりにして取り出す作業だ。 世界各地で恐竜発掘を行っている私たちでも、かなり困難な作業だった。

腰の骨がちょうど「かご」のようになっていて、その中をほじくっていく。 本来なら何も無いはずの腰の中。 それなのに、次々と部位不明の骨が見つかる。

「邪魔だな・・・」とつぶやきながら掘っていると、表面がごつごつしている骨にぶち当たる。 こんな骨、腰の中にあるはずがない。

おかしいなと思いながら、そのごつごつしている骨の表面を出してみると、大きな卵を縦に二分した片割れのような形をしている。 最初はわからなかったが、もう半分が出てきて、それが何か、ようやくわかった。

「ヨロイ竜の尻尾だ!!!。 尻尾の先端についている、ハンマーのようなこぶだ!」

こんなこともあるもんだと感心しながら、こぶの先端からたどっていくと、つながった尻尾の骨が続く。 なぜなのかはわからないが、尻尾は根元で180度折れ曲がり、腰の骨の中へと伸びていた。 そして、尻尾の先にあるこぶまでが残っているという偶然だった!

この尻尾を回避しつつ、大きな固まりを分割していかなければいけない。 運良く、尻尾の真ん中あたりで亀裂が入っている。 この亀裂を利用すれば、ダメージを最小限にして尻尾を取り出し、固まりを分割できるかもしれない。

恐竜発掘ー15

 これまで1人でやっていた尻尾の発掘作業を、ユンと2人で手分けした。 ユンは瘤(こぶ)の部分を、私は尻尾の脊椎の部分を担当した。 どんどん掘り込んでいくと、尻尾の保存状態の良さがわかってくる。 尻尾は複数の椎骨(ついこつ)でできているが、重い骨の固まりであるこぶを支えるように、ずらっとつながっている。

掘り進んでいくと、表面がごつごつした骨が出てきた。 「こぶにたどり着いたかな?」と顔を上げ、ユンの顔をみる。しかし、彼が作業している骨は、私の目の前にあるごつごつしている骨から、数十センチ離れている。

こぶがもう1つあるのかと疑問に思いながら、ごつごつした骨の周りをもう少し掘り込んでいく。

どうもユンが作業しているこぶとは違う。 表面のごく一部だが、露出した骨の形はまるで皿のような形をしている。その“皿”の下側はざらざらだが、内側はざらざらしていない。 不可解な形である。

「ユン、何だと思うこれ?」

するとユンも、「こっちからも、三角錐の表面がざらざらした骨が出てきた。 こぶじゃない。 ヨシの骨とつながっているのかな?」

しばらく2人に沈黙が走る。 顔をかしげ、角度を変えながら、この骨が何か考える。 顔をほぼ逆さになるくらい回したときに、パズルが解ける瞬間が来た! ひらめいた私は大きく目を見開き、ユンの顔を見た。

まるで鏡を見るかのように、ユンも私と同じ顔をしている。

「頭だ!!!」  ・・・・・2人は叫んだ。

恐竜発掘ー14

=ノドサウルス =

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現代の探検家《小林快次》 =04=

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​​​恐竜発掘ー9

◇◆ 第二回 恐竜化石の“掘り出し方” =1/2= ◇◆

 何とか暗くなる前にキャンプにたどり着いた。足は文字通り、棒のようになっていた。汗が塩の結晶と化し、頬にこびりついていた。 顔を洗ってもジャリジャリと音がする。 メインテントからいい匂いがする。晩ご飯ができているようだ。 顔を洗い終えた私は、その匂いの方向へと歩き出した。
メインテントの前では、この調査に参加している研究者がはだしになって座り込み、日が沈みかけて冷たくなった砂の中へ素足を潜り込ませ、冷たいビールを飲んでいた。

「ファルコンズ・アイ、今日はどうだった? だいぶ歩いていたけど、何か見つけた?」

米国サザンメソジスト大学のルイス・ジェイコブスが頭のバンダナを外し、笑いながら語りかける。 私がよほど疲れて見えたのか、それとも、何も発見していないという落胆ぶりが表情に現れていたのだろう。

この調査は、「ユン」というニックネームで呼ばれる、韓国地質資源研究院のイ・ユンナムが中心となり、世界中の恐竜研究者をかき集めて結成された国際調査隊によるものだった。 大きく、韓国チーム、米国チーム、カナダチームの3つで構成され、私は米国チームとして参加していた。 何を隠そう、ルイスは私の大学院の師匠で、ユンは先輩だった。

私が博士号を取得したとき、博士論文の審査委員が5人いた。 主査がルイスで、他の4人もこの調査に参加していた。 その中には、カナダ、アルバータ大学のフィリップ・カリーや、モンゴル科学アカデミーのリンチェン・バルズボルド、米国ペロー博物館のトニー・フィオリロが含まれる。
また、この調査に参加していた中国地質科学院のル・ジュンチャンも、サザンメソジスト大学で博士号を取っている。

つまり、私、ジュンチャン、調査の中心を担うユンの3人は、サイエンティフィックな兄弟なのだ。 ルイスは、アジアの恐竜研究の次世代を担ってもらいたいという思いで、私たち3人に博士号を与えていた。みんなの夢が叶ったのが、この調査だった。

「まあ、いくつか化石は見つけたよ。気になるのは、肋骨・・・。ま、肋骨1本かもしれないけれど。でも、もしできるならもう1人2人、助っ人が欲しいかな。 砂岩なんだけど、砂粒が細かくて、流れが遅いところでできたものだ。もしかしたら、もっと骨が埋まっているかも」

すると、ジュンチャンが手を上げた。  「俺が行くよ」

恐竜発掘ー11

 巨大な腰の骨を発見するも・・・

次の日、私たちは肋骨の場所へと戻った。 昨日と同じ、雲1つない暑い日。景色がいいのが、せめてもの救いだった。

昨日掘った肋骨を掘り起こす。 ジュンチャンが声を上げた。 「これは良い化石だ!」 相変わらず、キレイな骨だと思う。

時間が経つのを忘れて、骨の周りを掘っていった。 1本の肋骨が2本になり、3本になっていく。 それもかなり大きい。 これで終わるかと思ったら、さらに平たい大きな骨が出てきた。 2人で顔を見合わせる。 「なんだこれ?」

さらに掘り続けると、その平たい骨は1メートルほどの長細い骨だとわかった。 腰の骨の1つである腸骨だ。 しかも、肋骨と腸骨がつながっている。 私たちは、これはバラバラの骨ではなく、骨がつながった状態の全身骨格であることを確信した。 私は1人でガッツポーズをした。

「やっと見つけた! 全身骨格だ」

恐竜発掘ー13

  腰の幅だけで2メートル近くあり、形から、この恐竜がアンキロサウルスのようなヨロイ竜であることがわかった。 モンゴル南部のゴビ砂漠にある、ここヘルミンツァフで以前発見された「タルキア」という恐竜である可能性が出てきた。 ただ、それを確認するには、さらに特徴のある骨が必要だ。何でもよいが、できれば頭骨が欲しい。私の欲は増してきた。

腰の骨の周りを掘るだけで1日かかってしまった。 全身骨格であることを確信した私たちは、キャンプに戻ってみんなに報告した。 みんなは半信半疑ではあったが、さらに数人、人を送り込むことに同意した。

その日から、この骨格を掘り続けた。 発掘地を広げるために、削岩機と発電機を投入する。 風が強く、これまで掘ってきた砂が舞う。 目や鼻、穴という穴に砂が舞い込んでくる。ゴーグルを付け、顔をバンダナで巻き、砂が入らないようにする。

モンゴル人がひもを引き、発電機をかける。爆音が響き、削岩機を持っている私に親指を立てて、ゴー・サインを出す。 斜面にいとも簡単に刺さる削岩機。これで一気に崖を崩し、作業を進める。目の前の削岩機が削る新しい岩に集中し、この骨格が全身であることを期待する。

しかし、待っていたのは、その期待に反した結果だった。

恐竜発掘ー12

= アンキロサウルス =

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​​​恐竜発掘ー6

◇◆ 第一回 恐竜化石は”歩いて探す” =2/2= ◇◆

  私はこの時、なぜ見つかるのは遊離した歯や骨だけなのかと、自分に問い続けていた。 一緒に参加している研究者の動きを思い返してみると、みんなは歩きやすい平坦な砂岩の上をひたすら探していた。

ここにある砂岩の層は、平坦で確かに歩きやすい。 断片的なものではあるが、たくさんの歯や骨の化石も見つかる。 2メートルごとくらいに、キレイな肉食恐竜の歯や指の骨が落ちている。 これは歩いていて楽しい。 しかし、これではいつまで経っても、全身骨格は見つからない。

そこで、目の前の露頭(※)をよく見ると、平たい砂岩層の上に高さ10メートルくらいの泥岩層からなる急な斜面があり、人が歩いた形跡がほとんどない。 斜面が急で、足場が悪いからだ。

泥岩の地層は、砂岩の地層と違い、水の流れが遅い所で積もったものだ。 みんなが探している砂岩は、比較的水の流れが速いところで堆積した砂からできている。 そこに残る恐竜化石は水に流されてきているため、どうしても断片的になりがちだ。

一方、泥岩の地層は水の流れが遅いところで堆積した泥からできていて、もし恐竜の死骸があれば、1体分丸ごと残っている可能性がある。恐竜の全身骨格を探すなら、ここを探す価値はあるだろう。確率はかなり低くなるが、見つかれば全身骨格の可能性がある。

そこで私は、この泥岩の急な斜面を歩いてみることにした。

この斜面は、泥岩が風化してできたもの。細かく壊れた泥岩は、砂場を歩いているようで、歩くと足を取られてしまう。しかも急な斜面なので、3歩上がっても、2歩分くらい下がってしまう。 歩いているとすぐに足ががくがくし始めた。

さらに最悪なことに、化石の出る雰囲気がない。 みんなが探している砂岩とは大違いだ。

恐竜発掘ー8

怪しい「白い砂」

午前中は何とか頑張って、この斜面を歩き続けた。 さすがの「ウォークマン」も足腰が疲れてきた。 ハンマーで斜面をお尻の形に掘り、重力に従い、そこに腰を下ろした。 少し潰れたサンドイッチと温かい缶ビールをバックパックから取り出した。

目の前の美しい渓谷を見ながらランチを食べ始めたところで、私は後悔した。 キャンプまではまだ遠い。 ここで足腰を使ってしまうと、帰る体力が無くなってしまうかもしれない。 持ってきた水の消費も思ったより早く、このままではキャンプまで持たないかもしれないと不安がよぎる。

GPSユニットを見ると、キャンプまでまだ15キロ以上ある。 ずいぶん歩いたと思ったが、まだ7キロほどしか歩いていない。 それもそのはず、7キロは直線距離で、斜面を上がったり降りたりし、砂丘の中も歩いたりしたから、思った以上に疲れているのだ。 水を3リットル持ってきたが、半分は残すことを決め、立ち上がった。

取り敢えず、水があれば大丈夫。残り15キロと言っても、キャンプに近づけば慣れた道だから、それまでの辛抱だ、と自分に言い聞かせる。 ランチをとり終え、バックパックを肩に担ぐ。お昼の分が無くなっているから軽くなっているはずなのに、なぜかさっきよりも重く感じる。

これまでの泥岩の地層よりも少し下に下がって、斜面を歩いた。 同じような急な斜面だが、さらさらとした黄色っぽい砂が広がっている。 ずっと泥岩の風化したところを歩いていたと思っていたが、ここは砂岩の地層だ。 でも、みんなが遊離した歯や骨を見つけている砂岩層よりも、砂の粒が細かい。

よく見ると、その黄色い砂の中に、今まで見たことのないものがある。 白い砂だ。

恐竜発掘ー5

 少しずつその白い砂に目を近づけていくと、砂ではなく、風化して細かくなった骨のようだった。 手のひらに載せ、ルーペで見てみる。 間違いなく骨だ! この時は1人でうなった。 なぜこんなところに骨があるんだろう。

取り敢えず掘ってみようと、ハンマーとピック、ブラシをバックパックから取り出す。 砂と化した骨の周りをブラシで掃いてみると、さらに砂状の骨が出てくる。 そして次第に骨の粒の大きさが大きくなり、やがて骨の固まりが出てきた。 しかもその骨はどんどん大きくなっていく。 周りの石は軟らかく、簡単に掘り込むことができた。

1時間ほど掘り続けると、形があらわになっていく。 長細く、大きく湾曲している。掘り出した部分だけでも、長さ70センチ、幅5センチを超える。 それが恐竜の肋骨であることは簡単にわかった。

時計を見ると、午後2時を回っていた。 もうキャンプに戻らないとまずい。 取り敢えずこの場所をGPSユニットに登録して、更なる発掘は明日にしようと心に決めた。

埋め戻す前にもう1度、大きな肋骨を見つめる。 これまでの遊離した歯や骨とは様子が違う。 より流れが遅いところで保存された肋骨。 続きがあるかもしれないと、淡い期待が湧いてくる。 長居もできないので、さっさと道具をバックパックにしまい、肩に担ぐ。 同じバックパックが、さっきよりも軽く感じた。

恐竜発掘ー7-x

= 恐竜はなぜあの姿なのか? =

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​​​恐竜発掘ー3

◇◆ 第一回 恐竜化石は”歩いて探す” =1/2= ◇◆

恐竜化石は「歩いて探す」

恐竜化石の発掘調査に参加するモンゴル人は、ニックネームをつけるのが好きだ。 私もこれまで「ザラ」「ファルコンズ・アイ」「ウォークマン」の3つのニックネームをもらっている。

「ザラ」はモンゴル語で、ハリネズミのこと。どうも、私が頭を洗った後、髪の毛が逆立った様が、ハリネズミに似ているらしい。 自分ではわからないが、顔もそっち系なのだろうか・・・。

「ファルコンズ・アイ(ハヤブサの目)」は、私がよく化石を見つけることからつけられたニックネームだ。ただ、時によって、「イーグルズ・アイ(鷲の目)」や「ホークス・アイ(鷹の目)」と呼び名が変わったりするので、どの猛禽類かはあまり重要ではないようだ。

自分で言うのも変だが、確かによく見つける方だと思う。 その理由の1つに、身長の低さがあると私は考えている。国際調査になると欧米の研究者が参加するが、みんな背が高い。化石を発見するにはもちろん経験が必要だが、背の低い方が地面に目が近く、より多く化石を発見できる。

もう1つ私が心がけているのは、「人と同じところを探さない、同じ場所を通らない」ということだ。砂漠や山の中を探すとき、人はどうしても楽な道を求め、同じようなところを歩く。 そんなところには、宝(新しい化石)は落ちていない。 人の歩いた形跡のないところ、つまり、歩きづらいところを敢えて歩き、化石を探す。

キャンプから化石を探しに歩いていき、1日過ごした後、元来た道をたどって帰る人が多い。 確かに楽だが、せっかくのチャンスを無駄にすることになる。 どんなに疲れていても、敢えて違う道を歩くように心がけ、常に化石を探す。

最後の「ウォークマン」は、ポータブルオーディオプレーヤーのことではない。 私がよく歩くことから「歩く人」という意味でつけられた。 どれだけの面積をカバーできたかで発見する化石の数が決まると思っているので、とにかく歩いて、広い表面積に目を通す。

恐竜発掘ー4

 新しい化石産地に行ったときには、「必ずここに恐竜化石はある」と考える。そして「とにかく人が歩かないところを歩き、なるべく広い面積をカバーする。そうすれば見つかるのは当たり前」と信念を持つ。

しばらく探して化石が見つからないと、たいていの人はあきらめモードに入ってしまう。しかし私は違う。 むしろワクワクしてくる。そもそもそこに「恐竜化石がある」ことを前提にしているので、見つからなければ見つからないほど、まだ目を通していない残された土地に恐竜化石の埋もれている確率が、相対的に上がることになる。 次の1歩で見つかるかもしれないと、ワクワクするのだ。

「全身骨格」を探して

モンゴル南部に広がるゴビ砂漠。 そこに、ヘルミンツァフという恐竜化石の産地がある。 2008年9月、ある日の朝9時、私はそこに立っていた。

「ここで降ろして。キャンプから22キロ離れているから、ここから歩いて帰るよ」

キャンプから歩いて化石を探すと遠くのエリアが探せないと考えた私は、早朝に車でできるだけ遠くに連れて行ってもらい、そこから歩いてキャンプに帰ることに決めた。 正直、ちょっと遠いかなと思ったが、1日あれば帰れる距離だと思った。

調査を始めて1週間が経っていた。キャンプ地の周りはある程度目を通していたし、調査を共にしている他の研究者と鉢合わせが多く、新しいものが見つかるような気がしなかった。 その証拠に、この1週間、みんなが見つけるのは、元々つながっているはずの骨格から遊離してバラバラになった、歯や骨の化石ばかりだった。

全身骨格なんて出る気配すらなく、みんな落胆していた。 これは、もっと違う場所を、違う目線で探さなければと、ひそかに考えた。

私はこの時、なぜ見つかるのは遊離した歯や骨だけなのかと、自分に問い続けていた。 一緒に参加している研究者の動きを思い返してみると、みんなは歩きやすい平坦な砂岩の上をひたすら探していた。

小林快次ー2

=大恐竜展・ゴビ砂漠の驚異=

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現代の探検家《小林快次》 =01=

○◎ Great and Grand Japanese_Explorer ◎○

【この企画は“Webナショジオ・連載/日本のエクスプローラー”に追記補講した】

Ӂ 世界中を飛び回り、恐竜の姿を求める / 小林快次 Ӂ

​​​小林快次-4

◇◆ 小林快次、“恐竜の謎”を突き止めた男 ◇◆

最初の化石発見から半世紀の間、謎に包まれてきた恐竜デイノケイルス。

2014年、ついに全貌が解明。

その一翼を担ったのが日本の恐竜学者、小林快次だ。

  恐竜学者の小林快次が初めてデイノケイルスの実物化石を見たのは、2001年、フィンランドのヘルシンキで開催されていたモンゴル化石展でのことだった。当時、博士課程の大学院生だった小林は、その時のことをこう語る。

「とにかく大きい、というのが第一印象です。一目見て、これは間違いなくオルニトミモサウルス類だと確信しました」

オルニトミモサウルス類は、ティラノサウルスなども含まれる獣脚類の恐竜のうち、「ダチョウ恐竜」といわれる一群の恐竜である。小さな頭に長い首、ほっそりとした長い後肢という、ダチョウに似た体つきの二足歩行をする恐竜で、足が速かったと考えられている。

オルニトミモサウルス類の数少ない専門家である小林は、デイノケイルスの肩と前肢の化石に、オルニトミモサウルス類に共通する特徴を見いだしていた。
「しかし、問題もありました。オルニトミモサウルス類にしては、大き過ぎた」

恐竜発掘ー1

新たな化石発見でデイノケイルスの正体に迫る

当時、デイノケイルスの分類には、さまざまな仮説があった。たとえば、小林の師の一人、カナダ・アルバータ大学のフィリップ・カリー教授は、大きな前肢をもつテリジノサウルスの仲間ではないかと考えていた。「オルニトミモサウルス類と似ている部分は多かったが、断言するには材料が足りなかった」と、小林は振り返る。

デイノケイルスの謎の解明が大きく進展したのは、2006~10年。モンゴルのゴビ砂漠で、国際チームによる恐竜化石の発掘調査が行われた。フィールドでよく化石を発見するという定評がある小林は、毎年の発掘シーズンにはこの調査に参加し、オルニトミモサウルス類をはじめとする獣脚類の研究を担当した。

この一連の調査で、1965年に発見されたデイノケイルスの化石の発掘地点を特定することについに成功。さらに幸運なことに、2006年と2009年に待望の新たな骨格化石が2体発見されたのだ。最初に発見された化石と合わせると、デイノケイルスのほぼ全身の骨格が得られ、オルニトミモサウルス類であることが明らかになった。研究成果は2014年10月、英科学誌「ネイチャー」に発表され、世間を驚かせることになる。

恐竜発掘ー2

 さて、彼はNHKが放映した≪『恐竜vsほ乳類 1億5千万年の戦い』 NHK「恐竜」プロジェクト(高間大介・植田和貴)≫の監修を行ったが、National_Geographic_Journalniに長期間のフィールドワークを記載している。

 2015年1月19日の第一回より、今年3月の第12回投稿(各回の平均4節)まで年に3~4の長期連載である。 この“恐竜化石フィールド日誌”を紹介しよう。

毎年4、5カ月かけて、恐竜化石を産出する世界各地のフィールドを飛びまわり、新たな恐竜化石を探しつづける小林快次さん。 でも、そもそも恐竜化石の発掘調査とは、どんなことをするのでしょう? フィールド調査の様子を中心に、最新の恐竜研究の動向など、幅広く彼は語っている。

小林快次ー0

= プロフェッショナル・恐竜学者/小林快次 =

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