補講・ネアンデルタール人 (7/7)

Ӂ 長期連載:探検的・冒険的行動で世界を視座するフィルドワーク Ӂ

【この企画はナショジオ記載文趣“古代文明・歴史・冒険・探検”にその背景を追記・補講した】

〇● 現生人類と共存していた時代、ネアンデルタール人の身に何が起きたのか ●〇

なぜ彼らだけが滅びたのか

そのヒントはDNAと歯に隠されていた

◇ 補講・ネアンデルタール人(Neanderthal) 7/7 ◇

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ネアンデルタール人進化と遺構

1999年にポルトガルで、そして2003年にルーマニアで発見された化石の骨格が新旧人双方の特徴を備えていたことから、新旧人の混血説を主張するグループが現われ、議論を呼んでいる。これに対して、ワシントン大のアラン・テンプルトンらは、従来のミトコンドリア遺伝子などの単一の部分だけを調査して決定づける方式ではなく、10か所の遺伝子を調査したところ、混血しているとの結果を導き出している。なお、ミトコンドリアDNAは母系のみで遺伝する。

ネアンデルタール人絶滅

ネアンデルタール人が絶滅したのは2万数千年前だが、その原因はよくわかっていない。クロマニョン人との暴力的衝突により絶滅したとする説、獲物が競合したことにより段階的に絶滅へ追いやられたとする説、ホモ・サピエンスと混血し急速にホモ・サピエンスに吸収されてしまったとする説など諸説ある。

従来、ネアンデルタール人は約3万年前に滅亡したと考えられていたが、2005年にイベリア半島南端のジブラルタルの沿岸の洞窟から、ネアンデルタール人が使っていた特徴のある石器類や、洞窟内で火を利用していた痕跡が見つかった。

この遺跡は、放射性炭素による年代分析で2万8000-2万4000年前のものと推定された。このことから、ネアンデルタール人は、少なくとも地中海沿岸からイベリア半島においては、しばらくの間生き残っていたと考えられる。これにより、「ネアンデルタール人は約3万年前に絶滅した」という説はわずかに修正されることになった。さらに、2014年8月20日、ネイチャー誌にネアンデルタール人の絶滅は4万年前であったとする最新の学説が掲載された。しかも4万5千年前から現在の欧州で現生人類と文化・技術的にも共存・交流しており、混血もしていたという。この説はこれまでの研究よりも絶滅時期がさかのぼるが、精度が高い分析を行ったと著者は強調している。

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テキサス大学アーリントン校の人類学者ナオミ・クレッグホーンは、コーカサス山脈や現在のイタリアにあたる地域で約4万年前に起きた複数の噴火が、絶滅の要因となったと説明している。環境的要因は以前より指摘されていたが、クレッグホーンによれば、複数の火山の噴火が続いた上に、ヨーロッパでは過去20万年間で最悪とされるフレグレイ平野(現在のナポリの近く)での大噴火 (cf. Campanian volcanic arc) が起きたことから、その多くがヨーロッパにいたネアンデルタール人は食糧不足に見舞われ壊滅的な打撃を受けた。しかし現生人類の多くは主にアフリカやアジアに住んでいたため、絶滅するほどの影響は免れたのだという。

現代人に受け継がれたネアンデルタール遺伝子(最新の研究による)

2010年5月7日のサイエンス誌に、アフリカのネグロイドを除く現生人類の核遺伝子には絶滅したネアンデルタール人類特有の遺伝子が1 – 4 %混入しているとの研究結果が発表された。これは、現生人類直系祖先であるホモ・サピエンスが出アフリカした直後すなわち12 – 5万年前の中東地域で、そこに既に居住していたネアンデルタール人類と接触し混血したこと、一方でアフリカ大陸を離れなかった現生人類はネアンデルタール人類と接触せず混血もしなかったことによる。すなわち、出アフリカ後の中東で混血しその後にヨーロッパやアジアなど世界中に拡がった現生人類は、約3万年前に絶滅してしまったネアンデルタール人の血を数パーセント受け継いでいることが明らかになった。

さらに2014年の研究では、ホモ・サピエンスがネアンデルタール人と混血したのは今から6万年くらい前のこととしている。ネアンデルタール人からの混入遺伝子は、現生人類の皮膚、爪、神形成などの繁殖に重要でない遺伝子部分に細分化されて多く残っており、白っぽい皮膚、金髪や赤毛、青い目などいくつかのコーカソイド的な特徴や、インフルエンザウィルス耐性などはネアンデルタール人から受け継いだ可能性が高いとしている。

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混血の子供は現生人類集団のみが育てたのか、すなわち絶滅してしまったネアンデルタール人に対する現生人類遺伝子の混入もあったのかどうか。これについては、ネアンデルタール人集団が短期間に消滅したためあまり分かっていないが、アルタイ山脈で発見され、2014年に解析されていたネアンデルタール人女性の再分析でそのDNAに現生人類のDNAが混入していたという2016年の発表もある。

また、ネアンデルタール人女性が交配して遺伝子が移入した場合はX染色体が比較的多く移入するはずであるが(女性がXXで男性がXYであるため)、そうなっていないためネアンデルタール人の男性と現生人類の女性の混血が多かったと想定されている。もっとも、現代に伝わるだけ大規模な混血であるので、数人規模の混血ではない。

また、シベリアのアルタイ山脈の遺跡で発見されたデニソワ人はネアンデルタール人の兄弟種にあたり、現生のアジア民族特にポリネシア人メラネシア人にはデニソワ人遺伝子も混入しているとの研究が、2010年12月に発表されている。ただし、この洞窟ではネアンデルタール人の人骨も発見されているため、別系統の人類とネアンデルタール人の混血の可能性を指摘する声もあることに留意する必要がある。また、2018年8月22日に科学誌「ネイチャー」に発表されたアルタイ地方デニソワ洞窟で見つかった9万年前の少女の骨のDNA分析結果は、この少女の母はネアンデルタール人で父はデニソワ人であるとしている。このようなネアンデルタール人、デニソワ人現生人類の間の遺伝子交換現象からは、兄弟種間の混血は通常のことであったとも考えられる。

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・・・・・つづく

・・人類の歴史 ホモエレクトス/ネアンデルタール人/ホモハビリス/ホモサピエンス・・

・・・・・人類700万年の歴史・・・・・

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