睡眠の都市伝説の真意 =182=

☆彡 睡眠の都市伝説を斬る =三島和夫・睡眠研究者= 彡☆

【この企画は“Webナショジオ・連載/睡眠の都市伝説を斬る”に追記補講した】

 眠症に効果あり? 睡眠アプリの秘密・・・ =2/2=

​​睡眠研究=1

日中に何か失敗して、それが不眠とは直接関係なくても「原因はすべて不眠」と誤った関連づけをするようになり、「不眠だから何も出来ない」「眠れさえすれば……」と何かにつけて不眠を悪者にし(過度の一般化、責任転嫁)、そのためぐっすり眠ることに過大な期待を抱くようになる。

不眠症になる前はせいぜい7時間程度の睡眠でやり繰りできていたのを忘れ、「8時間以上眠るべき」など目標設定を高くしてしまい(べき思考)、それなりに眠れた夜であっても一回でも夜中に目を覚ますと「ぐっすり以外は全然ダメ」と断定してしまう(全か無か思考)など、考え方が極端になってくる。

そのため、早い時間帯から寝床に潜り込む、長時間ベッドへしがみつく、睡眠薬を多めに服用してしまう、など行動面でも歪みが生じてくる。 このような睡眠習慣が不眠症をむしろ悪化させることは前記載「“青木まりこ現象”からみた不眠の考察」でご紹介した。

CBT-Iで治療するのはこれら認知や就床行動の「歪み」である。 CBT-Iは認知療法と行動療法に分けられるが、まず認知療法として、先に紹介したような本人が気づいていない睡眠や不眠症に対する考え方、とらえ方の歪みを指摘し、思考のバランスをとれるように指導する。

患者さんによって認知の仕方が大きく異なるため、認知療法を行うには聴き取りやフィードバックを何度も繰り返す必要がある。 これはアプリにとっては非常にハードルが高く、かなり作り込まなくてはならない。 ソフトだけでは対応しきれず、一部人力を投入する必要が生じることもある。 人工知能や機械学習を応用する試みもされていて、今後が楽しみな領域ではある。

一方で、行動療法では、睡眠日誌に日々記録してもらった就床時刻、起床時刻、自分で感じる睡眠状態、日中の調子などの情報を解析して、その人にとって最適な睡眠スケジュールになるよう分単位で徐々に調整していく。

アプリにしやすいのはこの行動療法の部分と考えられている。いや、「いた」。 スマホに睡眠や体調の記録を残してもらえれば、一定のアルゴリズムにしたがって睡眠スケジュールの指導がオートマチックにできるように思われたからである。

ところが、先にも紹介したように多くのアプリでは期待に反してなかなか効果が出ないのである。 最近日本で作成されたCBT-Iアプリがあり、その検証試験に私も参加したのだが、アプリを使用した患者グループでは不眠症状は改善したものの、効果が比較的小さく、不眠に関する一般的な知識のみを画面上で読んでもらった対照患者グループとの間に統計的な有意差がみられなかった。

Sleepioとの違いはどこにあるのだろうか? まだ理由ははっきりしていないが、個人的には「癒やされ感」だと考えている。

例えば、英国で開発されたSleepioでは、可愛らしいキャラの博士と愛犬がアプリ中に登場し指導してくれる。 インタラクティブ感(対話、交流している感じ)が強く、くじけそうになった時、不安な時に、大いに支えになっていることは間違いない。 このようなキャラ作りや役回り設定は、アプリ作成に要した努力の過半を占めるのではないかとさえ思う。 研究者やプログラマーだけでは無理で、デザイナーなどアート系の人材も投入されているのだろう。

考えてみれば人が行うCBT-Iでは認知や行動上の指導もさることながら、治療者による「受容」や「共感」も効果を発揮するための大事な要素となる。 治療理論に従った指導も大事だが、「指示通りに睡眠を調整するのは大変だったでしょう」「多くの人は一度や二度は失敗してしまうんです」「くじけず一緒に頑張りましょう」という言葉が癒やしになる。

先日、認知症関係の学会に参加したとき、介護ロボットに関するシンポジウムがあり聴講してきた。周囲に全く無関心であったり、攻撃的であったりなど、キャリアのある介護士さんでも対応に苦慮していた認知症患者さんが、可愛らしい人型ロボットやアザラシ型ロボットによって癒やされ、劇的に改善する事例が紹介されていた。

確立された理論やスキルだけでは不十分。 時には優しいまなざしやつぶらな瞳が口ほどにものを言うことがある。 懲りずに進めている現在開発中のCBT-Iアプリは「癒やし」の壁を乗り越えられるだろうか……。

睡眠研究=2

=資料・文献=

iPhone/android|人気の睡眠を快適にするアプリ (2/2)

これも枕元にスマホを置いて寝るだけで睡眠時間や眠りの深さを記録してくれるアプリです。途中で目が覚めた回数や、就寝してから眠りにつくまでの時間まで詳しく分析する機能があるのがこのアプリの魅力です。このアプリはアラーム音を「スマホに自分でいれた音楽」「Sleep Meisterオリジナルサウンド」「バイブレーション」のいずれかから設定できます。また、このアプリの面白いところは、睡眠時の物音を録音する機能がついています。つまり、少し恥ずかしいですが、寝言やいびきがきけちゃうということです。

アラームクロックスリープサウンド : 44種類のヒーリングミュージックにて自然な眠りと気持ちの良い目覚めをを促す、20代女性に人気のアプリです。 眠るため「瞑想」と起きるため「覚醒」という2種類のプログラムがあり、紫色の画面に月と太陽という背景が神秘的ですね。どんな気分になりたいか、音楽を選択して脳波を刺激することで、ベストな状態の脳波で目覚めることができます。勉強や仕事に集中したい!というときの為の脳波も用意されているので普段リラックスしたい時にも使えるアプリです。有料版は840円ですが初めてお使いになる方は無料版から試してみると良いでしょう。

究極の眠れるアプリ : 販売累計40万枚突破の「究極の眠れるCD」のアプリ版です。このアルバムの制作者がiPhone向けに、そのエッセンスを凝縮してアプリ用に作られました。「1/fゆらぎ」という成分がミックスされているようです。「1/fゆらぎ」は、例えば川のせせらぎ音や自然界の現象の中に含まれています。この成分の入ったサウンドによってリラックス・和み・心地よさが私たちにもたらされることで、やさしい眠りに誘い、快適な朝が迎えられる仕組みとなっています。また、真っ暗な部屋でもほのかな明かりを発し続ける常夜灯機能も付いています。

説明は省略するも、東京西川の睡眠アプリ / Sleep as Android / MUJI to Relax / 添い寝カレシ-添い寝羊CD- / 安眠ひざまくら~就寝5分前の癒しタイム~ / 眠りの為の処方箋 / ユメミール 等々のアプリをダウンロードできる。

一番大事なのは、「ゆっくり睡眠時間をとり、生活リズムを整える」ということです。寝付けない理由として、生活リズムが乱れている可能性があります。昨日は早く寝たけど、今日は2時…等日によって眠る時間が変動していると質の良い睡眠が取れなくなってしまいます。毎日大体同じ時間に寝るように心がけることが大切です。 肌のターンオーバーは22:00~2:00の間に行われますから、この間にできるだけ多く眠れるようにできればいいですね。また、睡眠時間は最低でも5時間以上、できれば6~7時間程睡眠時間とりましょう。

睡眠研究=3

=== 続く ===

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睡眠の都市伝説の真意 =181=

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 眠症に効果あり? 睡眠アプリの秘密・・・ =1/2=

​​睡眠研究=1

今回は睡眠アプリ開発の苦労話をしたい。 睡眠アプリは文字通り睡眠に関する情報や快眠スキルを与えてくれるソフトのことで、スマホ用アプリだけでもかなりある。 睡眠の質を測定できる、睡眠サイクルを最適にして起きやすくなる、睡眠リズムを整える、イビキの測定など機能もさまざまだ。

科学的にかなり怪しいアプリも少なからず含まれているが、結構人気があるらしく、何十匹目かのドジョウを狙って私の所にも睡眠アプリの共同開発の話が時折舞い込んでくる。 それはさておき、今回取り上げるのはそのような怪しげなモノではなく、医学的に確立されている治療理論に基づいた不眠症用の認知行動療法アプリである。

認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy; CBT)は、うつ病、不眠症、パニック障害、薬物依存、摂食障害などさまざまな精神疾患に効果があり、不眠症用のCBTは for Insomnia を付けてCBT-Iと呼ぶ。ただし十分な効果を出すには、治療者側にも相当の知識、訓練、経験が必要である。 医師や臨床心理士など医学知識のある人間でも一人前になるのに苦労するのに、果たしてアプリにCBT-Iができるのか?

そのような疑問を持たれる方も多いと思うが、まだまだ改善の余地はあるとはいえ、国内外のCBT-Iの専門家がしのぎを削って開発に取り組んでおり、かなりデキのよいものが登場している。

例えば英国のグループによって開発された有名なアプリ(Sleepio)は、不眠症の患者さんを対象にした臨床試験でとても良い成績を収めている。寝付きにかかる時間や夜中の目覚め時間が約60%も短くなり、結果的に日中の体調も大幅に改善したという。これは熟達した治療者ほどではないが、標準的な治療者のCBT-Iや睡眠薬と同等の効果である。

オーストラリアで開発されたアプリもなかなかパワーがある。不眠に悩む人を対象に効果を試したところ、不眠だけではなく抑うつ症状の改善も認められている。慢性不眠はうつ病に先立って出現することが多く、よく眠ることでうつ病の発症リスクを抑えることもできる。そのため、将来的にはうつ病の予防プログラムにCBT-Iアプリを利用できるかもしれないと期待されている。

これら試験は公的機関に登録され、厳密な手順を踏んで行われており結果の信頼性が高い。ただし、残念ながらSleepioもオーストラリアのアプリも日本語版はなく、日本人でも効果が出るかは未知数ではある。

さて、最初に成功例を取り上げたが、その他の多くのCBT-Iアプリは開発途上か、出来上がっても期待していたほどには効果が出ないものが多い。使われている治療理論は概ね同じだが、効果に差が出てしまう原因はどこにあるのだろうか。

その説明のために、CBT-Iについてもう少し詳しく説明しよう。

CBTとは、患者さんの物事(心配事)に関する認知や行動に働きかけて気分や不安を緩和する心理療法の一種である。認知とはその人に特有な物事の受け取り方や考え方のことで、精神的なトラブルを抱えると認知の「歪み」が生じやすい。

例えば、毎晩のように不眠で悩んでいる人であれば、「眠れず苦しかった」「まんじりともせず過ごした」という体験を積み重ねるうちに、就寝時刻が近づいてくるだけで頭の中に「今夜もどうせ眠れない」という考えが次々と浮かんで頭から離れなくなる。これは自動思考と呼ばれ、認知の歪みの一種である。

その他にも、イライラや不安が強くなり、「こんな気分で眠れるはずない」「どうせ今回処方された睡眠薬も効かないだろう」と決めつけてしまう(感情的きめつけ)。

睡眠研究=2

iPhone/android|人気の睡眠を快適にするアプリとその仕組み(1/2)

疲れ切って帰ってきたものの、なかなか寝付けない… ・眠れたものの、なんか疲れが取れない… ・変な夢にうなされる… ・朝起きるときいつも体がだるい… と感じる方は、良質な睡眠がとれていない可能性があります。このような悩みをお持ちの皆さんには、スマートフォンで手軽にインストールできる「睡眠アプリ」を使ってみることをお勧めします。 睡眠アプリは、癒しサウンドを流すことで快眠を促すものや、利用者の睡眠サイクルを察知してアラームで起こしてくれるもの、そしてさらに、自分の夢までコントロールできちゃう最新アプリなど数多くの種類があります。

睡眠アプリは、眠りに入るときに心地よい自然の音やサウンドを流すことができたり、自動で自分の眠りの深さをグラフに記録してくれます。 そして、その記録で浅い眠りの時にアラームを流して起こしてくれます。 これは、加速度センサーによって「寝返り」等の動きを感じ取ることで、睡眠の深さを測定しています。そして、その眠りが浅い時にアラームが流れるので気持ちよく起きられます。このような仕組みになっているので、枕元に画面を下にして置いておくだけで自分の睡眠状態が分かってしまうという訳です。脳の中を具体的に測っているわけではないので多少の誤差はありますが、「寝返り」はノンレム睡眠(深い眠り)とレム睡眠(眼球運動を伴った浅い眠り)の移行時と密接な関係がありますから、十分効果は期待できます。

睡眠アプリは数多くあります。これらの中から使いやすく、眠るのが楽しくなりそうなアプリを選んでまとめました。

快眠サイクル時計 : 枕元にスマートフォンを伏せて眠れば、子守歌のような心地よいサウンドにて快眠サポートをしてくれます。毎日の睡眠状態がグラフで分かりやすく記録され、自分がどのくらいよく眠れているのかが一目瞭然です。寝入りの時に流せるヒーリングミュージックは全20曲あります。そして、眠りの浅い時を狙って柔らかいアラーム音で目覚ましを鳴らしてくれるので、朝が弱い方も気持ちよく起きることができます。青色のデザインによって落ち着いた気分になれます。

睡眠研究=3

=== 続く ===

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睡眠の都市伝説の真意 =180=

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 朝ごはんで体内時計をリセットはウソ =2/2=

睡眠研究=1

 同調因子に共通した特徴は、睡眠リズムだけではなく、自律神経やホルモン分泌リズムなど質の良い睡眠を保つために必要なさまざまな生体リズムの時刻を全部まとめて動かすことができる点にある。

その意味で、睡眠だけを誘発する睡眠薬やお酒とは根本的に作用が異なる。睡眠薬やお酒の作用はその晩限りで、翌朝には消えてしまう。 体内時計の時刻は遅れたままなので睡眠薬やお酒をやめれば再び寝起きは悪くなる。 真の意味で「早寝・早起き」が楽になるわけではない。

本当に朝ごはんも同調因子として働くのであれば、毎日朝ごはんを食べることで夜中に普段よりも早い時間帯から脳の温度(深部体温)が低下したり、催眠作用を持つメラトニンの分泌が始まるなどして、結果的に早寝早起きが楽になるはずである。

ところが残念ながら、先にも紹介したように、ごく最近になり欧州の研究グループがこの課題に取り組んだ結果、食事時刻を変えても体内時計の時刻を全く動かすことができなかった。 つまり、早寝早起きをすれば朝ごはんを食べられるが、朝ごはんを食べたからといって体内時計が朝型になって早寝早起きが楽になるわけではないということである。

え? でも実際に朝ごはんを食べるようになってから子どもが早寝早起きできるようになったって。

それは朝ごはんが体内時計に働きかけたのではなく、早寝早起きによって光の浴び方が変わったためだと思われる。毎日朝食を摂るように心がければそれまでよりも早起きをしなくてはならず、体内時計を朝型にする朝日をより多く浴びるようになる。

また早起きした分だけ早寝をするようになり体内時計を夜型にする夜間照明を浴びる時間も短くなる。 結果的に、生体リズムの時刻が全体的に早まった結果、以前よりも早寝早起きが楽になったのだろう。

ちなみに、「朝型勤務がダメな理由」第25回「朝型勤務補講:朝型夜型って何?」でも解説したように、すべての人がこのように事がうまく進むわけではない。 体質的に夜型傾向が強い人は頑張って早寝早起きをしてもなかなか体内時計の時刻が早まらず、寝起きが楽にならないばかりか早起きした分だけ睡眠不足になることすらあることは再度強調しておきたい。

さて、これまでご紹介したように、朝ごはんには生体リズム全体の時刻調節をするパワーはないのだが、「体の末梢時計」の時刻調節ができることが知られている。 末梢時計とは何だろうか?

体内時計には環境光でガッチリ調節される親時計(脳の視交叉上核)と、親時計から指令を受けて間接的に24時間に同調している子時計がある。 この子時計が別名、末梢時計と呼ばれている。

末梢時計は皮膚や内臓、免疫細胞など体内の大部分の細胞で働いており、様々な生体機能のリズムを作り出している。 食事は少なくとも一部の末梢時計の時刻調節をする作用を持っているのである。 特に腸や肝臓など消化器系の細胞は食事の影響を受けやすいとされている。 これらの知見を踏まえて、私が理解する「早寝・早起き・朝ごはんで睡眠リズムを整えよう!」を効率的に実施するコツはこうだ。 「早起き」しても薄暗いリビングでボーッとしていてはダメ。起きたらカーテンを全開にして朝日を浴びる。そして夜型光である夜間照明は控えめにすることが「早寝」につながる。

夜型生活をしている子どもは食欲がなくて朝ごはんを抜かしがち。 即効性はなくても、朝ごはんには胃腸の活動リズムを徐々に朝型生活に合わせてくれる効果がある。最初は軽食でも良いので学校に行く前に何か口に入れよう。 徐々に朝から食欲が湧くようになるだろう。

朝ごはんには血糖を上げて意欲や集中力、持久力を高める効果もある。活発に運動もできるようになるし、居眠りせずに集中して授業を受けられる。 ほどよい疲労と眠気が蓄えられ睡眠の質の改善につながるだろう。 これらは体内時計を介した作用ではないが、結果的に早寝・早起きを後押しする。

食事(カロリー、栄養素)の摂取が体内時計にどのような影響を及ぼすか、また逆に、体内時計の影響で同じ食事でも影響がどのように異なるかなど、栄養学を時間生物学的な視点から研究する学問を「時間栄養学」と呼ぶ。

脂肪の代謝に関連するある種の時計遺伝子の活動に昼夜差があるために、「昼間よりも夜間に脂肪を摂取すると肥満になりやすい」などは時間栄養学の成果の一つである。 「朝ごはんが本当に体内時計を動かすのか」という今回の疑問は時間栄養学的にはとても重要なテーマなのである。

文部科学省の官僚と「早寝早起き朝ごはん」国民運動について話す機会があり、今回の話題を持ち出したのだが、食いついてきたのは「夜中の脂肪はヤバイ」という部分だけだったのは実に不本意であった。 夜中に焼き肉を食べながら話していたのでやむを得ないのだが。

睡眠研究=2

=資料・文献= 

生物時計(体内時計)の概日リズムは上記のように いくつも知られているが、特によく知られているのは日周の機構である。 動物・植物を自然環境から切り離し、時間帯で変化しない定常光のもとにおいても、動物の排出物質の濃度は日周リズムを示すものが多いことなどから動植物には時計機構が内在していることが判っている。 ただしその機構がどこにどのような形、しくみで存在しているのかについては詳しくは判っていない。

ただ、生物の体内の日周リズム機構は正確に24時間周期で動いているわけではない。 (多くの場合)少しずつ遅れる方向にズレている。 そういったわけで「サーカディアンリズム(circadian rhythm)」「概日リズム」と呼んでいるわけである。  自然界に生きている生物は、日照の有無による明暗、昼・夜があるので、それを用いて生物時計のずれを補正している。

生物の生命時計は環境の影響を遮断しても約24時間周期のリズムを継続できる。これはラットの実験で一定条件の温度、明るさのもとで温度や明るさの情報から時間を判断できないよう飼っても24時間周期の生活リズムが確認されている。

生物時計の機能は、生物時計を担う器官の一つ一つが保有しており、その内部で生成されるタンパク質が振り子の役割を果たしているが、細胞内の化学反応の一つ一つはせいぜい数分程度で終了する。 この振り子の役割を担うタンパク質は時計遺伝子が作りだしており、このタンパク質が増えると自分と同じタンパク質が増えすぎないよう、タンパク質を作る時計遺伝子の働きを抑制する。

すなわち、タンパク質が細胞内に増加してくればタンパク質が減少する方向に反応が進み、タンパク質が減少するとタンパク質は増える方向に反応する。 これを「負のフィードバック機構」という。 この働きにより、生物は細胞内のタンパク質が約24時間周期で増減(振動)することで時計の役割を果たしている。 この生命時計のメカニズムはカビからヒトまで真核生物に共通したものである。

睡眠研究=3

=== 続く ===

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睡眠の都市伝説の真意 =179=

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 朝ごはんで体内時計をリセットはウソ =1/2=

睡眠研究=1​​

「早寝・早起き・朝ごはんで輝く君の未来~睡眠リズムを整えよう!」 / 文部科学省が推進している「早寝早起き朝ごはん」国民運動のスローガンである(http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/asagohan/)。 ホームページには運動の主旨が説明されている。一部を抜粋引用する。

「子どもたちが健やかに成長していくためには、適切な運動、調和のとれた食事、十分な休養・睡眠が大切です。(中略)最近の子どもたちを見ると、「よく体を動かし、よく食べ、よく眠る」という成長期の子どもにとって当たり前で必要不可欠な基本的生活習慣が大きく乱れています。 こうした基本的生活習慣の乱れが、学習意欲や体力、気力の低下の要因の一つとして指摘されています」

子どもにとって「よく体を動かし、よく食べ、よく眠る」のが大事であることには誰しも異論が無いだろう。 ただし、それがナゼ「早寝・早起き」でなければならないのかというのは疑問だ。 それについては「眠気に打ち克つ力 その2 ―米国学会が若者に“寝坊のススメ”」で述べた通りである。

それはさておき、これまでしばしば「早寝早起き朝ごはん」に関する小学生向けの啓発冊子の中で、早起きすれば朝ごはんが美味しく食べられて健康によいだけではなく、「朝ごはん」自体に睡眠リズムの調節効果(早寝早起きを促す効果)もあると解説してあるのを読んで気になっていた。

「朝ごはん」「体内時計」「リセット」をキーワードにしてインターネットで検索しても、数多くのサイトがヒットし、タイトルだけ読み流すと夜型体質の人でも「朝ごはん」さえ食べれば体内時計が朝型に切り替わり、早寝早起きが楽になるかのように書かれている。

本当に「朝ごはん」にそのようなパワーがあるのだろうか? この問いに対する回答は易しくない。 食事は体内時計(生体リズム、概日リズム)に影響するのか、影響するとすれば体内時計のどのような機能を調節するのかという問いは学術的には奥深く難しいテーマで、現在でも侃々諤々のホットトピックなのである。結論から言えば、手間のかかる実験を行った結果、ヒトでは「朝ごはん」には明確な早寝早起き効果は認められないことが明らかになった。 つい最近のことである。

子ども向けに「朝ごはん」の効果を分かりやすく伝えたい気持ちは分かるが、科学的に証明されていないことを活字にして明記するのは如何なものか。 いささか大人気ないとは思いつつ、今回取り上げた次第である。 「難しい話はともかく、朝ごはんをしっかり食べれば、日中元気に過ごせて、夜もグッスリ眠れるのは当たり前なのでは?」 そう感じる方も少なくないと思う。

気持ちは分かるが、「朝ごはんに睡眠リズムの調節効果がある」という場合には、朝ごはんを食べることによって元気になり巡り巡って睡眠リズムが変わるのではなく、あくまで睡眠リズムを決めている体内時計に直接働きかけて、楽に早寝早起きができるようになるということを意味している。

「睡眠研究のための“異時間空間”「隔離実験室」」でも触れたが、1日当たり10分程度ずれていく体内時計を日々24時間リズムに合わせる(同調させる)のすら結構大変で、そのために絶対的パワーを発揮しているのは「光」である。 体内時計時刻の調節作用を持つものは同調因子と呼ばれ、光以外では運動やある種のホルモンも時刻調節作用を持つとされるがその作用は光に比べて弱い。

睡眠研究=2

=資料・文献= 

生物時計(physiolosical clock)とは、生物が生まれつきそなえていると考えられる時間測定機構。 体内時計生理時計とも言う。 生物の睡眠や行動の周期に影響を与える。 哺乳類では脳の視交叉上核によるとみなされている。 よく知られた生物時計に概日リズムがある。

生物時計は、生物が生まれつきそなえていると思われる、時間を測定するしくみのことである。 生物時計は通常、人の意識に上ることはない。 しかし睡眠の周期や行動などに大きな影響を及ぼしており、夜行性・昼行性の動物の行動も生物時計で制御されている。 例えば食餌の前に胃酸や分解酵素があらかじめ準備されるが、これらも生命時計によるもので、生命時計は個体の能力を最大限には発揮させるに不可欠なものである。

また、昆虫では活動時間に時間差をもたらすことで限られた空間を共有し、同種の異性との出会いの機会を増やすなど動物の生存にとって重要な「時間的住み分け」と「行動の時間配分」を行っていると言うー岡山大学・富岡憲治教授―。

鳥が渡りをする時に太陽の位置を見て方角を定めることができること(太陽コンパス)などからも生物時計が確かに存在していることが知られている。 他にもミツバチが外界から隔てられ日の光も入らない巣の中で仲間に蜜の方向を仲間にダンスで知らせる方法も、その時刻での太陽の方角を規準にしているので、そこにも時計機構が介在していると想定されるのである。 また、植物の花・芽の形成が日長に支配される現象も、時計機構と密接な関係がある。

生物時計はいくつも知られているが、たとえばサーカディアンリズム(概日リズム)、光周期性光周性)などがある。 周期は短いものから長いものまで様々あり、短い周期のものでは、酸化還元補酵素の還元度の周期変化による秒・分単位のもの、また心臓の拍動、脳波、などがあり、周期の長いものでは、鳥の渡り・魚の回遊・植物の開花などに見られるように季節単位(年単位)のものもある。 だが周期性のものだけでなく、一定時間の経過だけを示す「タイマー型生物時計」(砂時計型生物時計)と呼ばれるものもあることが知られている。

睡眠研究=3

=== 続く ===

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睡眠の都市伝説の真意 =178=

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その寝ぼけ行動、認知症の始まりかも・・・・・ =2/2=

​​睡眠研究=1

レビー小体型認知症では、脳内の神経細胞内にあるα-シヌクレインというタンパク質の固まりが異常に蓄積して神経変性(細胞死)をもたらす。 このα-シヌクレインは脳内のさまざまな部位に蓄積するのだが、脳の「下から上に向かって」蓄積することが症状の出現順序に関連しているのではないかという仮説が提唱されている。

その仮説によれば、まず脳の下部にある嗅球と脳幹部にα-シヌクレインが蓄積して細胞を障害する。 嗅球が障害されると嗅覚異常が生じ、「オフスイッチ」がある脳幹部が障害されるとレム睡眠行動障害が出現する。 実際、認知症を発症していないレム睡眠行動障害の患者さんの脳を死後に調べると脳幹部にα-シヌクレインが蓄積していることが確認されている。

次いで、蓄積が脳の真ん中辺りにある中脳に拡がり、体の動きをコントロールする神経伝達物質ドーパミンを産生する部位が障害されるとパーキンソン症状が出現する。 最終段階で大脳皮質など脳の「最上部」に幅広く蓄積すると中核症状が明らかになるというわけである。 今では、α-シヌクレインの蓄積によって神経が変性死するレビー小体型認知症やパーキンソン病、そのほかいくつかの神経疾患は、共通した病因を持つ疾患としてα-シヌクレイノパチーと総称されている。

α-シヌクレインが脳の「下から上に向かって」蓄積するという仮説の真偽は検討されている最中だが、臨床特徴ともよく合致するため幅広く受け入れられている。

この仮説が正しいとすれば、パーキンソン病と同様に、レム睡眠行動障害もまたレビー小体型認知症と親戚のような関係にあるとも言える。 ただ、レム睡眠行動障害の患者さん全員がα-シヌクレイノパチーを発症するわけではないので、レム睡眠行動障害にもα-シヌクレインの蓄積が原因のものとそれ以外のものがあるようだ。 ただし残念ながら、現在の脳画像や血液検査などの診断技術では両者の区別は難しい。

そのため、レム睡眠行動障害と診断された患者さんは将来的にα-シヌクレイノパチーを発症するのではないかととても不安になる。実際のところ、レム睡眠行動障害に罹るとその後どのくらいの確率でα-シヌクレイノパチーを発症するのだろうか。 また、レム睡眠行動障害が出現してからα-シヌクレイノパチーの発症までにどれくらいの期間がかかるのだろうか。

いくつかの長期調査が行われているが、非常に厳しい結果が出ている。レム睡眠行動障害を発症してから5年後には患者さんの15〜30%、10年後には40〜70%、10年以上では50〜90%が何らかのα-シヌクレイノパチーを発症すると報告されている。 数値に幅があるのは調査によって結果が異なるためである。

これらの調査は主に欧米の研究施設で行われたもので、重症例が集まったため厳し目の結果が出ている可能性がある。 実際、日本国内での診療場面ではもう少し発症頻度が低いようだとの指摘もある。 とはいえ、中長期的にα-シヌクレイノパチーが現れてこないか慎重な経過観察が必要であることには違いがない。

そのためにも、悪夢を見て大声を上げたり手足をばたつかせるなどレム睡眠行動障害を疑わせる症状が何度も出てきたときには専門の医療機関に受診して正しい診断を受けていただきたい。 定期的な診察を受けることで早期発見も可能となる。 レム睡眠行動障害を目撃した家族は「いい年をして寝ぼけてる」などと笑い飛ばすこともあるが、レビー小体型認知症の危険信号の場合もあるので注意が必要なのである。

オノ・ヨーコさんがレビー小体型認知症を患っていることは悲しいことだが、有名人が闘病していることをカミングアウトしてくれることで人々の関心が集まり研究分野が活発になることも少なくない。 レム睡眠行動障害とα-シヌクレイノパチーの関係についての研究はまだ歴史が浅いため、今後の研究の進展に期待したい。

睡眠研究=2

=資料・文献= 

程度や発生順序の差はあれ、全ての認知症患者に普遍的に観察される症状を「中核症状」と表現する。 「中核症状」は記憶障害と見当識障害、認知機能障害(計算能力の低下・判断力低下・失語・失認・失行・実行機能障害)などから成る。 これらは神経細胞の脱落によって発生する症状であり、患者全員に見られる。病気の進行とともに徐々に進行する。

主な症状としては幻覚(20-30%)、妄想(30-40%)、徘徊、異常な食行動、睡眠障害、うつと不安(40-50%)、焦燥、暴言・暴力(噛み付く)、性的羞恥心の低下(異性に対する卑猥な発言の頻出など)などがある。 発生の原因としては中核症状の進行にともなって低下する記憶力・見当識・判断力の中で、不安な状況の打開を図るために第三者からは異常と思える行動におよび、それが周囲との軋轢を生むことで不安状態が進行し、さらに症状のエスカレートが発生することが挙げられる。

「中核症状」が進行すると「周辺症状」となる。 「周辺症状」は前述の中核症状と違い一定の割合の患者に見られ、必ずしも全ての患者に同一の症状が見られるとも限らない。 またその症状は上記のもの以外にも非常に多岐にわたり、多数の周辺症状が同時に見られることも珍しくない。 中核症状が認知症の初期・軽度・中等度・重度と段階を踏んで進行していくのに対し、周辺症状は初期と中等度では症状が急変することも大きな特徴である。 初期では不安や気分の沈みといった精神症状が多く、中等度になると幻覚や妄想などが発現する。

かつては中等度になると激しい症状が現れ、患者は日常生活を行う能力を急速に喪失してゆき、周辺症状の発現と深刻化によって家族などの介護負担は増大の一途を辿るため、「周辺症状=中等度」との固定観念が存在したが、現在では軽度でも一定の症状が発生することが分かってきたため、その固定観念の払拭と、より原因に着目した表現としてBPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia:行動・心理障害)が用いられるようになった。

睡眠研究=3

=== 続く ===

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睡眠の都市伝説の真意 =177=

☆彡 睡眠の都市伝説を斬る =三島和夫・睡眠研究者= 彡☆

【この企画は“Webナショジオ・連載/睡眠の都市伝説を斬る”に追記補講した】

その寝ぼけ行動、認知症の始まりかも・・・・・ =1/2=

​​睡眠研究=1

今年4月に、故ジョン・レノンの妻オノ・ヨーコさんがレビー小体型認知症に罹患しているようだという記事が週刊誌に載った。 御年84歳とのことなので認知症に罹患しても不思議でない年齢ではあるが、珍しい病名に目を奪われた読者も多かったと思う。

認知症とは、物忘れがひどくなる「記憶障害」、時刻や自分のいる場所が分からなくなる「見当識障害」、物や言葉などが分からなくなる「失認」、着衣などができなくなる「失行」など、さまざまな認知機能の障害が生じる疾患の総称である。これらの症状は認知症の中核症状と呼ばれている。

認知症はその原因別に幾つかに分けられる。 最も多いのはアルツハイマー型で患者の約半数を占める。 次いで多いのがレビー小体型と脳血管性で、この3つで認知症の約8割を占める。 つまり、レビー小体型認知症は決して稀な疾患ではないのだが知名度は高いと言えない。

それには理由があって、レビー小体型は比較的最近発見された認知症だからである。 最近と言っても日本人研究者がその存在を最初に提唱してからかれこれ40年にもなる。ところが長らく欧米で認められず、1990年代に入ってようやく国際会議で診断基準が定められたという経緯がある。 私の学生時代(1980年代)の教科書にも載っていなかった。

そのレビー小体型認知症を本コラムで取り上げるのは、「レム睡眠行動障害」という特殊な睡眠障害が60%もの患者さんで認められるからである。 一般的には中高年の0.5〜1%でみられる程度なので、いかにレビー小体型認知症では高率に合併するかお分かりだろう。

レム睡眠行動障害とは何かというと、夢体験が夢の中だけに留まらず行動化してしまう睡眠障害である。 例えば、誰かと喧嘩したり、何物かに襲われたり、犬に噛みつかれそうになって蹴飛ばしたり、などの夢の内容そのままに、寝言で怒鳴ったり、手足を振り回したりしてしまうのである。

私たちは夢の大部分をレム睡眠中に見る(「夢はレム睡眠のときに見る」のウソ」)。 レム睡眠は睡眠段階の一つで、寝ついてから約90分〜120分おきに現れる。 レム睡眠中には大脳の活動は比較的活発で鮮明な夢を見ることが多いのだが、逆に体の筋肉は弛緩して全く動かない。

ナゼ、レム睡眠行動障害ではレム睡眠中に激しい体の動きが出てしまうのであろうか?

脳幹部と呼ばれる部位にはレム睡眠中に筋肉の動きをオフにするスイッチがあり、健康な人のレム睡眠中にはその「オフスイッチ」の作用で夢行動はおろか寝返りすらできない。 ところが、レム睡眠行動障害ではその「オフスイッチ」にトラブルが生じているらしい。

また、レム睡眠行動障害のほかにも、レビー小体型認知症では嗅覚異常や、手足の震えや筋肉が硬くなり動きが遅くなるパーキンソン症状がよくみられる。

しかも、レビー小体型認知症では、記憶障害などの中核症状が出現する何年も前から嗅覚異常やレム睡眠行動障害が出現することが多い。 パーキンソン症状も中核症状と相前後して、発症のごく早期から認められる。 アルツハイマー型など他の認知症でもパーキンソン症状やレム睡眠行動障害がみられることがあるが、かなり病状が進行してから出現するのが普通だ。 レビー小体型認知症でのこのような症状の出現順序は特徴的で診断にも大いに役立つ。

確かなことはまだ明らかにされていないが、これらの特徴はレビー小体型認知症の発症の仕組みとの関係が強く疑われている。

睡眠研究=2

=資料・文献= 

認知症は認知障害の一種であり、後天的な脳の器質的障害により、いったん正常に発達した知能が不可逆的に低下した状態である。 認知症は犬や猫などヒト以外でも発症する。 医学的には「知能」の他に「記憶」「見当識」を含む認知障害や「人格変化」などを伴った症候群。 これに比し、先天的に脳の器質的障害があり、運動の障害や知能発達面での障害などが現れる状態は知的障害、先天的に認知の障害がある場合は認知障害という。

従来、非可逆的な疾患にのみ使用されていたが、近年、正常圧水頭症など治療により改善する疾患に対しても認知症の用語を用いることがある。 単に老化に伴って物覚えが悪くなるといった誰にでも起きる現象は含まず、病的に能力が低下するもののみをさす。

日本ではかつては痴呆(ちほう)と呼ばれていた概念であるが、2004年に、まず行政分野および高齢者看護分野において「痴呆」の語が廃止され「認知症」に置き換えられた。 各医学会においても2007年頃までにほぼ言い換えがなされている。

認知症は70歳以上人口において2番目に多数を占める障害疾患である。 全世界で3,560万人が認知症を抱えて生活を送っており、その経済的コストは全世界で毎年0.5-0.6兆米ドル以上とされ、これはスイスのGDPを上回る。 患者は毎年770万人ずつ増加しており、世界の認知症患者は2030年には2012年時点の2倍、2050年には3倍以上になるとWHOは推測している。

現在の医学において、認知症を治療する方法はまだ見つかっていない。 安全で効果的な治療法を模索する研究が行われているが、その歩みは難航している。

睡眠研究=3

=== 続く ===

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睡眠の都市伝説の真意 =176=

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夜に増える転倒に、高齢者の一割が骨折 =2/2=

​​睡眠研究=1

睡眠薬の作用時間を過ぎているのにナゼ転びやすいのだろうか。 それは眠気が消えた後も、筋肉を弛緩させる作用や体の平衡機能を抑制する作用は続いているためである。 つまり、医師が説明する「睡眠薬の効果が長い、短い」とは催眠作用の持続時間のことであり、その他の作用(副作用にもなる)の持続時間とは異なるのである。

そのため、眠気がなくなっても、廊下を曲がる際にふらつく、筋肉が弛緩しているためよろめいた時に踏ん張りがきかない、つま先が上がらず段差に引っかかりやすいなど、転倒しやすい症状が出てしまう。 「睡眠薬の効果が切れた」と安心してはいけないのである。

睡眠薬による高齢者の転倒は以前から問題視されていて、最近開発された いくつかの新薬は服用後のふらつきがかなり抑えられている。 今後は睡眠薬による転倒が少なくなると期待されている。

では、睡眠薬をやめれば転倒は少なくなるのだろうか。どうやらそうは問屋が卸さないらしい。 不眠を治療しないでいると転倒の危険がむしろ高まるらしいのだ。 老人ホームに入所中の高齢者を対象にして転倒の有無を約6カ月間にわたり追跡調査した結果、転倒リスクが高い高齢者の順序は以下の通りであったという。

①不眠があるけど治療していない高齢者(不眠のない対照高齢者に比較して転倒リスクが1.6倍)
②不眠があり睡眠薬を服用しているけど治りきっていない高齢者(同1.3倍)
③不眠があり睡眠薬を服用して治っている高齢者(同1.1倍、対照高齢者と有意差なし)

つまり、不眠を治療せずに放置していることが最も転倒リスクが高くなることが分かったのである。 ちなみに、この調査では睡眠薬の服用だけでは転倒リスクは高くならなかった(図上段の睡眠薬ありとなしの比較)。 これは意外な結果で、今後も検証が必要だろう。ただ、従来の調査では不眠が治りきらず夜間のトイレ歩行が残っている患者が多く含まれ、睡眠薬のリスクを見かけ上引き上げていた可能性もある。当たり前だが、眠れるようになればトイレ回数も減り、転倒も少なくなる。 睡眠薬を使う必要がある場合には、特に治療初期の転倒に注意しながらキチンと使って不眠を治す方が安全のようである。

ちなみに、尿意があるから目が覚めるのか、目が覚めるから尿意を感じるのか、どっちなのですかと質問を受けることがあるが、実は明確な答えは出ていない。 トイレに行ってもさほど排尿量が多いわけではないのは事実である。 膀胱に尿を溜めておく力が弱くなっていること、高齢者では深睡眠が減るため軽い尿意でも目を覚ましやすいことなどから、どちらも関係していそうである。

私事ながら、4月のある夜に転倒して右手首(利き手)を骨折してしまい、1カ月以上も右腕にギプスを巻いた生活を続けている。 恥ずかしいので状況の詳細は割愛するが、寝ようと思い消灯してベッドに向かうわずか1mの床面にたまたま置いてあった「丸いモノ」を踏んづけて、バナナの皮で転倒する漫画の登場人物よろしく右手から派手に転んでしまった。

睡眠薬によく似た作用を有する市販の飲料を少量摂取していたことも影響していた可能性がある(参考:「寝酒がダメな理由」)。 まだ高齢者ではないが、「夜はアブナイ」と感じた次第である。みなさまもご注意ください。

睡眠研究=2

=資料・文献=

高齢者にとって一番危険なのは家の中? 転倒する原因はどこにある? 自分でできる「バリアフリー対策」って?

こうした家庭内事故は、ちょっと対策を講じるだけで危険度がかなり抑えられます。大がかりな工事をせずにできることばかりです。

転倒予防の一例としては、滑りやすいフローリング部分にウレタン製マットを敷くとか、毛足の長いじゅうたんは避けてラグマットを敷くとか、ラグマットがずれないよう裏面にテープを付けて固定するなど、どれも簡単ですよね。

また、転倒予防に効果的なグッズもいろいろ発売されていて、足元灯や滑り止めマットは100円ショップで、パネルマットやラグマット等はホームセンターで購入可能です。

その他、ベッドの近くに安定感のある椅子を置いて手すり代わりにするのもよいでしょう。 他にもスリッパによって段差につまずくこともあるので、普段身につけているスリッパを履かないということだけでも効果があるでしょう。

深刻な家庭内事故を未然に防ぐためにも、簡単なお手製バリアフリーは習慣にしたいものですね。

睡眠研究=3

=== 続く ===

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