探究の地球学者《高井 研》 =082=

○◎ “私が知りたいのは、地球の生命の限界です”  ◎○

冥王代(約40億年前)から現在に至る地球と生命の共進化の解明をめざす=高井 研=

【原資:Webナショジオ“、高井研の対談集、高井研のブログ、等々より転載・補講】

Ӂ 自身のTwitterなどで“1031”(てんさい/天才)を使う宇宙生物学者 Ӂ

 082回   第5話 地球微生物学よこんにちは 

◇◆  人生最大の恐怖体験 =2/3=  ◆◇

21歳から研究の世界に足を踏み入れて以来、ごく当たり前のように常にボクの目の前にあった海の世界。ときには光り輝く太陽の下で美しく穏やかであり、そしてときには身体と精神を蝕むような猛威と憂鬱を見せる世界。そして、誰も見た事のない深海の宇宙のような広大さと奥深さ。そこに生きる驚くべき多様な生命。

海と全く断絶した砂漠の街での1年間の研究生活は、ボクがずっと前から、ココロの奥底から「海に魅せられて虜になっていた」ことを初めて気づかせてくれたんだ。

ボクの研究者としての成長はいつも海といっしょにあった。

その時ボクは、「JAMSTECに帰ったら、ボクの残り少ない青春をすべて、大好きな海の、深海の、研究に賭けよう」。そう誓ったんだ。

それは「青春を深海に賭けて」というこの連載のタイトルに込められた想いと言ってもいい。

そして・・・、折角のイイ感じのエピソードを紹介しておきながら、それなのに、なのに、最後にオチのエピソードを持ってこないといられない関西人なボクの性分が憎いぃぃぃ。

アレはもうJAMSTECに戻る事を決めた2000年の3月ごろだっただろうか。

その頃ボクは毎日のように、滞在中の研究成果をまとめるために夕飯を家で食べてから、研究所に戻って深夜の2時頃まで仕事をしていた。アメリカの大学や研究所では通常、掃除を請け負う清掃関係の人以外、誰も夜遅く仕事することはない。

その日も夜中の2時頃に仕事を終え、誰もいない研究所の玄関を出て、車に乗り込み帰ろうとした。研究所はたぶんイロイロ表沙汰にしたくないような研究もやっているはずなので、夜になれば車さえほとんど通らない人里離れた砂漠のど真ん中にある。

車をスタートさせた瞬間、なんとなくその日はふとイヤな気配がしたんだ。フロントガラス越しに暗闇の空を見上げた瞬間、ボクは凍り付いた。

ボクの車の上空数百メートルぐらいだろうか。映画「インデペンデンス・デイ」に出てくるような謎の巨大な物体が、色とりどりの無数のライトを点滅させながら、浮遊していたのだ!

いくらボクが矢追純一系UFO番組のファンだとしても、一応Ph.D.(≒博士号)を持ったプロフェッショナルな科学者だ。ガラスの反射や時間はずれの飛行機という可能性を疑うことは当然だ。冷静に車のスピードを上げて走り、目をシパシパさせて、前方の視界でネガティブコントロールを取ってから(そこでは見えないことを確認してから)、もう一度上空を見上げた。

うわ!また真上におるやん。しかもぴったりついてきてるやん。なんかピカピカしてるやん!

ボクはホントーにおしっこをチビリそうになった。「これがいわゆるアブダクト(宇宙人による誘拐)と言うヤツか。地球人の中でも飛び抜けて優秀な知能を持つオレ様に目をつけたのか?やはり天才?」。そんな冗談をかます余裕もなく、ボクは猛スピードで妻の待つ家に帰った。そして、車から降りてUFOに吸い上げられないように猛ダッシュで家に入った。

地球外生命は土星の月にきっといる。エンセラダスの海に (2/3) 

宇宙生物学を机上の空論から実証科学のステージへと押し上げる。そして何より、科学者として最高に面白い挑戦だ。それでは、宇宙で生命を見つけ出すには、どこを探せばよいのだろうか? 生命誕生のためには、物質が溶けるための液体溶媒が必要になる。宇宙での存在量を考えると、どこにでもある水が最有力候補だ。次に、生命が誕生するためにはエネルギーと、材料としての多様な元素がなくてはならない。

エネルギー自身も元素を燃料として取り出されることになる。多様な元素たちは主に岩石の形で惑星や衛星に存在しており、溶媒に溶けた状態で初めて利用可能になる。これらをまとめると、液体の水に元素が溶け込んだもの、つまり「海水」の存在こそが生命誕生の絶対条件になる。そして、地球以外に「海水」の存在が確認されている場所がこれまでに2カ所知られている。木星の衛星エウロパと土星の衛星エンセラダスだ。

エウロパの海は厚さ3km以上の氷に覆われており、海水を採取するためには氷を掘削する必要がある。このような掘削能力をもつ探査機を開発し、深宇宙探査工学的難題をすべてクリアし、実際に打ち上げ、木星軌道への到達、着陸、掘削、サンプル回収、離脱、帰還軌道、そして地球への回収、といったミッションを完遂するには、おそらく50年以上の年月がかかるだろう。その一方エンセラダスでは、衛星の表面にあるひび割れから海水が宇宙空間に噴き出していることが、NASAの惑星探査機カッシーニによって観測されている。

ここで思い出してもらいたいのが、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機はやぶさによる小惑星イトカワの探査だ。はやぶさがイトカワの表面にある砂のサンプルをもち帰ったように、エンセラダスの地表近くを探査機に飛行させ、噴き出している海水を採取し、地球にもち帰ることができれば、開発期間を含めても20〜30年という現実的な時間でプロジェクトが完了する。つまり、わたしたちが生きている間に結果を見るためには、はやぶさ方式でエンセラダスを目指すしかない。

現在計画中のエンセラダス探査プロジェクトでは、海水に含まれる成分を詳細に、そして定量的に分析することで、海ができてからどれくらいか、海底にどういう岩石があるか、そしてどういったエネルギー代謝が起こりうるかを調査する予定だ。少なくとも海がある程度の期間(例えば5,000万年以上の年月)維持されないと、生命は生まれないのではないかとも考えられている。

海の組成や年齢がわかれば、最低限でもエンセラダスに生命がいるかどうか、いるとすればどのようなものかという生命の存在条件を知ることができる。もう一歩進むと、生命がつくり出したガスや有機物など、より生命の存在を示唆する証拠となる物質を見つけ出すことが目標となる。そして最終的な目標は、もちろん生命を見つけ出すことだ。

「生命がいれば、まず間違いなくエネルギー代謝をするはずです。おそらくはエンセラダスの環境に多いと予想される水素、一酸化炭素、二酸化炭素や窒素を使った代謝でしょう。回収した海水サンプルについては、地球にもち帰る間にもエネルギー代謝が行われているかどうか、放射性同位体標識法を用いて調べるつもりです」

・・・・・・・・つづく・・・・・・・

・・・ ちきゅうTV Vol.23 プレート境界断層を含む温度データの回収に成功  ・・・

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