食糧危機・食の未来と貧困 =11=

◇◆ 2048年には世界の海で魚が獲れなくなる  ◇◆

 漁業復活の処方箋・小松正之 =3/8= 

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「日本は、漁獲量がTACに達したところで漁を止める方式を取り入れています。 全体の漁獲量をゴールとし、『よーい、スタート!』で一斉に漁を始めるため『オリンピック方式』と呼んでいますが、獲れば獲るほど稼ぎにつながりますから、ゲームが終わるまで我先にと競争が起こりますよね。 結果的に漁獲量を制限できず、乱獲を促すことになります」

漁獲量を管理するための制度が乱獲を生み出しているとは何とも皮肉な結果である。 資源を回復させた国との違いはなんなのか。 そして、なぜそのような状況を放置しているのだろうか。

なぜ日本は問題先送りの漁業補助金を撤廃できないのか

日本が資源回復の光明を見いだせないなかで、アイスランドやノルウェーなど回復に成功している国がある。  その決定的な違いは採用している管理制度。 主な漁業先進国が取り入れているのはオリンピック方式ではなく、IQ方式やITQ方式と呼ばれるものだ。

まず、IQ方式だが、これは「Individual Quota」、つまり個別漁獲割当方式といって、TACで設定された漁獲量をそれぞれの漁業者に割り当てる方法のことをいう。

「自分の漁獲量が決まっているから、他人の動向に左右されることなく漁ができます。 年間を通じて操業計画が立てられるのでコストの計算もできますし、市場を見ながら高い魚を選んで漁をすることもできる。 韓国は1999年にIQ方式を導入し、2003年に110万トンだった沿岸・近海の漁獲量が2008年には130万トンに増加しています」

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 しかし、このIQ方式には制約もある。たとえば、ある業者は2000トンの漁獲枠を割り当てられたが、達成するには船を大型化するなどの新たな投資が必要になる。

それを望まずに1000トンしか漁獲しなかった場合は、残りの1000トンの枠が無駄になる。経営戦略に合わせて漁獲量を調整することが難しいのだ。

「そこで、漁業者同士で漁獲枠を賃貸・売買できるITQ(Individual Transferable Quota)方式が登場しました。これによって漁業者はより計画を立てて漁ができるようになった。ノルウェーやアイスランド、オーストラリア、アメリカはみんなITQ方式を採用しています」

この方式をいち早く導入したのがアイスランドだ。アイスランドでは水産業がGDPの1割前後を占める重要な産業であるため、水産資源の保護には早い段階から注力していて、1970年代にニシンの不漁に見舞われたことをきっかけに、ITQの実践を始め、研究を重ねてきた。

その結果、アイスランドのニシン漁は回復し、食用魚介類全体の自給率は2565%と驚異的な数字を誇っている。

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=== 続く ===

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