食糧危機・食の未来と貧困 =14=

◇◆ 2048年には世界の海で魚が獲れなくなる  ◇◆

 漁業復活の処方箋・小松正之 =6/8= 

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 こうして着実に成果を積み上げていき、日本の漁業モデルになって全国各地でこの方式が導入されることを目指しているが、やはり抵抗勢力の反発は大きいようだ。

「一次産業の世界はとにかく保守的です。  漁師は人より早く漁に出て、人より多く獲るのが普通なのに量を決めるとはどういうことだ、といった反発が必ずあります。 佐渡の赤泊地区の隣に両津という地区があり、ここでもIQ方式を進めていて、ようやくTACを導入することには合意してくれました。 IQは検討中です」

先にあげたメリットが理解できても、個別に漁獲枠を決められるのは嫌だという。

その理由が明確にあるわけでもない。 エビかごの制限撤廃に反発したのと同じように、古くからの慣習がそうさせているのだ。  何百年も連綿と漁業をして暮らしてきた漁業者たちに根付いた意識。  それを変えていくことが、新しい取り組みにつながる。

「何事もやってみることです。 最初から100%やらなくても3割、4割から始めればいい。 そう説得して1つひとつ壁を取り除いているので、この取り組みは亀の歩みです。  これでも日本ではどこもやっていないわけですから、周りからは最新の事業モデルとして注目されています」

小松さんはこの新潟方式が全国で導入されることが、日本の天然漁業を救う道だと話す。

「日本の漁獲量は484万トンですが、徹底して資源管理をすれば600万トンくらいまでは回復すると思います。 しかし、今の補助金をやめ、泉田知事のように危機感を持って行動にうつせる人間が増えればという条件付きではありますけどね」

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 IQ方式を全国で取り入れ、徹底した管理を行って600万トンまで回復する。

大きな成果ではあるが、それでもピーク時の半分強である。 日本は今後、人口が減少していくものの、それでも魚介類の約4割を輸入している現状では、天然の漁獲だけでまかなうのは厳しいであろう。 そこで、注目されるのが養殖である。

養殖がカギになるのは世界も同様だ。

2012年にFAOが推計した2050年の漁業の必要量を見ると、人口90億人の食を支えるには、いまより約60%増やさなければならない。 現在は天然が9000万トン、養殖が6000万トンで合計1億5000万トン。これを60%増やすとなると新たに9000万トンの漁獲が必要となる。

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 小松さんは、世界の天然資源は管理に努めても2割増が限度だろうという。 2割というと1800万トンだ。つまり、それ以外の7200万トンは養殖でまかなわなければならない。

実際、世界の養殖業は1970年代にはほとんどゼロに近かったが、いまは漁業の総生産の4割以上を占めている。 ノルウェーでは1973年から養殖に取り組み始め、2013年には130万トンの生産を記録した。 2050年には現在の8倍の生産金額を目標に掲げているという。

中国やベトナム、カンボジアなどアジアでは急成長している産業であるし、アメリカも現在400万トンの漁業生産があるが養殖はほとんどなく、これから増やしていく考えだ。

「しかし、日本は養殖の分野においてもトレンドに逆行しています。 1980年の134万トンをピークに、養殖の生産量は漁獲量と同様に減少方向にあるのです。  2012年は104万トンですから、単純計算をすると1年に1万トン下がっていることになります。この傾向は今後も続くでしょう」

天然だけではなく養殖までも減少しているとは……日本の漁業は衰退していくばかりなのか。

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=== 続く ===

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